魔王さんのガチペット

回路メグル

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第8章 その後の二人 / 嫉妬と未来の話

パーティー(6)

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「こちらのお部屋で処置をさせて頂きます」

 燕尾服姿の執事さんたちに連れてこられたのは、大広間から三分は歩いたところにある、いかにもヨーロッパ風異世界の王様なんかが住んでいそうな部屋だった。魔王さんの私室にも近いけど、ベッドに天蓋がついているあたり、異世界感やヨーロッパ感が強い。
 客間なんだろうけど……やっぱり怪しい。
 護衛の騎士さん達は隣室で待機しているって聞いていて、こんなことがあれば呼ばれると思ったのに、恐らく声をかけてくれていない。それもおかしい。

「処置が得意な者がすぐに参ります」 

 執事さん二人が、ドアの前で、まるで出るのをふさぐように立っているのって普通?

「魔王さん……」
「ん? どうした? ライト」

 ベッドの横で立ったままの魔王さんの上着の裾を引っ張ると、魔王さんは俺と視線を合わせるように体を屈めてくれる。

「ちょっと恥ずかしいんだけど……」

 と言うのは嘘で、内緒話をする口実なんだけど。
 魔王さんに耳を近づけてもらって、そっと囁く。

「なんかおかしくない? 気を付けてね?」

 こそっと俺が囁くと、魔王さんは一瞬、ピクっと体を震わせたものの、「あぁ、わかった」と笑顔で言いながら顔を離した。
 伝わっているかな?
 あ……俺の肩、さりげなく抱き寄せてくれるの……気を付けて俺を守ってくれる感じ?
 自分の身を守ってもらうために言ったのに。優しいな。
 でも、あれ? 
 なんか魔王さんの体……体温高くない?

「魔王さん?」

 ワインのアルコールのためか、微かに頬が赤い魔王さんを見上げた時だった。

「失礼いたします」

 ドアが開いて、濃い焦げ茶色のドレスを着た女性魔族が入ってきた。

「東の王の娘、第一王女でございます」

 第一王女か……この世界、徹底して王族に名前が無いんだな。

「姫……?」

 魔王さんが怪訝そうに呟く。
 あぁそうか。お姫様か。
 確かに、恭しくドレスの裾を持ち上げてお辞儀をするのは、お姫様っぽい。
 短い牛系の角が付いた焦げ茶の髪は長くて丁寧に巻かれていて、小さなティアラが乗っているのもお姫様っぽい。
 俺と顔の系統がやや近い美人だから、魔族の感覚でも美人だと思う。
 俺より一〇センチくらい身長が高く……見た目年齢は二〇代前半くらい?
 レースで段々になったドレスもお姫様っぽいけど……。
 ただ……。
 胸元開きすぎじゃない? 谷間って言うか、乳首ギリギリまで見せているよね?
 この世界でそんな服、初めて見るよ?

「私が責任をもって処置をさせて頂きます」
「……姫にさせるなど申し訳ない」
「私、このお城で一番きれい好きですの。処置も一番上手いと評判ですわ」

 近づいてくる第一王女様は、一瞬俺に視線を向けて……何その顔? 困ったような……動揺したような顔をして、すぐに媚びた笑顔になった。

「どうぞ、私にお任せください」

 俺から引きはがすように魔王さんの手を引いて、魔王さんをベッドに座らせる。

――パタン。ガチャ

「え?」

 第一王女様に気を取られているうちに、ドアのところに立っていたはずの執事さんたちがいなくなった。
 音的に、鍵もかかった?

「姫?」

 第一王女様が、魔王さんの服の、ワインがかかった場所ではなく、胸元へと指を伸ばす。

「大丈夫です。私が責任をもってお世話しますから」
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