ゲイのエッチなお兄さん

回路メグル

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本編1

俺にだって「初心者」の頃があるんだよ? 【1・再会/前編】

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「よし。今月も目標達成! 新規のお客さんも増えているわね。この辺りのゲイ人口も増えているみたいだし、スタッフ増やそうかしら……」

 店長を務めるゲイ風俗店の待機室兼事務所の端に置いたデスクで日課の事務処理を終え、ノートパソコンを閉じた時だった。

「店長~! ユキくんにまた差し入れもらった~!」

 事務所と受付を繋ぐドアが開いて、うちの店で一番かわいいけど一番年長者でもあるボーイのミミちゃんが顔を出す。
 ユキさんというのはミミちゃんのお友だちで、先日、うちの店のスタッフではうけられない大切なお客様のお相手をしてくれたゲイの男の子。
 お客様は大満足で、紹介料をたっぷり払ってくれたし、今後のみかじめ料も調整してくれた。
 この店にとって天使のような男の子♡
 私はまだ直接会ったことが無くて、ミミちゃんから「すごく美人!」「めちゃくちゃエロい!」「俺よりテクニシャン!」なんて噂だけを聞いている。
 そんな子ならゲイ風俗に来る用事なんて無さそうなのに、「尿道の開発をプロにお願いしたい」と言ってうちの店にやってきた。
 この向上心、絶対に良い子!
 しかも、お友だちであるミミちゃんが「お金なんていらないよ~」と言っても「プロにお願いするのに払わないのはおかしい」といってちゃんとお金を払ったり、来るたびにセンスのいいお菓子を差し入れてくれたり、なるべく他の予約が入らなさそうな平日の早い時間を予約してくれたり……会う前からファンになっちゃいそう♡
 そのユキさんにやっとご挨拶できるのね。

「ちょっと私もご挨拶するわ」
「うん。ユキくーん! 店長が挨拶したいって!」

 デスクから立ち上がり、ラフなデニムと柄シャツの上に一応ジャケットを羽織って姿見に向かう。
 うん。
 四〇代後半に差し掛かったにしては我ながらいい男♡ 
 ジム通いを頑張っているから一八〇センチでダンサーみたいな細マッチョだし、顔は元々いいし……ユキさんはかなり美人らしいから後ろでまとめた長い黒髪はおろして……後は営業スマイル。よし。
 気合を入れて受付へ向かった。

「初めまして。先日はうちのお客様のお相手、ありがとうございました」
「いえいえ。俺も素敵な体験ができたので……ありがとうございました♡」

 わぁお……♡
 受付で顔を合わせたユキさんの姿を見て、心の中でため息をつく。
 ミミちゃんを疑っていた訳じゃないけど、本当に美人さん!
 絶世の美形ではないけど、誰が見ても美人と答えるくらいに整った美人。少し垂れ目で色っぽいところが男心をくすぐる。
 仕事帰りの無難なスーツ越しでも解るモデル体型だけど、腰回りなんかはむちっとしてエッチな感じで男ウケ抜群。
 緩い癖のある黒髪を掻き上げる仕草なんか、プロのAV男優にしか見えない。
 でも、この顔どこかで……?

「……?」
「……?」

 思わずじっと見てしまうと、ユキさんも私のことをじっと眺める。
 もしかしてユキさんも私の顔に覚えがある?
 ゲイ風俗の店長という仕事柄、ゲイと会う機会は多いけど、こんな美人のことは印象に残るはず……。

「すみません、店長さんってお名前……」
「え? あぁ、三間です。そうだ名刺を……」
「やっぱり!」

 ジャケットのポケットから名刺入れを取り出した瞬間、ユキさんの色っぽい笑顔がかわいらしい満面の笑みに変わった。

「ミマさん! 俺、あの、六~七年前にこの店でお世話になっていた……」
「お世話?」

 その頃なら、まだ店長になる前よね?
 年齢的に風俗ボーイを上がる直前の三〇代後半……お世話ってことはボーイ? お客さん? え? まさか!?

「ひーくん?」
「そう! ひーくん♡」
「え? えぇ? え~! あら! あらあらあら! 前もかわいかったけど、すっごく素敵になっちゃって♡」

 驚いてつい大きな声をあげてしまうと、ユキさん……私にとっては「ひーくん」は満面の笑みのままで大きく頷いた。

「うん♡ だってミマさんがレクチャーしてくれたから♡」
「そう……そうね。そうだわ!」

 目の前の魅力的な男の子と、記憶の中の「ひーくん」を比べて感動していると、ずっと様子を伺っていたミミちゃんが興味津々といった表情で割り込んできた。

「なになに? 二人って知り合い?」
「うん。ミマさんは俺の師匠みたいな人♡」
「師匠なんて大げさよ。ひーくんは私がボーイ時代のお客さんなの」
「へ~。そうなんだ。前に言ってたアレ? ネコの子にテクニックをレクチャーしたとか……?」
「そうそう。俺の今のテクニックも、テクニック以外のモテ技も、ミマさんの指導がほとんどなんだよ」

 そんなことないわよ~……と謙遜したいけど……そうねぇ……。

「ふふっ♡ 私のアドバイス、素直に実行してくれたのね。よく似合っているわ♡」
「うん♡ ミマさんの言う通りにしたらすっごくモテちゃった♡」

 色っぽい笑い方も、語尾を上げる話し方も、上手な流し目も……私の指導ではない。
 私がレクチャーしたのは……

「俺が黒髪にしたのも、ユキってあだ名にしたのも、ミマさんのアドバイスなんだよ」
「え~! そうなの?」

 ミミちゃんが一際大きな声をあげる。
 ということは、黒髪もユキというあだ名も、もう長いのね。

「そうそう。初めて会った時は明るい茶髪だったわねぇ」
「当時は派手に遊ぶなら派手でチャラい格好の方が良いと思っていたから……ちょっと黒歴史かな」
「え~! 派手なユキくん? 想像できない……!」

 ユキさんは仕事帰りらしく紺色にピンストライプの入った仕立てのいい無難なスーツだけど、私服もきっと落ち着いた感じなのね。
 あぁ、それにしても……

「名前も、上の方をとって『ひーくん』って呼ばれていたけど……合わないでしょう? 昔からひーくんって呼んでいる私ですら、『ユキさん』のほうがしっくりくるわよ」
「うん。『ひーくん』って顔じゃないよ、ユキくん」
「それ、全国のひーくんに怒られない? 大丈夫?」

 楽しそうに笑っていたひーくん……ユキさんが私の方を向く。
 真っすぐ向けられた視線は、初めて会ったときよりも色っぽくてちょっと……男の子を見てドキっとするのなんて、それこそ「ひーくん」以来かもしれない。

「でも、全部ミマさんの言ったとおりだった。茶髪の時は軽くて乱暴なナンパが多かったけど、黒髪にした方が落ち着いたお誘いが増えて、もう五年以上黒髪のままだよ」
「そう……アドバイスが役に立ったなら良かったわ」

 良かった。
 モテるとは思っていたけど、モテるからこそ、大変な思いをするんじゃないかと心配していたから。
 あれから六年ちょっと。
 楽しそうなうえに、とても気の利く素敵なゲイに育っていて……私も鼻が高いわ。

「ね、ねぇ……もしかして……」

 まるで親のような気持ちでユキさんと見つめあっていると、ミミちゃんが私とユキさんの様子を見比べた後おそるおそる口を開く。

「もしかして、ユキくんの初体験ってぇー……店長?」
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