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第5章 旅の話
第87話 エルフの森(3)
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俺とイルズちゃん、ローズウェルさん、エルフの護衛の騎士っぽい人の四人でエルフの国……というか、この首都の街を観光させてもらった。
本当に、まさに「観光」。
精霊殿とかいう教会か神社のような凝った造りの建物と、そこに置かれている絵画や像を見学して、様々な店の入った巨木を利用したビル……いわゆるショッピングモールのような場所でこの国の化粧品をエルフの化粧師さんにタッチアップしてもらったり、人間のお客さんとメイク談義をしたりしながら沢山買い込んで、街外れの果樹園で特産物だというベリー類の木を見学した後、目の前でエルフのスタッフさんがベリーを摘んで、人間のスタッフさんがケーキにのせてくれたものを屋外に設置されたテーブルで食べて……。
ね? 「観光」でしかないよね?
こういうの久しぶり……どう考えても楽しい!
「はぁ……楽しい。俺、普通にただ楽しんじゃった」
「この国の魅力を感じて頂けたのなら何よりです」
食後にベリーの香りがするお茶も提供されて、果樹園のスタッフさんは席を外してくれたから、今ここには俺たち四人だけ。
森と外の草原の境目らしく、後ろは背の高い木が茂った森で、目の前は田園風景。
景色も、風の匂いも、聞こえてくる鳥の鳴き声もいつもと違う。
「うん。いつもと違う所に来たってすごく実感できて楽しかったよ。それに、いい刺激になったかな」
「刺激、ですか?」
ただただ楽しい観光だったけど、この目の前の景色のように、落ち着いて眺めると魔族の国と違うところが沢山あった。
多分、イルズちゃんが見せたかったのは素晴らしい技術でできた建物でも、愛用の化粧品でも、美味しい特産物でもない。
「この街……この国が、かな? 人間ってペットじゃないんだ?」
テーブルに向かい合って座ったイルズちゃんは、俺の言葉に目を細めて眩しそうに微笑んだ。
「ライト様ならお気づきになられると思っていました」
やっぱり。ここを見せたかったのか。
「俺、この世界の情勢に詳しくないんだけど、エルフが国交を最低限にしているのは、こういう考え方が違うから?」
「そうですね。エルフは魔族と同じ高位種族です。ですが、魔族よりも精神が進んでいるので種族間の差別的意識がありません」
精神の進化と差別は関係があるのか疑問だけど……まぁ、聞こう。
「エルフの森の王からみれば、他種族の国はどこも『ペット』などと言って人間をアクセサリーにする野蛮な国です。しかし……」
イルズちゃんはずっと穏やかな笑顔だったけど、更に笑顔を深める。
「魔王様のことだけは、ここ数百年、少し好意的に思われているようです」
「あぁ。魔王さん、人権がどうとか優しいもんね?」
「はい。ペットを廃したわけではありませんが、魔王様が国を動かすようになってからはペットと名がついていても、従来のペットとは関係が変わってきているようだと感心されていました」
ちょっと上から目線が気になるけど、魔王さんを褒めてくれているのは嬉しいな。
「そうそう。俺のことめちゃくちゃ考えてくれているからね。魔王さんのペットでいるの、結構楽しいよ」
「えぇ、ライト様と魔王様のご様子を見ると……ペットと飼い主とは思えませんでした。だから森の王もお二人と仲良くしようと思ったのでしょう」
異世界の中でも種族や国で考え方が違うんだ?
