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第5章 旅の話
第116話 お土産の後日談(3)
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お城の売店が話題になり始めた頃から、俺への面会希望が増えた。
単なる「ファン」みたいな人は俺に話が来る前に断られるし、商売に関すること、政治に関することはお城の人が間に入ってくれて、どうしても会う必要がある時だけ、魔王さんの許可を受けてお城の人が同席で面会する。
半月に一回あるかないかなんだけど……。
今日の昼食時、その半月に一度の打診をローズウェルさんにされた。
「明日、ライト様に面会の希望が入っています。魔王様の許可は出ている方です」
「魔王さんが許可しているなら俺は構わないよ。どんな人?」
魔王さん、俺のためにかなり厳選するからなぁ。
魔王さんが良いって言うなら悪い人じゃないし、お仕事だとしたら良い話なんだと思う。
「新聞社の方です」
「あぁ、なるほどね」
取材か。
異世界から来たとか、魔王さんのお気に入りとか、国民の関心は高いよね。
俺が読んでいる新聞にも、城の売店やお菓子の特集が載っていたし。
それに……魔王さん、俺を自慢するのが好きだからなぁ。
「じゃあオシャレしてお迎えしなきゃね」
「ほどほどで良いと思いますよ。ライト様は充分かわいらしいので」
「え? ……そ、そう?」
「はい」
ローズウェルさんは仕事モードの真面目な顔だから、冗談でも何でもないんだろうけど……珍しいな。
まぁいいか。ほどほどの、いつも通りの緩いハーフアップとシャツとズボンで出迎えよう。
◆
翌日、俺の部屋にやって来たのは、ベージュのパンツスーツっぽい服を着た、薄茶色の髪をアップにした一見クールな感じの女性の魔族と、ワインレッドのロングヘアーをゆるく三つ編みにした人懐っこい感じの女性の魔族。二人とも羊のような形の角が頭の横についている。
「お会いできて光栄です。私『魔族日読新聞』の編集記者長ニニヒです」
「文化部長のララピピです」
俺が座るソファの前で頭を下げた二人は、名刺代わりなのか新聞を差し出した。
クール系が編集記者長さんで、人懐っこい感じの魔族が文化部長さんね。
っていうか、この新聞……。
「あ、俺が毎日読んでいる新聞だ。俺、この世界のこと疎いから助かってるよ」
新聞を受け取りながら、普通に、初対面の人向けの笑顔を浮かべただけなのに……。
「あ、あ、あ、ありがとうございます!?」
「うっ、か、かっわいい~!!」
二人は挨拶の瞬間の真面目そうな顔から一瞬で、アイドルを目の前にしたようなテンションで口元を抑えたり天を仰いだりしてしまう。
俺ももう三年くらいこの世界にいるんだから、自分に対する評価は解っているつもりだけど……特別いい反応で、嬉しいよりも「これで真面目な仕事の話ができるのかな?」という心配が勝った。
「……えっと、新聞の人ってことは、俺に取材?」
なんとか落ち着いて向かいのソファに座る二人に向けて首をかしげると、「うっ、かわいい」と胸を抑えた後、記者長さんが絞り出すように話し始めた。
「取材といいますか……あの、ライト様がとても魅力的で……えっと、読者もファンが多く、なので……紙面にライト様を」
真面目そうな人だし、新聞社の人なんだから伝えるのが上手いはずだと思うんだけど……。
え? なんて?
緊張しすぎだな……。
「ん~? ごめんね、ちょっとよく解らないから一回深呼吸しようか? 俺もするから。ほら、吸って~吐いて~……落ち着いた?」
「うぅ、お優しい、かわいい」
「かわいい、深呼吸とか、かわいい」
落ち着くために言ったのに。
逆にテンションが上がってしまった二人から、ソファの横に立つローズウェルさんへ助けを求めるように視線を向けてみるけど……いつものポーカーフェイスで頷くだけだった。
「ライト様、一般魔族はかわいい人間を間近で見られる機会も少ないので……当然の反応だと思います」
「……うーん。しばらく待つか」
◆
「す、すみません。編集部の中でも特別人間好きの二人で来たもので……」
「取材で何度かかわいい人間に触れているのですが……ライト様が特別かわいくて、すみません」
やっと落ち着いた二人が頭を下げる。
戸惑ったけど、二人の反応は嫌かと言うと……
「全然大丈夫。嫌いな人に来られるより嬉しい!」
素直に笑顔を向けると、また二人は胸元を押さえてしまう。
「「うぅ、やっぱりかわいい~!」」
キリがないな。
なるべく笑顔は抑えよう。
「それで? 俺を紙面に載せたいって?」
「あ、は、はい! 取材もさせて頂きたいのですが、それよりもライト様のお人柄がよりわかるようにコラムの連載をお願いしたいと思っています」
仕事用の真面目な顔で話しかければ、記者長さんもやっと落ち着いた口調で返事をしてくれた。
「コラム……?」
「コラムというと堅く感じると思いますが、日記と言いますか……」
「例えば、お気に入りの食べ物やお服のこだわり、はまっている趣味などについて好きなように教えて頂ければと思います!」
文化部長さんも落ち着いたのか話に加わる。
うーん。日記か……。
「そんなに書くことあるかな……」
ほとんど外に出ないルーティンな日々なんだけど。
毎回同じにならない?
