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第7章 その後の二人 / 魔力切れと覚悟の話
11日目(2)
しおりを挟む「医療魔法陣の六番、用意できました!」
どこかから声が聞こえて、俺の髪色を変える時に手伝ってくれていたローブ姿の若い男性魔族さんたちが俺の体の上に布をかける。
「ライト様、動かないでくださいね!?」
動かないで、か……大丈夫。動けない。
頷くこともできないでいる間に、俺の体の上に石? 魔法石か何かが乗って、分厚い本を持った赤髪で赤ローブ姿の人が何か呪文を唱えると……少しだけ、体が軽くなった。
「ん……ちょっと……楽かも……」
俺が言葉らしい言葉を発すると、リリリさんもローズウェルさんも、ローブの魔族さんたちも、みんなほっとしたように表情を緩めてくれた。
でも、ローズウェルさんが俺の手を握る力は強い。
「ライト様、まだお体はお辛いですか?」
「辛いっていうか……疲れのすごく大きいやつみたいな感じで……ねぇ、これって……」
首だけローズウェルさんの方へ向けると、ローズウェルさんは神妙な顔で頷いた。
「おそらく、魔王様が魔力切れに近い状態になられています」
「やっぱり……じゃあ、魔王さんもこんなにしんどいの?」
「うぅ、こんな時までご自身よりも魔王様のご心配を……!」
「ライトさまぁ……おやさしいいぃ……うぅ、かわいい……!」
ごめん、俺、今は余裕が無いから……その反応は嬉しいけどそれより早く教えて……と、口に出すのもしんどくて緩く首を振った。
「うぅ、すみません……魔王様も、確かに大きな疲労感に襲われているとは思います。しかし、魔族の体であれば……特に魔王様は何度も魔力切れを経験していますので、ライト様ほどはお辛くないはずです」
「そっか……なら、よかった」
でも、俺はお城だからまだいいけど、魔王さんは遠征先だよね?
拠点とかあるの? 野営? その辺りちゃんと聞いておけばよかった。
「……ただ、先ほどライト様のご様子から推計した魔力量ですと……魔王様は、人型を保てていないかもしれません」
「え……」
それ、かなりヤバイんじゃ……?
っていうか、魔力切れになるようなトラブル?
何があったの?
魔力が減って苦しいだけなら俺だって我慢できるけど……怪我とか、い、いのち……とか……。
俺が死んでいないから生きているのは確実だけど。
「連絡も付かず、詳細は解りません。私たちは……ライト様のご様子でしか……」
ローズウェルさんが悔しそうとも心配そうともとれる表情で唇を噛む。
今までは、確実に俺を心配してくれていた。
でも今は、俺を通して魔王さんを心配しているようだった。
俺もそう。
自分のしんどさを通して魔王さんを心配するしかない。
「魔王さん……」
「魔王様……」
でも、どんなに魔王さんを心配しながらでも、ローズウェルさんは俺の手を握っていてくれた。
後で聞いたけど、リリリさんもローズウェルさんも、ほんの少しでも俺の体調がマシになるように、回復魔法をかけ続けてくれていたらしい。
魔王さんの魔力が足りないことで起こる疲労はどうしようも無いけど、それを感じる体を回復し続ければ、多少は疲労が軽減されるから……体の上に置かれた魔法陣もそんな効果らしかった。
常に魔法をかけ続けても、俺は「マシになる」程度で、かなり効率の悪い魔法なのに、それしか方法が無いからって、一晩中頑張ってくれたらしい。
俺、二人のペットでも恋人でも家族でもないのに……。
大きすぎる感謝を伝える方法を考えないといけないな。
でも、今はそれよりも……。
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