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第8章 その後の二人 / 嫉妬と未来の話
関係(3)
しおりを挟む「でも、魔王さん冷静に対処できたよね。すごく偉いと思う。俺が魔王さんだったらブチ切れて東の国のお城を木っ端みじんにしていたかも」
魔法でそこまでできるのか知らないけど。
「はは、ライトがそんなに怒るところは想像がつかないが……」
あ、魔王さんちょっと笑ってくれた。良かった。
「しかし、そうだな。自分でも、驚くほど冷静でいられた。ライトに見られるのが嫌だった半面……ライトの前だからか。意志を強く持てたし、ライトのように冷静に、客観的に考えることができた」
「ただ一緒にいただけだけどね?」
「そんなことはない! ライトが忠告してくれたから多少は覚悟ができた! それに、その一緒と言うのも……ライトは事前に様子がおかしいことに気が付いていたのだろう? ワイングラスを落としたのもわざとだったのではないか?」
「さぁ。あの時、魔王さんが別の部屋に行っちゃうのが寂しくて必死だったから。よく覚えてないなぁ」
首を傾げながらチラっと振り向くと、魔王さんは一瞬で締まりのない笑顔になる。
うん。やっぱり俺の顔見えた方が良いよね?
身体の向き、変えよう。
「うぅ……か、かわいい……ではなくて、やはりライトは天才だ。あの場で一番物事が見えていたのは、ライトだった」
魔王さんの方を向いて首筋に腕を回すと、すぐに魔王さんが優しく俺の頭を撫でてくれる。手つきも、表情も、もう落ち着いているな。
よしよし。
「だから、怒りは大きかったが……冷静に考えれば……あの姫の気持ちが、よく解った」
「え?」
気持ちが、解る……?
あの、お姫様……第一王女様の気持ちが?
「国に、黒髪の魔力が必要なのは、痛いほど解るんだ。国民を守るために必要な魔力で……あの国の国民のことを思うと、どれだけ不安で不安定な状況なのか」
国民の心配か。……魔王さん優しいからな……。
「姫の非人道な行いを気持ち悪く思う反面、自分が死刑になってでも黒髪の子を宿そうとした姫の気持ちは、解る。国長の娘として、立派だとも思った」
え?
肯定しちゃうの?
嘘?
「だから、ライトには甘い措置だと思われるかもしれないが、俺が協力して……」
え?
嘘?
魔王さんが?
え?
そんなの……
「嫌!」
お湯を揺らしながら思い切り首を横に振る。
「ライト?」
「嫌、絶対に嫌!」
「ライト!」
取り乱してしまった俺を落ち着かせるように、魔王さんが強めに俺の肩を掴む。
「どうしたんだ? 俺を心配してくれているのか?」
魔王さんがじっと俺に視線を合わせてくれて……しまった。
つい、あまりに嫌で、反射的に「嫌」なんて言ってしまったけど……。
「心配もだけど……だって……」
俺が嫌。
……って、言っていい?
魔王さんだって嫌なのに我慢してたくさんの東の国の国民を守るためにがんばるのに?
俺が嫌だから、やめてって……伴侶でもない俺が、ペットが……。
「ライト、どうした? 何が嫌なんだ? 俺は、お前が嫌がることはしたくない。教えてくれ。な?」
魔王さんが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「あ……」
今まで、魔王さんには二人の仲だけで完結するようなかわいい我儘は沢山言ってきたつもりだけど……俺がして欲しいことはお願いしてきたけど……。
「ライト……」
魔王さんに……今日、辛いことがあってただでさえ苦しい魔王さんに、苦しそうな顔をさせてしまった。
何か良い言い訳をと思うけど、思いつかない。
ここまで言ってしまったんだ。正直に、言うしかないか……。
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