元の世界でもそうか。国によって人種差別があったり無かったりしたな。
「……すみません、少し生意気なことを言いました。他種族には他種族の理があるのに、自分たちの考えがまるで正しいかのようなことを言うのはいけませんね」
「まぁ、考え方は色々だし。それに、森の王様とイルズちゃんが俺と魔王さんのような関係じゃないのは気づいていたよ」
さっき、「パートナー」なんて言っちゃっていたしね。
それに……俺、こういうのは勘が働くんだよね。
「さすがライト様。そうです。私と森の王はペットと主人ではなく、お互いの伴侶という関係です」
「あぁ、それもだけど……」
こういうプライベートなことは言わないのが暗黙の了解だけど……イルズちゃんが自覚して生意気なことを言うなら、俺も自覚して生意気なことを言わせてもらおう。
本当に、まさに「観光」。
精霊殿とかいう教会か神社のような凝った造りの建物と、そこに置かれている絵画や像を見学して、様々な店の入った巨木を利用したビル……いわゆるショッピングモールのような場所でこの国の化粧品をエルフの化粧師さんにタッチアップしてもらったり、人間のお客さんとメイク談義をしたりしながら沢山買い込んで、街外れの果樹園で特産物だというベリー類の木を見学した後、目の前でエルフのスタッフさんがベリーを摘んで、人間のスタッフさんがケーキにのせてくれたものを屋外に設置されたテーブルで食べて……。
ね? 「観光」でしかないよね?
こういうの久しぶり……どう考えても楽しい!
「はぁ……楽しい。俺、普通にただ楽しんじゃった」
「この国の魅力を感じて頂けたのなら何よりです」
食後にベリーの香りがするお茶も提供されて、果樹園のスタッフさんは席を外してくれたから、今ここには俺たち四人だけ。
森と外の草原の境目らしく、後ろは背の高い木が茂った森で、目の前は田園風景。
景色も、風の匂いも、聞こえてくる鳥の鳴き声もいつもと違う。
「うん。いつもと違う所に来たってすごく実感できて楽しかったよ。それに、いい刺激になったかな」
「刺激、ですか?」
ただただ楽しい観光だったけど、この目の前の景色のように、落ち着いて眺めると魔族の国と違うところが沢山あった。
多分、イルズちゃんが見せたかったのは素晴らしい技術でできた建物でも、愛用の化粧品でも、美味しい特産物でもない。
「この街……この国が、かな? 人間ってペットじゃないんだ?」
テーブルに向かい合って座ったイルズちゃんは、俺の言葉に目を細めて眩しそうに微笑んだ。
「ライト様ならお気づきになられると思っていました」
やっぱり。ここを見せたかったのか。
「俺、この世界の情勢に詳しくないんだけど、エルフが国交を最低限にしているのは、こういう考え方が違うから?」
「そうですね。エルフは魔族と同じ高位種族です。ですが、魔族よりも精神が進んでいるので種族間の差別的意識がありません」
精神の進化と差別は関係があるのか疑問だけど……まぁ、聞こう。
「エルフの森の王からみれば、他種族の国はどこも『ペット』などと言って人間をアクセサリーにする野蛮な国です。しかし……」
イルズちゃんはずっと穏やかな笑顔だったけど、更に笑顔を深める。
「魔王様のことだけは、ここ数百年、少し好意的に思われているようです」
「あぁ。魔王さん、人権がどうとか優しいもんね?」
「はい。ペットを廃したわけではありませんが、魔王様が国を動かすようになってからはペットと名がついていても、従来のペットとは関係が変わってきているようだと感心されていました」
ちょっと上から目線が気になるけど、魔王さんを褒めてくれているのは嬉しいな。
「そうそう。俺のことめちゃくちゃ考えてくれているからね。魔王さんのペットでいるの、結構楽しいよ」
「えぇ、ライト様と魔王様のご様子を見ると……ペットと飼い主とは思えませんでした。だから森の王もお二人と仲良くしようと思ったのでしょう」
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「……すみません、少し生意気なことを言いました。他種族には他種族の理があるのに、自分たちの考えがまるで正しいかのようなことを言うのはいけませんね」
「まぁ、考え方は色々だし。それに、森の王様とイルズちゃんが俺と魔王さんのような関係じゃないのは気づいていたよ」
さっき、「パートナー」なんて言っちゃっていたしね。
それに……俺、こういうのは勘が働くんだよね。
「さすがライト様。そうです。私と森の王はペットと主人ではなく、お互いの伴侶という関係です」
「あぁ、それもだけど……」
こういうプライベートなことは言わないのが暗黙の了解だけど……イルズちゃんが自覚して生意気なことを言うなら、俺も自覚して生意気なことを言わせてもらおう。
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