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番外編3 一番の●●
人間(1)
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すべてが順調だったわけではないが、人工魔法石の生産は成功した。
天然物に比べれば、どうしても持続時間または最大出力が落ちるし、当初集めた一〇〇名のうち、三〇名は作ることができなかった。
年間の生産量で言えば、他国が採掘する量に比べて三割程度にしかならない。
それでも、以前は一パーセント程度しか採掘できず、残りを共同採掘場と輸入に頼っていたのだ。
来年からは輸入量を大幅に減らせる。
もう少し、付与魔法が使える魔族が増えれば更に……。
「……これがもう少し早くできていれば……いや、結果論か」
他の魔法よりこの研究を先にすればよかった。
いや、他の研究を応用している部分もある。
仕方がない。
そして、私たちにとっては大発明の人工魔法石なので、他国に技術を盗まれるのではないかと警戒していたが……魔法石が潤沢にある他国にとっては、わざわざ作るなんて面倒なことは興味が無いらしい。
むしろ、我が国への輸出が減る分、国内での魔法石がだぶつくとか価格が下がるとかの話を聞いた。
一瞬イラっとしたが……まぁいい。私には大事な国民と共に自分たちの手で作る魔法石がある。
これで、私ももう王としての役目に落ち着いて取り組める。
国を発展して行ける。
戦争が始まってからずっと張っていた気が少し緩んだ時だった。
「導王様、人間の村から嘆願書が届いています」
「嘆願?」
執務室で最近大臣から引き継いだ書類を確認していると、ダリアラが一通の嘆願書を手に入ってきた。
「はい。国からの魔法石の配給は公的機関や商会などを除けば、それぞれの自治体に人口に応じた数を渡しております」
「そうだな」
「しかし人間の村は、現在近隣の魔族の街の属州扱いです。人口は魔族の数なので……」
「人間に魔法石が必要か?」
人間は魔法が使えない。魔力を持たない……言い方は悪いが劣等種族だ。
何に使うんだ?
「街のインフラは魔族が作ったものですし、一部の人間は魔力が無い代わりに魔法石を使用して魔法道具を使用します」
「……人間は、そんなこともできたのか? そうか……可愛らしいだけの愛玩動物だと思っていたが、知能や技術は魔族とあまり差が無かったか……」
「はい。なので……配給の人口に人間の数も入れて欲しいという嘆願です」
「なるほど……」
人間については一般常識として習ったし、触れ合う機会も、まぁ……平和な頃にごく稀に頼んでいた「出張サービス」などであるにはあるが、私は彼らを勝手に可愛がることしかしなかった。
暮らしも生態も知ろうとしなかった。
考えて見れば、彼らにも生活がある。
「国内に人間の村は三つ。人口は……魔族の〇.一パーセントほどですね」
少ない。
そんな少数種族を気にしてやるほど、国内に余裕はない。
「私は……人間はとてもかわいいですが、魔力が使えない……この国の発展に貢献できない生産的ではない種族を……今は……」
ダリアラも、かなり言いにくそうではあるが、公人として非情な決断をすべきと思っているようだ。
「そうだな……」
その方が合理的だ。
今は、人間のかわいさよりも必要な物がこの国には多すぎる。
しかし……。
一番なら……「俺も合理的な方だが、王なら国民の一人も取りこぼすな」と言うだろうな。
ついでに「かわいくてエッチな人間は心の癒しだからいないと困るだろう?」なんて冗談と本音が混ざった言葉も付け加えるか。
「大臣の言うことは正しい。だが……そうしたくない」
「え?」
「生産性と言うなら、魔族は全員国のために働いているか? 赤子、老人、病気の者、魔法が下手な者、その他様々な個性の魔族がそれぞれの役割を担っている。弱い者だろうが、個性的な者だろうが、すべての者を救えてこそ、国なのではないか?」
「それは……!」
「もちろん、今はまだ戦争の傷跡も深く、国民すべてに余裕がない。そんな時に弱者を助けることは難しいことかもしれない。だが、そんな時だからこそ、見捨てず、全員で乗り越えて強い国にしていきたい」
私の言葉に、ダリアラは大きく目を見開いた。
私らしくない言葉だからかもしれない。
……私が、一生懸命だからかもしれない。
「甘いことを言っている自覚はある。だが……そういう国にしたい。力を貸してくれ」
ダリアラはしばらく手元の嘆願書を見つめた後、ゆっくりと口を開いた。
「……国有インフラの、魔法石の効率化が今月から始まります。その余剰分は災害備蓄の予定でしたが……半数を人間に割り当てましょう。魔族のへの配給に比べれば四分の一程度ですが、まずはこれで議会に提案してはいかがでしょうか?」
「ありがとう……私の無茶に付き合ってくれて」
「……私も本当は、人間が好きなので。できれば諦めたくないんです。導王様が勇気のあるお言葉をくださったので、覚悟を決めました」
ダリアラは、力強く頷き、早速議会へ提案を行ってくれた。
