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番外編2 ○○が好きなメイドと、誕生日祝いの話
悔しい(1)
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私は、子どものころから「かわいい」が好きだった。
実家は大きな商家なので裕福。首都の隣町の大きなお家で、勉強も遊びも習い事も好きなだけさせてもらったし、「かわいい」と思った物もだいたい買ってもらえた。
服や家具はもちろん、「かわいいペットの人間」も。
たくさん買ってもらったけど、ちゃんとどれも大事にしたし、親には「そこまで本気で大事にして、かわいがるなら……次も買ってやろう」と言われるほど、すべての「かわいい」に本気で取り組んできたと思う。
だから、就職の時にはものすごく悩んだ。
かわいい服やアクセサリーに関する仕事?
かわいいペットに関する仕事?
化粧品、インテリア……かわいい情報の雑誌社も楽しそう!
でも……タイミングが悪かった。
大きな商家や貴族の子どもが通える上級学校の卒業のタイミングと、戦争の終わりが重なり、「戦後復興のためにも、優秀な人材はなるべくお城や役所、大きな商会へ就職して欲しい」と通達があった。
私は特別勉強ができたわけではなくて、座学は平均くらいだったけど……。
「リリリさん、器用で体力があって何でもできる子をお城のメイドに欲しいと連絡があったの。あなたを推薦しようと思うんだけど……どうかしら? ご実家はお兄様が継がれるのよね?」
校長室に呼び出されて、若い頃はお城のメイドだったというもう二〇〇〇歳近い校長先生が皺だらけの顔を更にくしゃくしゃにして私に笑顔を向けたのをよく覚えている。うちの学校から人気職の「お城のメイド」が出ればとても喜ばしいことだから。
それに、校長先生の後輩ってことになるから、特別嬉しいのかも。
「メイド……」
校長先生はお団子にした黄色い髪とヤギ角を揺らしながら深く頷く。
メイド……メイドって……私の実家に来てくれているメイドさんは、掃除や洗濯が主な仕事だけど、お城は……確か校長先生が思い出話のように語っていた。
魔法で掃除ができるようになっているから、掃除は魔術師さんの補助程度。
洗濯は生活している人が少ないから意外と量が少ないし、大型洗濯機で簡単。
それよりも、お城を美しく保つ補修や、衣装のメンテナンス、パーティーの取り仕切り、繁忙期は書類仕事……ルーティンではない、日々対応する様々な細かいお仕事が多いと。
校長先生がやった仕事で一番の自慢は、先代の魔王様が即位された時のマント全面に伝統模様を刺繍したことだと。
意外とクリエイティブな仕事で、外国の要人に会うことも多く、マナーやエチケットも求められると。
「お城のメイドはあなたにぴったりよ。裁縫や工作の成績が良くて、運動神経が良くて、大きな商家出身で幼いころからマナーもエチケットも身に着けているでしょう? それに……」
校長先生がお城から届いたらしい書類をじっと眺めてから、もう一度私に笑顔を向ける。
「先日即位された新しい魔王様に、人間のペット様が献上されるそうよ」
「人間の……ペット様?」
「あなた、お家でずっとペットを飼っているんでしょう?」
「は、はい!」
「小柄で人間に近い身長だし、顔も威圧感が無いし、角も上向きじゃない羊角だし……ペット様が怖がらなさそうよね」
「……!」
「できればペット様の御世話ができる子をというご希望なの」
「……!!」
え? これは、い、いいかも!?
実家は大きな商家なので裕福。首都の隣町の大きなお家で、勉強も遊びも習い事も好きなだけさせてもらったし、「かわいい」と思った物もだいたい買ってもらえた。
服や家具はもちろん、「かわいいペットの人間」も。
たくさん買ってもらったけど、ちゃんとどれも大事にしたし、親には「そこまで本気で大事にして、かわいがるなら……次も買ってやろう」と言われるほど、すべての「かわいい」に本気で取り組んできたと思う。
だから、就職の時にはものすごく悩んだ。
かわいい服やアクセサリーに関する仕事?
かわいいペットに関する仕事?
化粧品、インテリア……かわいい情報の雑誌社も楽しそう!
でも……タイミングが悪かった。
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「リリリさん、器用で体力があって何でもできる子をお城のメイドに欲しいと連絡があったの。あなたを推薦しようと思うんだけど……どうかしら? ご実家はお兄様が継がれるのよね?」
校長室に呼び出されて、若い頃はお城のメイドだったというもう二〇〇〇歳近い校長先生が皺だらけの顔を更にくしゃくしゃにして私に笑顔を向けたのをよく覚えている。うちの学校から人気職の「お城のメイド」が出ればとても喜ばしいことだから。
それに、校長先生の後輩ってことになるから、特別嬉しいのかも。
「メイド……」
校長先生はお団子にした黄色い髪とヤギ角を揺らしながら深く頷く。
メイド……メイドって……私の実家に来てくれているメイドさんは、掃除や洗濯が主な仕事だけど、お城は……確か校長先生が思い出話のように語っていた。
魔法で掃除ができるようになっているから、掃除は魔術師さんの補助程度。
洗濯は生活している人が少ないから意外と量が少ないし、大型洗濯機で簡単。
それよりも、お城を美しく保つ補修や、衣装のメンテナンス、パーティーの取り仕切り、繁忙期は書類仕事……ルーティンではない、日々対応する様々な細かいお仕事が多いと。
校長先生がやった仕事で一番の自慢は、先代の魔王様が即位された時のマント全面に伝統模様を刺繍したことだと。
意外とクリエイティブな仕事で、外国の要人に会うことも多く、マナーやエチケットも求められると。
「お城のメイドはあなたにぴったりよ。裁縫や工作の成績が良くて、運動神経が良くて、大きな商家出身で幼いころからマナーもエチケットも身に着けているでしょう? それに……」
校長先生がお城から届いたらしい書類をじっと眺めてから、もう一度私に笑顔を向ける。
「先日即位された新しい魔王様に、人間のペット様が献上されるそうよ」
「人間の……ペット様?」
「あなた、お家でずっとペットを飼っているんでしょう?」
「は、はい!」
「小柄で人間に近い身長だし、顔も威圧感が無いし、角も上向きじゃない羊角だし……ペット様が怖がらなさそうよね」
「……!」
「できればペット様の御世話ができる子をというご希望なの」
「……!!」
え? これは、い、いいかも!?
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