「異世界の思い出なども国民は興味があると思います」
「あ、それはいいかも」
異世界のことを書いていいなら、ネタはいくらでもある。
興味ある人もいるだろうし。
ただ……チラっとローズウェルさんの様子を伺うと、やはり真面目な顔で頷かれた。
「魔王様はライト様のされたいようにと」
いいんだ。
どうしようかな。
単なる「ファン」みたいな人は俺に話が来る前に断られるし、商売に関すること、政治に関することはお城の人が間に入ってくれて、どうしても会う必要がある時だけ、魔王さんの許可を受けてお城の人が同席で面会する。
半月に一回あるかないかなんだけど……。
今日の昼食時、その半月に一度の打診をローズウェルさんにされた。
「明日、ライト様に面会の希望が入っています。魔王様の許可は出ている方です」
「魔王さんが許可しているなら俺は構わないよ。どんな人?」
魔王さん、俺のためにかなり厳選するからなぁ。
魔王さんが良いって言うなら悪い人じゃないし、お仕事だとしたら良い話なんだと思う。
「新聞社の方です」
「あぁ、なるほどね」
取材か。
異世界から来たとか、魔王さんのお気に入りとか、国民の関心は高いよね。
俺が読んでいる新聞にも、城の売店やお菓子の特集が載っていたし。
それに……魔王さん、俺を自慢するのが好きだからなぁ。
「じゃあオシャレしてお迎えしなきゃね」
「ほどほどで良いと思いますよ。ライト様は充分かわいらしいので」
「え? ……そ、そう?」
「はい」
ローズウェルさんは仕事モードの真面目な顔だから、冗談でも何でもないんだろうけど……珍しいな。
まぁいいか。ほどほどの、いつも通りの緩いハーフアップとシャツとズボンで出迎えよう。
◆
翌日、俺の部屋にやって来たのは、ベージュのパンツスーツっぽい服を着た、薄茶色の髪をアップにした一見クールな感じの女性の魔族と、ワインレッドのロングヘアーをゆるく三つ編みにした人懐っこい感じの女性の魔族。二人とも羊のような形の角が頭の横についている。
「お会いできて光栄です。私『魔族日読新聞』の編集記者長ニニヒです」
「文化部長のララピピです」
俺が座るソファの前で頭を下げた二人は、名刺代わりなのか新聞を差し出した。
クール系が編集記者長さんで、人懐っこい感じの魔族が文化部長さんね。
っていうか、この新聞……。
「あ、俺が毎日読んでいる新聞だ。俺、この世界のこと疎いから助かってるよ」
新聞を受け取りながら、普通に、初対面の人向けの笑顔を浮かべただけなのに……。
「あ、あ、あ、ありがとうございます!?」
「うっ、か、かっわいい~!!」
二人は挨拶の瞬間の真面目そうな顔から一瞬で、アイドルを目の前にしたようなテンションで口元を抑えたり天を仰いだりしてしまう。
俺ももう三年くらいこの世界にいるんだから、自分に対する評価は解っているつもりだけど……特別いい反応で、嬉しいよりも「これで真面目な仕事の話ができるのかな?」という心配が勝った。
「……えっと、新聞の人ってことは、俺に取材?」
なんとか落ち着いて向かいのソファに座る二人に向けて首をかしげると、「うっ、かわいい」と胸を抑えた後、記者長さんが絞り出すように話し始めた。
「取材といいますか……あの、ライト様がとても魅力的で……えっと、読者もファンが多く、なので……紙面にライト様を」
真面目そうな人だし、新聞社の人なんだから伝えるのが上手いはずだと思うんだけど……。
え? なんて?
緊張しすぎだな……。
「ん~? ごめんね、ちょっとよく解らないから一回深呼吸しようか? 俺もするから。ほら、吸って~吐いて~……落ち着いた?」
「うぅ、お優しい、かわいい」
「かわいい、深呼吸とか、かわいい」
落ち着くために言ったのに。
逆にテンションが上がってしまった二人から、ソファの横に立つローズウェルさんへ助けを求めるように視線を向けてみるけど……いつものポーカーフェイスで頷くだけだった。
「ライト様、一般魔族はかわいい人間を間近で見られる機会も少ないので……当然の反応だと思います」
「……うーん。しばらく待つか」
◆
「す、すみません。編集部の中でも特別人間好きの二人で来たもので……」
「取材で何度かかわいい人間に触れているのですが……ライト様が特別かわいくて、すみません」
やっと落ち着いた二人が頭を下げる。
戸惑ったけど、二人の反応は嫌かと言うと……
「全然大丈夫。嫌いな人に来られるより嬉しい!」
素直に笑顔を向けると、また二人は胸元を押さえてしまう。
「「うぅ、やっぱりかわいい~!」」
キリがないな。
なるべく笑顔は抑えよう。
「それで? 俺を紙面に載せたいって?」
「あ、は、はい! 取材もさせて頂きたいのですが、それよりもライト様のお人柄がよりわかるようにコラムの連載をお願いしたいと思っています」
仕事用の真面目な顔で話しかければ、記者長さんもやっと落ち着いた口調で返事をしてくれた。
「コラム……?」
「コラムというと堅く感じると思いますが、日記と言いますか……」
「例えば、お気に入りの食べ物やお服のこだわり、はまっている趣味などについて好きなように教えて頂ければと思います!」
文化部長さんも落ち着いたのか話に加わる。
うーん。日記か……。
「そんなに書くことあるかな……」
ほとんど外に出ないルーティンな日々なんだけど。
毎回同じにならない?
「異世界の思い出なども国民は興味があると思います」
「あ、それはいいかも」
異世界のことを書いていいなら、ネタはいくらでもある。
興味ある人もいるだろうし。
ただ……チラっとローズウェルさんの様子を伺うと、やはり真面目な顔で頷かれた。
「魔王様はライト様のされたいようにと」
いいんだ。
どうしようかな。
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