難色を示す議員も多かったが……最終的には、私の熱意に折れてくれた。
翌月には、人間の村への魔法石の配給が決まった。
天然物に比べれば、どうしても持続時間または最大出力が落ちるし、当初集めた一〇〇名のうち、三〇名は作ることができなかった。
年間の生産量で言えば、他国が採掘する量に比べて三割程度にしかならない。
それでも、以前は一パーセント程度しか採掘できず、残りを共同採掘場と輸入に頼っていたのだ。
来年からは輸入量を大幅に減らせる。
もう少し、付与魔法が使える魔族が増えれば更に……。
「……これがもう少し早くできていれば……いや、結果論か」
他の魔法よりこの研究を先にすればよかった。
いや、他の研究を応用している部分もある。
仕方がない。
そして、私たちにとっては大発明の人工魔法石なので、他国に技術を盗まれるのではないかと警戒していたが……魔法石が潤沢にある他国にとっては、わざわざ作るなんて面倒なことは興味が無いらしい。
むしろ、我が国への輸出が減る分、国内での魔法石がだぶつくとか価格が下がるとかの話を聞いた。
一瞬イラっとしたが……まぁいい。私には大事な国民と共に自分たちの手で作る魔法石がある。
これで、私ももう王としての役目に落ち着いて取り組める。
国を発展して行ける。
戦争が始まってからずっと張っていた気が少し緩んだ時だった。
「導王様、人間の村から嘆願書が届いています」
「嘆願?」
執務室で最近大臣から引き継いだ書類を確認していると、ダリアラが一通の嘆願書を手に入ってきた。
「はい。国からの魔法石の配給は公的機関や商会などを除けば、それぞれの自治体に人口に応じた数を渡しております」
「そうだな」
「しかし人間の村は、現在近隣の魔族の街の属州扱いです。人口は魔族の数なので……」
「人間に魔法石が必要か?」
人間は魔法が使えない。魔力を持たない……言い方は悪いが劣等種族だ。
何に使うんだ?
「街のインフラは魔族が作ったものですし、一部の人間は魔力が無い代わりに魔法石を使用して魔法道具を使用します」
「……人間は、そんなこともできたのか? そうか……可愛らしいだけの愛玩動物だと思っていたが、知能や技術は魔族とあまり差が無かったか……」
「はい。なので……配給の人口に人間の数も入れて欲しいという嘆願です」
「なるほど……」
人間については一般常識として習ったし、触れ合う機会も、まぁ……平和な頃にごく稀に頼んでいた「出張サービス」などであるにはあるが、私は彼らを勝手に可愛がることしかしなかった。
暮らしも生態も知ろうとしなかった。
考えて見れば、彼らにも生活がある。
「国内に人間の村は三つ。人口は……魔族の〇.一パーセントほどですね」
少ない。
そんな少数種族を気にしてやるほど、国内に余裕はない。
「私は……人間はとてもかわいいですが、魔力が使えない……この国の発展に貢献できない生産的ではない種族を……今は……」
ダリアラも、かなり言いにくそうではあるが、公人として非情な決断をすべきと思っているようだ。
「そうだな……」
その方が合理的だ。
今は、人間のかわいさよりも必要な物がこの国には多すぎる。
しかし……。
一番なら……「俺も合理的な方だが、王なら国民の一人も取りこぼすな」と言うだろうな。
ついでに「かわいくてエッチな人間は心の癒しだからいないと困るだろう?」なんて冗談と本音が混ざった言葉も付け加えるか。
「大臣の言うことは正しい。だが……そうしたくない」
「え?」
「生産性と言うなら、魔族は全員国のために働いているか? 赤子、老人、病気の者、魔法が下手な者、その他様々な個性の魔族がそれぞれの役割を担っている。弱い者だろうが、個性的な者だろうが、すべての者を救えてこそ、国なのではないか?」
「それは……!」
「もちろん、今はまだ戦争の傷跡も深く、国民すべてに余裕がない。そんな時に弱者を助けることは難しいことかもしれない。だが、そんな時だからこそ、見捨てず、全員で乗り越えて強い国にしていきたい」
私の言葉に、ダリアラは大きく目を見開いた。
私らしくない言葉だからかもしれない。
……私が、一生懸命だからかもしれない。
「甘いことを言っている自覚はある。だが……そういう国にしたい。力を貸してくれ」
ダリアラはしばらく手元の嘆願書を見つめた後、ゆっくりと口を開いた。
「……国有インフラの、魔法石の効率化が今月から始まります。その余剰分は災害備蓄の予定でしたが……半数を人間に割り当てましょう。魔族のへの配給に比べれば四分の一程度ですが、まずはこれで議会に提案してはいかがでしょうか?」
「ありがとう……私の無茶に付き合ってくれて」
「……私も本当は、人間が好きなので。できれば諦めたくないんです。導王様が勇気のあるお言葉をくださったので、覚悟を決めました」
ダリアラは、力強く頷き、早速議会へ提案を行ってくれた。
難色を示す議員も多かったが……最終的には、私の熱意に折れてくれた。
翌月には、人間の村への魔法石の配給が決まった。
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