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番外編1 ●●が怖い執事長の話
真実(3)
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「魔王さん、恩返しって? 騎士団長さんがローズウェルさんのこと助けてあげたの?」
私の戸惑いを察してか、ライト様が魔王様の顔を覗き込む。
「あぁ、それは……あ、いや、ローズウェルのとてもプライベートな話だ。詳細は言えない。だが、ウオルタがローズウェルを救ったんだ。とても立派な男なんだぞ?」
「へぇ……?」
これは……なにか私の知らないことがあるな。
しかも、魔王様は私が知っていると……知っているからウオルタと付き合っているのだと勘違いされているようだ。
申し訳ないが、その勘違い、利用させて頂きます!
「魔王様、ライト様にはお話頂いても大丈夫ですよ。ぜひ、ウオルタの武勇伝を話してやってください」
「……いいのか? これを言うと、お前の……その……」
「大丈夫です。ライト様には先ほど、少しだけお話もしました」
お優しい方なので、私が強姦された話を隠そうとしてくださっているのは解る。
でも、今は……お気遣いよりも、真実が知りたい。
「では……昔、大きな戦争があったことは知っているな?」
私が頷くと、魔王様はライト様の方へ向きなおって、ゆっくりお話を始めた。
「うん。三〇〇年くらい前なんだよね? 魔王さんが魔王になる前」
「そうだ。その戦争の中で、戦局が非常に悪くなったころ……盾も持たずに戦場に送り込まれる兵士がいた。指導者として情けない話だが、命を懸けて戦ってもらわなければ勝利への突破口が開けなかったんだ……」
「そう……」
「しかも、その兵士の心のケアを俺たち上層部はきちんとしてやれなかった。そのせいで……一部の暴走した兵士が、当時の城で一番かわいくて、皆の憧れであったローズウェルに……その……」
口ごもる魔王様の手を、ライト様が握る。
「さっき、ちょっと聞いた。ローズウェルさん立派だと思うけど、俺だったら襲って来た相手の事情なんて気にせず返り討ちにしちゃうかな」
「普通はそれでいいんだ。無理強いや脅迫……犯罪だ。だが……ローズウェルが耐えてくれたおかげで、兵士が少しでも心穏やかに戦場に向かえたのも事実なんだ」
私の辛い過去ではあるが、そのせいで大切なお二人にまで辛い顔をさせてしまって申し訳ない。
そう思っていると、不意に魔王様の優しい視線が私に向いた。
「ウオルタは、ローズウェルのそういう優しく、気高い部分に惚れたんだ」
え?
「ウオルタには……同時期に騎士見習いになった友人ともいえる同僚がいたそうだ。ウオルタは戦争が始まる直前に騎士になったが、友人はまだ見習いで……盾を持たずに戦場へ行くことになったそうだ」
騎士見習い……最初に襲ってきた男か。
そうか……ウオルタと、同期だったのか……。
「戦場へ行く前日まで、泣きながら自分の境遇を呪い、先に騎士になったウオルタを責め、敵国どころか自軍のことも罵倒していたらしい」
「……明日自分が死ぬって解っていれば……仕方ないのかもね」
「あぁ。そのケアができていなかったのは悔やんでも悔やみ切れない。だが……その騎士見習いの心を穏やかにしてくれたのが……ローズウェルだったそうだ」
「あ……」
「未練は沢山あるが、絶対にかなうことのない夢を一つかなえたと。ローズウェルが生きる国を守るためなら命をかけられると……友人のウオルタにだけこっそり教えて、吹っ切れた顔で戦場へ向かい勇猛果敢に散っていったと……」
嫌な思い出、恐怖、役に立ったという喜び、その時点からウオルタに知られていたという羞恥や情けなさ……頭の中はぐちゃぐちゃだが、恐らく、話はここからだ。
一度深呼吸をして、続く魔王様の御言葉に耳を傾けた。
私の戸惑いを察してか、ライト様が魔王様の顔を覗き込む。
「あぁ、それは……あ、いや、ローズウェルのとてもプライベートな話だ。詳細は言えない。だが、ウオルタがローズウェルを救ったんだ。とても立派な男なんだぞ?」
「へぇ……?」
これは……なにか私の知らないことがあるな。
しかも、魔王様は私が知っていると……知っているからウオルタと付き合っているのだと勘違いされているようだ。
申し訳ないが、その勘違い、利用させて頂きます!
「魔王様、ライト様にはお話頂いても大丈夫ですよ。ぜひ、ウオルタの武勇伝を話してやってください」
「……いいのか? これを言うと、お前の……その……」
「大丈夫です。ライト様には先ほど、少しだけお話もしました」
お優しい方なので、私が強姦された話を隠そうとしてくださっているのは解る。
でも、今は……お気遣いよりも、真実が知りたい。
「では……昔、大きな戦争があったことは知っているな?」
私が頷くと、魔王様はライト様の方へ向きなおって、ゆっくりお話を始めた。
「うん。三〇〇年くらい前なんだよね? 魔王さんが魔王になる前」
「そうだ。その戦争の中で、戦局が非常に悪くなったころ……盾も持たずに戦場に送り込まれる兵士がいた。指導者として情けない話だが、命を懸けて戦ってもらわなければ勝利への突破口が開けなかったんだ……」
「そう……」
「しかも、その兵士の心のケアを俺たち上層部はきちんとしてやれなかった。そのせいで……一部の暴走した兵士が、当時の城で一番かわいくて、皆の憧れであったローズウェルに……その……」
口ごもる魔王様の手を、ライト様が握る。
「さっき、ちょっと聞いた。ローズウェルさん立派だと思うけど、俺だったら襲って来た相手の事情なんて気にせず返り討ちにしちゃうかな」
「普通はそれでいいんだ。無理強いや脅迫……犯罪だ。だが……ローズウェルが耐えてくれたおかげで、兵士が少しでも心穏やかに戦場に向かえたのも事実なんだ」
私の辛い過去ではあるが、そのせいで大切なお二人にまで辛い顔をさせてしまって申し訳ない。
そう思っていると、不意に魔王様の優しい視線が私に向いた。
「ウオルタは、ローズウェルのそういう優しく、気高い部分に惚れたんだ」
え?
「ウオルタには……同時期に騎士見習いになった友人ともいえる同僚がいたそうだ。ウオルタは戦争が始まる直前に騎士になったが、友人はまだ見習いで……盾を持たずに戦場へ行くことになったそうだ」
騎士見習い……最初に襲ってきた男か。
そうか……ウオルタと、同期だったのか……。
「戦場へ行く前日まで、泣きながら自分の境遇を呪い、先に騎士になったウオルタを責め、敵国どころか自軍のことも罵倒していたらしい」
「……明日自分が死ぬって解っていれば……仕方ないのかもね」
「あぁ。そのケアができていなかったのは悔やんでも悔やみ切れない。だが……その騎士見習いの心を穏やかにしてくれたのが……ローズウェルだったそうだ」
「あ……」
「未練は沢山あるが、絶対にかなうことのない夢を一つかなえたと。ローズウェルが生きる国を守るためなら命をかけられると……友人のウオルタにだけこっそり教えて、吹っ切れた顔で戦場へ向かい勇猛果敢に散っていったと……」
嫌な思い出、恐怖、役に立ったという喜び、その時点からウオルタに知られていたという羞恥や情けなさ……頭の中はぐちゃぐちゃだが、恐らく、話はここからだ。
一度深呼吸をして、続く魔王様の御言葉に耳を傾けた。
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