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第6章 二人の話
第132話 式典(1)
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退位式も、即位式も、まるで映画の中にいるような式典だった。
形式としてはヨーロッパの王族がやっていそうな式典と同じで、神聖な建物の中で歌とか挨拶とかがあって、王冠を外したり被せたりなんだけど……演出が、もっっっのすごい。
結局この世界にやって来てから「魔法」って移動とか怪我を直すとか水道とか、必要に迫られてと言うか……生活の一部みたいな魔法しか見てこなかったんだけど、「演出」に特化した魔法はすごかった。
建物の中で熱くない花火のような光がどんどん上がったり、濡れない水滴が舞ったり、精霊? 妖精? 小さな人型の羽の生えた生き物がひゅんひゅん飛んでいたり、虹がかかったり、王様が浮いたり……ちょっとしたショーだ。
すごいなぁ……魔法、すごい……!
「はぁ、すごい式典だった。俺、魔法を見慣れていないから特に感動しちゃったよ。魔法ってすごいね!」
式典が終わって、神殿の奥に設置された来賓席で退場を待つ間に、ついつい興奮のまま隣に座るローズウェルさんと騎士団長さんに声をかけると……
「「ライト様……」」
二人は呆然と空中を眺めたままで……俺の声を聴いてゆっくりと視線がこちらに向いた。
「「す、すごい……」」
あれ?
「魔王様の即位式も厳かで、厳格な雰囲気で、クラシカルで……えっと、品があって、素晴らしかった。しかし……」
「エルフの精霊系の魔法は自然物の扱いの自由度が高いため、このような演出ができるのですね。わが国の魔法技術で同じことをしようと思うと倍以上の人員とコストがかかるでしょう。式典で行うのは現実的ではありません。つまり……」
「だから……」
「「こんなにも素晴らしい式典が見られるなんて、ライト様ありがとうございます!」」
二人とも俺より何百歳も年上のはずなのに。
子どものようにキラキラと目を輝かせて笑っていた。
よく見れば、他の来賓、後ろの一般国民席もみんな目を輝かせていた
お祭りってそうか。
「俺にお礼を言うのは違うよ。森の王様が……」
「そうなんです!」
俺たちの会話を聞いていたのか、周囲のエルフや人間……服装が白いローブとドレスの中間みたいな伝統服だから、おそらくこの国の国民の皆が興奮した様子で話しかけてきた。
「今回の式典は、今までの式典の何倍も華やかな演出になっているんです!」
「退位された森の王様が、『これが国民のために使える最後の魔法だから』と、使える限りの魔法を使ってくださったのです!」
「最後まで国民のために力を使ってくださる素晴らしい方なのです!」
老若男女、二〇人近くにいつの間にか囲まれていて、みんな口々にこの式典の特別さ、森の王様の素晴らしさを熱く語ってくれる。
圧がすごい……けど、それだけみんな王様が好きなんだね。
「……そっか。これ、特別なんだ。通りで感激すると思った。それに、みんなの話を聞いてもっと感動したよ。ありがとう」
俺がほほ笑むと、周囲の人たちも王様の素晴らしさが伝わったことに安心したのか声は落ち着いた。
「あの……」
「ん?」
俺の隣に座っていた、位が高そうな銀糸で刺繍が沢山入ったローブ姿のエルフの男性がおずおずと手を上げる。
「異国からの人間のお客さまと言うことは、明日の儀式に立ち合いを……?」
「うん。そうだよ」
「あ、あの! どうぞ、前王様のこと、よろしくお願い致します!」
男性が頭を下げると、また周囲の人たちが口々に言いながら頭を下げた。
「よろしくお願い致します!」
「必ず、儀式を成功させてください!」
「みんな、応援しているんです!」
年配の方から若者、お子様まで。
いつの間にか少し離れたところにいる人も。
沢山の視線が俺に向いていた。
形式としてはヨーロッパの王族がやっていそうな式典と同じで、神聖な建物の中で歌とか挨拶とかがあって、王冠を外したり被せたりなんだけど……演出が、もっっっのすごい。
結局この世界にやって来てから「魔法」って移動とか怪我を直すとか水道とか、必要に迫られてと言うか……生活の一部みたいな魔法しか見てこなかったんだけど、「演出」に特化した魔法はすごかった。
建物の中で熱くない花火のような光がどんどん上がったり、濡れない水滴が舞ったり、精霊? 妖精? 小さな人型の羽の生えた生き物がひゅんひゅん飛んでいたり、虹がかかったり、王様が浮いたり……ちょっとしたショーだ。
すごいなぁ……魔法、すごい……!
「はぁ、すごい式典だった。俺、魔法を見慣れていないから特に感動しちゃったよ。魔法ってすごいね!」
式典が終わって、神殿の奥に設置された来賓席で退場を待つ間に、ついつい興奮のまま隣に座るローズウェルさんと騎士団長さんに声をかけると……
「「ライト様……」」
二人は呆然と空中を眺めたままで……俺の声を聴いてゆっくりと視線がこちらに向いた。
「「す、すごい……」」
あれ?
「魔王様の即位式も厳かで、厳格な雰囲気で、クラシカルで……えっと、品があって、素晴らしかった。しかし……」
「エルフの精霊系の魔法は自然物の扱いの自由度が高いため、このような演出ができるのですね。わが国の魔法技術で同じことをしようと思うと倍以上の人員とコストがかかるでしょう。式典で行うのは現実的ではありません。つまり……」
「だから……」
「「こんなにも素晴らしい式典が見られるなんて、ライト様ありがとうございます!」」
二人とも俺より何百歳も年上のはずなのに。
子どものようにキラキラと目を輝かせて笑っていた。
よく見れば、他の来賓、後ろの一般国民席もみんな目を輝かせていた
お祭りってそうか。
「俺にお礼を言うのは違うよ。森の王様が……」
「そうなんです!」
俺たちの会話を聞いていたのか、周囲のエルフや人間……服装が白いローブとドレスの中間みたいな伝統服だから、おそらくこの国の国民の皆が興奮した様子で話しかけてきた。
「今回の式典は、今までの式典の何倍も華やかな演出になっているんです!」
「退位された森の王様が、『これが国民のために使える最後の魔法だから』と、使える限りの魔法を使ってくださったのです!」
「最後まで国民のために力を使ってくださる素晴らしい方なのです!」
老若男女、二〇人近くにいつの間にか囲まれていて、みんな口々にこの式典の特別さ、森の王様の素晴らしさを熱く語ってくれる。
圧がすごい……けど、それだけみんな王様が好きなんだね。
「……そっか。これ、特別なんだ。通りで感激すると思った。それに、みんなの話を聞いてもっと感動したよ。ありがとう」
俺がほほ笑むと、周囲の人たちも王様の素晴らしさが伝わったことに安心したのか声は落ち着いた。
「あの……」
「ん?」
俺の隣に座っていた、位が高そうな銀糸で刺繍が沢山入ったローブ姿のエルフの男性がおずおずと手を上げる。
「異国からの人間のお客さまと言うことは、明日の儀式に立ち合いを……?」
「うん。そうだよ」
「あ、あの! どうぞ、前王様のこと、よろしくお願い致します!」
男性が頭を下げると、また周囲の人たちが口々に言いながら頭を下げた。
「よろしくお願い致します!」
「必ず、儀式を成功させてください!」
「みんな、応援しているんです!」
年配の方から若者、お子様まで。
いつの間にか少し離れたところにいる人も。
沢山の視線が俺に向いていた。
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