魔王さんのガチペット

回路メグル

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番外編3 一番の●●

二番

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 一番と「友だち」関係を続けて五〇年近くが過ぎたころ、また東の国で国際会議が行われることになった。

「次王!」
「一番!」

 ほぼ恒例になっている会議前の一番との会食。
 待ち合わせていた東の国の城のエントランスホールにいたのは一番と護衛の騎士が二人と……黒髪の若い魔族がもう一人。
 一番より五〇歳ほど若いか?
 まだ幼さが残るものの、整った男らしい顔で、一番よりやや背は低いがよく鍛えられた体躯。真ん中で分けた黒髪は、一番よりは長いが、耳を隠す程度にしか伸ばしていない。
 服装は黒い詰襟に金の装飾が付いた、魔王の国の魔王や次期王が着る衣装。
 ……目の前にいるのはつまり……。

「やっと二番が成人したから連れてきたんだ!」

 一番がよく「血の繋がらない弟だ」と言っている「二番」か。

「あぁ、成人おめでとう。私は導王の国の次王だ」
「一番様から噂はかねがね……二番目の次期魔王候補、二番と呼ばれている。よろしく頼む」
「こちらこそ。これからは私たちの時代だ。長く顔を合わせることになるだろう。よろしく」

 軽く握手をした「二番」は、真面目で優しすぎると聞いていたが、思ったよりも落ち着いてしっかりとしている印象を受けた。
 しかも、手が触れただけで感じるこれは……。

「聞いてくれよ、次王。最近結界魔法の能力も二番に負けたんだ。俺が勝てるのは武術と身長、顔の良さくらいになってしまった」

 あぁ、やはり。
 かなり魔力に恵まれている。
 私には劣るが……王として平均的であろう一番に比べればかなり恵まれている。
 それにしても一番は……本当に自分が王になる気は無いんだな?

「顔の良さ? どう見ても……いや、否定してはいけないな。好みによるものだから、そう感じる奴もいるか」
「次王……お前、自分が美形だからってなぁ……。まぁいい。それよりもこいつがお前に聞きたいことがあるらしい」
「私に?」

 初対面で何を聞くというのだ?
 訝しんでいたが……二番はまだ幼さの残る瞳をキラキラと輝かせた。
 まるで、憧れの存在を見るかのように。

「先日、貴方が発表され、国際特許を申請された新しい構造の魔法陣、とても素晴らしかった! 魔法陣の構造を変えることで、魔法石の消費を抑えるなんて、考えたことも無かった! なぜあのようなことを思いつけるんだ?」
「あ……」

 一〇〇歳ほど年下の王候補……言ってみれば、後輩のような存在に褒められて、悪い気はしない。
 あの魔法陣は、魔法研究家としても、次期王としても、素晴らしい物が作れたと思っている。
 しかし……
 
「あの新構造で国民の暮らしはもっと豊かになる。魔法技術としての素晴らしさと、民を豊かにすることの素晴らしさ……技術も、考え方も、次期王候補として見習うことばかりだ。貴方のような魔法の才があれば、俺ももっと、国民全員を幸せにできるのに……」

 素直に喜べばいいのに。
 豊かな国の王候補を目の前にして、どうしても矮小で貧しい自分がいる。

 あれは……あの魔法陣は……「国民の生活を豊かにする」ためではない「国民の生活を最低限整える」ためのものだった。「国民全員を幸せにする」ではなく、「不幸になる国民をなんとか一人でも減らす」ものだった。
 我が国は年々魔法石の採掘量が減っている。
 魔法石を手に入れにくくなった国民のために、少しの魔法石でも今までの暮らしが維持できるように必死に考えて生み出したものだ。
 導王の国の国民や国内の役所、商会、工場が自由に使えるように国内特許は取ったものの利用料はゼロに設定してある。
 国際特許についても、世界的に魔法石の需要が減れば、輸入価格も落ち着くかもしれないから利用料を取らないという考えもあったが……やはり取ろう。そして、益は国民に還元しよう。
 貧しい考え方かもしれないが、豊かな国にとってあの魔法陣がそう見えるなんて……どうにも悔しかった。

「二番は最近、次王の話ばかりして……すっかりお前のファンだ。少し前までは一番様、一番様となついてくれていたのに」
「あ、そ、そんな、一番様のことも、もちろん尊敬しています! ただ、魔法技術に関しては……次期王としてのお勉強も沢山あるはずなのに、素晴らしい研究成果をいくつも発表されているところが尊敬しかない」

 次期王としての務めより、魔法の研究を優先させてもらっているだけだが……次期王としての勉強はして当たり前とでも言うような口ぶりだな?
 ……いや、違う。
 素直に褒めてくれているはずだ。
 嫌なことは言われていない。
 私が、一方的に悪く受け取っただけだ。
 悪気が無くこちらが引っかかることを言うのは一番だってある。

 それでも……なぜだろう?
 この二番と言う男は、どうにも好きになれる気がしなかった。
 数年後には平和ボケしたこいつが王か……。
 こいつと国際会議で話し合うことになるのか……。

 やはり一番が王になればいいのに。




 それに、一番が二番の話ばかりするのが気に食わなかった。
 初めてできた友だちに対しての……幼稚な嫉妬だった。
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