45 / 368
第5章 旅の話
第112話 お土産(6)
しおりを挟む
「えっと、次は……高校卒業して、しばらく働いてお金貯めて……兄弟三人で暮らせることになった時かな。この一〇階建てのマンションの八階の部屋を買ったんだ」
次の写真は、昨日まで俺がいたマンションの前に並ぶ兄弟三人の写真。
タワマンとか高級マンションではないけど、いかにも「ファミリー向け」って感じのマンションに家族……兄弟三人で住めるのが嬉しかったのを覚えている。
買えたのが嬉しすぎて、マンションの全体像を入れたくて、俺たち兄弟はギリギリ判別できる程度の大きさの写真だ。
「これは……一般的な家なのか? 周囲も同じくらいの高さの建物のようだが」
「この建物まるごとが俺の家じゃないよ? 八階の、ここからここまでくらい。家族が住む家としては普通だと思う。都内……えっと、国の首都のはずれで新築を買ったから少し高かったけど」
「そう……か」
いくら魔王さんでも、さすがに米粒サイズの俺よりも建物の方が気になったようで、まじまじと一〇階建ての何の変哲もない無難なマンションを眺めている。
折角眺めるんだったらそれよりも……。
「高い建物だったら……これ。今回帰った時に撮った写真! この建物、六三四メートルあるんだよ。根元しか写っていないけど」
ページをめくって、国内で一番高いタワーの根元で、兄弟三人並んで全身で写った写真を見せる。
弟二人も俺も、気合いを入れて良いスーツを着てオシャレして撮った写真で、これを撮っている時に周囲から「モデル?」「何かの撮影?」「三人とも美形すぎ! 絶対何かの有名人!」とこそこそ話す声が聞こえていた。
「は? 六三四メートル!? しかし……これだけでは解らないし、ライトも弟も可愛すぎて……そちらばかりに目が行く」
「ふふっ。俺たちがかっこよすぎてごめんね? えっと、上にも行ったけど……これ」
こっちは、全員の顔がよく見えるようにバストアップ。展望階の窓際に立っているから、背景は東京の街だ。
「うっ、顔がよく見えると一層眩しい……だが、これが街? 建物の形も、広さも……」
やっぱりそっちが気になるか。
別にそれはそれで、異世界らしさを面白がってもらったらいいんだけど……。
「魔王さん、街や建物よりも……俺のかわいい自慢の弟見てよ」
「あ、あぁ、そうだな。かわいい。ライトに少し似ていて、でも、ライトよりも少し……親しみがあると言うか、凄味がたりないというか……あっさりとしていてかわいい」
「ふふっ。それって、俺が一番かわいいってこと?」
「もちろんだ! ライトは誰よりもかわいい!」
魔王さんの好みはやっぱり俺か。
最初に、「魔王さんの好みの外見だから」この世界に呼ばれているわけだし当然だよね。
「良かった。じゃあ……これはプレゼント」
「え?」
アルバムの最後のページに挟んでおいた写真を二枚、魔王さんに渡す。
先ほどの展望室で、東京の街をバックに俺一人で写った一番写りの良いバストアップの写真と、全身の写真。
「このアルバムは俺の宝物だけど、これは……魔王さんに持っていてもらう用」
自分のキメまくった写真を他人に渡すって少し恥ずかしくはあるんだけど……。
「あ、た、たいせつにする! 額に入れて部屋に飾る! いや、仕事中も見たい……額に入れて持ち歩く!」
「人間の村の職人さんにお願いして、飾るための写真たて作ってもらおうか? 俺も兄弟の写真飾りたいし」
「頼む! あぁ……ライトの、こんなにも美しい絵を常に側に置けるなんて……本当に、本当に嬉しい!」
魔王さん、子供みたいににこにこ笑っちゃって。腕時計も嬉しそうだったけど、それ以上の反応だ。
かっわいいなぁ。
我ながら、いいお土産を思いついた。
「ライト、素敵な土産物をたくさんありがとう。ライトのことをよく知れたし、異世界の……その……人間だけで魔力の無い世界を見くびっていた。考えを改める。もっと、ライトやライトの育った環境を尊敬し、称えたいと思う」
「大げさだよ。俺は、魔王さんが知ってくれて、喜んでくれるのが何より嬉しい」
「いや、俺はまだまだライトのことを知らないのだと思い知った。写真という絵のことや描かれているものに関しては、ぜひ今後ゆっくりと教えて欲しい」
「わかった。でもね……」
