157 / 368
第8章 その後の二人 / 嫉妬と未来の話
報告(1)
しおりを挟む
東の国へ行った翌日。
昨日の出来事を魔王さん一人で話すのは辛いかなと思って執務室についていった。
執務室にはファイさんとローズウェルさん、あと、昨日護衛をしてくれた騎士さん達と騎士団長さんが待っていた。
「心配をかけたな、実は……」
少し心配だったけど、魔王さんは落ち着いた声で、昨日の出来事を淡々と話し始めた。
……執務机ではなく、ソファの方に座って俺を膝に横抱きにした状態だけど。
「……それは……東の国に正式な抗議を入れなければいけませんな!」
魔王さんが昨日の出来事を包み隠さず報告すると、ファイさんが、普段の穏やかな様子から想像もつかないくらい怒ってくれた。これはこれで嬉しいことだと思うんだけど、魔王さんはずっと俺の頭を撫でながらではあるものの冷静だった。
「抗議は必要ない。それに、山の国が落ち着くまで……または東の国に黒髪が生まれるまで、俺が魔術協力をしてやることに決めた」
「はぁ!? こんなことをされて、助けてやるというのですか!? 御心は立派ですが、無礼をはたらいてきた国に対してお優しすぎます!」
ファイさんが叫ぶ横で、ローズウェルさんも騎士団長さんもうんうんと深く頷いている。
そうだよね。俺もどちらかと言うとそっち派。でも……
「もちろんタダとは言わない。俺が魔術協力をする際に協力料に加えて口止め料や慰謝料を上乗せするし、次の会議では俺の議案を通すのに協力してもらう。必ず東の王の票が俺につくとすれば色々とやりやすいだろう?」
魔王さんって本当に王様だよね。
こういうところも好き。
「しかし……」
「東の国の民を見捨てろというのか?」
うんうん。こういうところも好き。
「立派です。とても立派なお考えですが……されたことを考えると……」
「……はぁ。折角ライトが忘れさせてくれたんだ。蒸し返さないでくれ。俺もあまり引きずりたくない」
魔王さんが本当に嫌そうに吐き捨てると、ファイさんが慌てて頭を下げた。
「あ……は、はい! 配慮が足りませんでした! 以後、慎みます。それに……ライト様、ありがとうございます!」
「ん? 俺は魔王さんとイチャイチャしただけだよ? ね?」
「あぁ。ライトがかわいいからだな」
微妙に会話がかみ合っていないんだけど、みんな、魔王さんがご機嫌なのでほっとしたようだった。
「細かい会議の内容は、明日にでも書記からの書簡が届くだろう。今回は特に大きな話はないが、穀物の関税の話と、南の共有港に関しては国内でも対応が必要だ。後日専門家を呼んで会議をしよう」
「承知致しました」
「俺からは以上だが……ライトからは何かあるか?」
「俺? うーん。普通にお友だちと楽しく観光してきただけだからなぁ。あ、そうだ。これいいでしょう? 魔王さんとおそろい!」
今日はいつものシンプルなスタンドカラーのシャツなので、服の上に着けてきた黒い石のネックレスを見せると、ファイさんが少しだけ近づいて表情を和らげた。
「ほう! とても良い物ですね! 体内の魔力循環が良くなりそうです。国内では取れない素材ですし、加工も……素晴らしい! 見た目も機能もライト様にピッタリかと!」
買い物を褒められるのって嬉しいよね。俺が自慢げに笑うと、魔王さんも自分の服の襟元に指を入れて、服の下に身に着けてくれていたお揃いのネックレスをみんなに見せる。
「俺の分も、ライトがわざわざ自分の小遣いで買ってくれたんだ。お揃いだし、体にも良いだろうと」
「なんと!」
ファイさんの明るい叫び声に続いて、ローズウェルさんと騎士団長さんが手で顔を覆いながら呻いた。
「っ、か、かわいい……おそろいなんて……」
「かわいいいぃぃ……わざわざ自分の小遣いでこんな高価なものを……」
「「「天使!」」」
魔王さんの健康は俺の健康だし、俺がそれなりにお金の余裕があることはみんな知っているのにね。
でも、三人の反応がこんなにいいなら、今度の新聞の日記、この話にしよう。
昨日の出来事を魔王さん一人で話すのは辛いかなと思って執務室についていった。
執務室にはファイさんとローズウェルさん、あと、昨日護衛をしてくれた騎士さん達と騎士団長さんが待っていた。
「心配をかけたな、実は……」
少し心配だったけど、魔王さんは落ち着いた声で、昨日の出来事を淡々と話し始めた。
……執務机ではなく、ソファの方に座って俺を膝に横抱きにした状態だけど。
「……それは……東の国に正式な抗議を入れなければいけませんな!」
魔王さんが昨日の出来事を包み隠さず報告すると、ファイさんが、普段の穏やかな様子から想像もつかないくらい怒ってくれた。これはこれで嬉しいことだと思うんだけど、魔王さんはずっと俺の頭を撫でながらではあるものの冷静だった。
「抗議は必要ない。それに、山の国が落ち着くまで……または東の国に黒髪が生まれるまで、俺が魔術協力をしてやることに決めた」
「はぁ!? こんなことをされて、助けてやるというのですか!? 御心は立派ですが、無礼をはたらいてきた国に対してお優しすぎます!」
ファイさんが叫ぶ横で、ローズウェルさんも騎士団長さんもうんうんと深く頷いている。
そうだよね。俺もどちらかと言うとそっち派。でも……
「もちろんタダとは言わない。俺が魔術協力をする際に協力料に加えて口止め料や慰謝料を上乗せするし、次の会議では俺の議案を通すのに協力してもらう。必ず東の王の票が俺につくとすれば色々とやりやすいだろう?」
魔王さんって本当に王様だよね。
こういうところも好き。
「しかし……」
「東の国の民を見捨てろというのか?」
