魔王さんのガチペット

回路メグル

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番外編1 ●●が怖い執事長の話

一歩ずつ(2)

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「すっごく順調だね! じゃあ、もう恋人?」
「それは……」

 ライト様に相談してから一ヶ月ほど経った日の午後。
 また半休を利用してライト様に話を聞いて頂いていた。
 ライト様のお陰で、一歩踏み出せたこと。
 しっかり段階を経て、距離が縮まっていること。
 そして……

「どうしても、最後の……セックスが……怖くて」
「あー……」

 こんなに順調なのに。
 どんどん「恋人」で違和感がなくなっているのに。
 どうしても、夜、ベッドに押し倒されることだけは怖かった。
 抱きしめられながら眠るのは好きなのに。
 ウオルタと解っていても、欲情した男の荒い息、薄暗い中に浮かぶ大きな男の影、体を押さえつける太い腕、ベッドのきしむ音……どうしても、嫌なことを思い出して体がこわばる。

「私は、おそらく……ウオルタのことはちゃんと好きなんです。でも……これができないのに恋人にしてもらうのは……」
「そう? セックスしないと恋人ってことは無いと思うけど?」
「そうかもしれませんが……きちんと一線を越えないと、今まで親友として我慢してくれていたウオルタと新しい関係に進めない気がして……」
「うーん。じゃあ、逆は? ローズウェルさんが入れる方」

 本当に柔軟な方だ。だが……

「実は、ウオルタもそれを提案してくれました」
「お! じゃあ……!」
「ですが……自分がされて嫌だったことを……ウオルタにするのはもっと怖いんです」
「ローズウェルさん……」

 ウオルタは優しい、ライト様の言うことは正しい、冷静に考えればそうするのが良いのかもしれない。
 頭ではわかっているが……怖い。
 そんな私が臆病なだけの面倒な発言なのに……ライト様はなぜかかわいらしいお顔を一層かわいい笑顔にする。

「え~! ローズウェルさん優し過ぎない? そんなこと言ったら騎士団長さんますます惚れ直すでしょう?」
「それは……」

 実際、ウオルタは「や、優しすぎる! 惚れ直した!」と言って熱烈に何度もキスをしてくれたが……。

「怖がりなだけです」

 私は自分自身が情けない。
 抱かれるのも、抱くのも無理と言いながら、セックスをしないと恋人だと思えないなんて……我ながら面倒な奴だ。

「怖がりか……あ、じゃあ、一回シチュエーションをガラっと変えてしてみたら?」
「シチュエーション?」
「いつも、夜に薄暗いベッドだよね?」
「はい」
「だったら、明るい時間にソファとかですれば?」
「へ?」

 ライト様はすぐにでもできそうな提案をしてくれたが……そんなに単純なことか?
 ライト様のことは尊敬も信頼もしているが、なかなか信じがたい。

 信じがたいが……

 ライト様がおっしゃるなら、そうなのかもしれないと、小さな勇気が湧いた。

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