実は、もう一つ魔王さんが喜びそうなものを仕込んであるんだよね……。
次の写真は、昨日まで俺がいたマンションの前に並ぶ兄弟三人の写真。
タワマンとか高級マンションではないけど、いかにも「ファミリー向け」って感じのマンションに家族……兄弟三人で住めるのが嬉しかったのを覚えている。
買えたのが嬉しすぎて、マンションの全体像を入れたくて、俺たち兄弟はギリギリ判別できる程度の大きさの写真だ。
「これは……一般的な家なのか? 周囲も同じくらいの高さの建物のようだが」
「この建物まるごとが俺の家じゃないよ? 八階の、ここからここまでくらい。家族が住む家としては普通だと思う。都内……えっと、国の首都のはずれで新築を買ったから少し高かったけど」
「そう……か」
いくら魔王さんでも、さすがに米粒サイズの俺よりも建物の方が気になったようで、まじまじと一〇階建ての何の変哲もない無難なマンションを眺めている。
折角眺めるんだったらそれよりも……。
「高い建物だったら……これ。今回帰った時に撮った写真! この建物、六三四メートルあるんだよ。根元しか写っていないけど」
ページをめくって、国内で一番高いタワーの根元で、兄弟三人並んで全身で写った写真を見せる。
弟二人も俺も、気合いを入れて良いスーツを着てオシャレして撮った写真で、これを撮っている時に周囲から「モデル?」「何かの撮影?」「三人とも美形すぎ! 絶対何かの有名人!」とこそこそ話す声が聞こえていた。
「は? 六三四メートル!? しかし……これだけでは解らないし、ライトも弟も可愛すぎて……そちらばかりに目が行く」
「ふふっ。俺たちがかっこよすぎてごめんね? えっと、上にも行ったけど……これ」
こっちは、全員の顔がよく見えるようにバストアップ。展望階の窓際に立っているから、背景は東京の街だ。
「うっ、顔がよく見えると一層眩しい……だが、これが街? 建物の形も、広さも……」
やっぱりそっちが気になるか。
別にそれはそれで、異世界らしさを面白がってもらったらいいんだけど……。
「魔王さん、街や建物よりも……俺のかわいい自慢の弟見てよ」
「あ、あぁ、そうだな。かわいい。ライトに少し似ていて、でも、ライトよりも少し……親しみがあると言うか、凄味がたりないというか……あっさりとしていてかわいい」
「ふふっ。それって、俺が一番かわいいってこと?」
「もちろんだ! ライトは誰よりもかわいい!」
魔王さんの好みはやっぱり俺か。
最初に、「魔王さんの好みの外見だから」この世界に呼ばれているわけだし当然だよね。
「良かった。じゃあ……これはプレゼント」
「え?」
アルバムの最後のページに挟んでおいた写真を二枚、魔王さんに渡す。
先ほどの展望室で、東京の街をバックに俺一人で写った一番写りの良いバストアップの写真と、全身の写真。
「このアルバムは俺の宝物だけど、これは……魔王さんに持っていてもらう用」
自分のキメまくった写真を他人に渡すって少し恥ずかしくはあるんだけど……。
「あ、た、たいせつにする! 額に入れて部屋に飾る! いや、仕事中も見たい……額に入れて持ち歩く!」
「人間の村の職人さんにお願いして、飾るための写真たて作ってもらおうか? 俺も兄弟の写真飾りたいし」
「頼む! あぁ……ライトの、こんなにも美しい絵を常に側に置けるなんて……本当に、本当に嬉しい!」
魔王さん、子供みたいににこにこ笑っちゃって。腕時計も嬉しそうだったけど、それ以上の反応だ。
かっわいいなぁ。
我ながら、いいお土産を思いついた。
「ライト、素敵な土産物をたくさんありがとう。ライトのことをよく知れたし、異世界の……その……人間だけで魔力の無い世界を見くびっていた。考えを改める。もっと、ライトやライトの育った環境を尊敬し、称えたいと思う」
「大げさだよ。俺は、魔王さんが知ってくれて、喜んでくれるのが何より嬉しい」
「いや、俺はまだまだライトのことを知らないのだと思い知った。写真という絵のことや描かれているものに関しては、ぜひ今後ゆっくりと教えて欲しい」
「わかった。でもね……」
実は、もう一つ魔王さんが喜びそうなものを仕込んであるんだよね……。
416
あなたにおすすめの小説
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。