うんうん。こういうところも好き。
「立派です。とても立派なお考えですが……されたことを考えると……」
「……はぁ。折角ライトが忘れさせてくれたんだ。蒸し返さないでくれ。俺もあまり引きずりたくない」
魔王さんが本当に嫌そうに吐き捨てると、ファイさんが慌てて頭を下げた。
「あ……は、はい! 配慮が足りませんでした! 以後、慎みます。それに……ライト様、ありがとうございます!」
「ん? 俺は魔王さんとイチャイチャしただけだよ? ね?」
「あぁ。ライトがかわいいからだな」
微妙に会話がかみ合っていないんだけど、みんな、魔王さんがご機嫌なのでほっとしたようだった。
「細かい会議の内容は、明日にでも書記からの書簡が届くだろう。今回は特に大きな話はないが、穀物の関税の話と、南の共有港に関しては国内でも対応が必要だ。後日専門家を呼んで会議をしよう」
「承知致しました」
「俺からは以上だが……ライトからは何かあるか?」
「俺? うーん。普通にお友だちと楽しく観光してきただけだからなぁ。あ、そうだ。これいいでしょう? 魔王さんとおそろい!」
今日はいつものシンプルなスタンドカラーのシャツなので、服の上に着けてきた黒い石のネックレスを見せると、ファイさんが少しだけ近づいて表情を和らげた。
「ほう! とても良い物ですね! 体内の魔力循環が良くなりそうです。国内では取れない素材ですし、加工も……素晴らしい! 見た目も機能もライト様にピッタリかと!」
買い物を褒められるのって嬉しいよね。俺が自慢げに笑うと、魔王さんも自分の服の襟元に指を入れて、服の下に身に着けてくれていたお揃いのネックレスをみんなに見せる。
「俺の分も、ライトがわざわざ自分の小遣いで買ってくれたんだ。お揃いだし、体にも良いだろうと」
「なんと!」
ファイさんの明るい叫び声に続いて、ローズウェルさんと騎士団長さんが手で顔を覆いながら呻いた。
「っ、か、かわいい……おそろいなんて……」
「かわいいいぃぃ……わざわざ自分の小遣いでこんな高価なものを……」
「「「天使!」」」
魔王さんの健康は俺の健康だし、俺がそれなりにお金の余裕があることはみんな知っているのにね。
でも、三人の反応がこんなにいいなら、今度の新聞の日記、この話にしよう。
310
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
有能すぎる親友の隣が辛いので、平凡男爵令息の僕は消えたいと思います
緑虫
BL
第三王子の十歳の生誕パーティーで、王子に気に入られないようお城の花園に避難した、貧乏男爵令息のルカ・グリューベル。
知り合った宮廷庭師から、『ネムリバナ』という水に浮かべるとよく寝られる香りを放つ花びらをもらう。
花園からの帰り道、噴水で泣いている少年に遭遇。目の下に酷いクマのある少年を慰めたルカは、もらったばかりの花びらを男の子に渡して立ち去った。
十二歳になり、ルカは寄宿学校に入学する。
寮の同室になった子は、まさかのその時の男の子、アルフレート(アリ)・ユーネル侯爵令息だった。
見目麗しく文武両道のアリ。だが二年前と変わらず睡眠障害を抱えていて、目の下のクマは健在。
宮廷庭師と親交を続けていたルカには、『ネムリバナ』を第三王子の為に学校の温室で育てる役割を与えられていた。アリは花びらを王子の元まで運ぶ役目を負っている。育てる見返りに少量の花びらを入手できるようになったルカは、早速アリに使ってみることに。
やがて問題なく眠れるようになったアリはめきめきと頭角を表し、しがない男爵令息にすぎない平凡なルカには手の届かない存在になっていく。
次第にアリに対する恋心に気づくルカ。だが、男の自分はアリとは不釣り合いだと、卒業を機に離れることを決意する。
アリを見ない為に地方に移ったルカ。実はここは、アリの叔父が経営する領地。そこでたった半年の間に朗らかで輝いていたアリの変わり果てた姿を見てしまい――。
ハイスペ不眠攻めxお人好し平凡受けのファンタジーBLです。ハピエン。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした
リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。
仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!
原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!
だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。
「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」
死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?
原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に!
見どころ
・転生
・主従
・推しである原作悪役に溺愛される
・前世の経験と知識を活かす
・政治的な駆け引きとバトル要素(少し)
・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程)
・黒猫もふもふ
番外編では。
・もふもふ獣人化
・切ない裏側
・少年時代
などなど
最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。