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第12章 激闘編
離脱
大魔導師エヴドキヤーナが転移を使ったのは間違いない。
ただし、その身に傷を負わせたこともまた事実。
問題はこの後だ。
傷を負った彼女はどう動く?
まだ仕掛けてくるのか?
「はあ、はあ……アリマ、あそこだ」
シャリエルンが指をさすのは十数歩先。
その岩の上にエヴドキヤーナが相変わらずの涼しい顔で立っている。
「ふふ、ふふふ」
負傷のあとは見えない。
このわずかな間に治癒を終えたと?
「魔法、宝具、剣撃と流れるような攻撃だったぞ」
「……」
「剣を振るう度に力が増していくようだな」
それは違う。
無理やりに使える手を使ったにすぎない。
「次は何を見せてくれるのか」
「……」
「実に興味深い」
この先はもう……。
「エヴドキヤーナ様、うぅぅ、戯れはここまでに、してください」
「おぬしには関係ないこと、だが、ふむ、まだ脱しておらぬか」
エヴドキヤーナが嘆息しながら指を鳴らすと。
「あっ?」
シャリエルンの顔色が戻っていく。
「あやつを捕えていた術に比べれば児戯に等しいというのに、おぬし精進が足りぬぞ」
「……」
「さあ話はこれくらいにして、続きを始めようではないか」
と口にした次の瞬間には俺の正面に!
「……」
「ん? どうした?」
転移とは思えぬほどの滑らかさ。
底が知れぬ魔力量。
鉄壁の防御。
どう考えても、抗する手が見えてこない。
すぐには思いつけない。
「まさか、諦めるのか?」
「……」
「ふむ……ん?」
俺が動くのを待ちながら余裕の表情を浮かべるエヴドキヤーナ。
その纏う空気が、突然変化を?
「ん?」
笑みが消えた。
「んん?」
余裕も失せていく。
「うーん?」
さらに、難しい顔で腕を組み頭を捻り始めたぞ。
「……約定?」
「エヴドキヤーナ様?」
シャリエルンの呼びかけに反応はなし。
「しかし、それは?」
だというのに、誰かと会話でもしているような声色だ。
「……はあ」
「エヴドキヤーナ様!」
「致し方ない」
ひょっとして遠隔会話でもしているのか?
「まっ、それはそれで」
「……」
「悪くないな、いや、それどころか」
エヴドキヤーナが吹っ切れたかのように腕を解き視線を戻してきた。
ただし、視線の先は俺じゃない。
俺の後方、ワディナート方向に向けられている。
「ふむ、面白くもあるな」
この空気の変化は何なのか?
いったい何が悪くなくて何が面白いのか?
まったく話が見えてこない。
「よーし」
なら、問い質すだけ。
と声をかけようとしたその時。
「っ!」
エヴドキヤーナの輪郭がぼやけ始めた。
「エヴドキヤーナ様!?」
「……」
答えはない。
一瞥もしない。
そしてそのまま。
嵐のように登場した大魔導師は空の中に消え去ってしまった。
***********************
<エリシティア視点>
「冒険者ギルドが保証するだと?」
「いったい、どういうことだ?」
「あいつ、何者?」
ヴァルターの言葉に騒ぎ出すワディン騎士たち。
対するこちらは落ち着いたもの。
皆が静かに成り行きを見守っている。
「あの時、黒都の大通りで話したあんたなんだな?」
「間違いない」
「ってことは?」
「ああ、ヴァルターだ」
「……」
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