魔王さんのガチペット

回路メグル

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番外編3 一番の●●

ライト様のため(4)

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――コンコン

「失礼します」

 慌てて涙を拭くと、入ってきたのは水色の髪の騎士だった。
 甲冑の色は濃紺でなく黒。
 魔王の国の方の、騎士だ。

「魔王様、騎士も全て治療と休養がすみました。導王様、この度のご対応、更に魔王様が回復されるまでの私共の滞在の許可、騎士団を代表して深く感謝いたします」

 水色の髪の騎士が、恭しく頭を下げる。
 身体は屈強で大きく、所作は品がある。騎士らしい騎士だな。

「あぁ。宿泊費も治療費も後で魔王にたっぷり請求するから、ゆっくりしていってくれ」
「ウオルタ、導王の言葉に甘えて休んでいてくれ」
「いえ、休息はもう充分です。こちらの騎士団に訓練所を貸して頂けることになりましたので、訓練に励みます。また、合同訓練の申し出も受けて頂けました。折角の機会なので、導王の国が誇る魔法騎士主体の騎士団と切磋琢磨できればと」

 王が真面目なら騎士団長も真面目だな。
 もし、ウエンダが生きていればもう少し……ん?

「ウオルタ……と言ったか?」
「はい。騎士団長を務めております、ウオルタと申します」

 今まで、国際会議や式典の場で魔王の後ろに立つ騎士をあまり見ないようにしていた。
 魔王の国の騎士団にとって、私は伝説の騎士を殺した敵国の長だから。
 だから……気が付いていなかった。よく魔王の側にいる水色の髪の騎士が、こんなにも彼に似ていると。
 顔も、体つきも、声も似ていて、そして騎士ということは……

「お前の親戚に……ウエンダという騎士が……」

 口にしてから「しまった」と思った。
 私が聞いてどうする?
 親戚だったとして、私はその命を奪った敵国の王なんだぞ?
 思わず騎士から視線を逸らすが、もう遅かった。

「兄のことを、覚えていてくださったのですね」
「兄……」

 やはり、ウエンダの血縁……弟か……!
 ということは……

「あ……すまない……! 私は……私は……っ」

 私は……の後が続かない。
 殺すつもりはなかった?
 引きこもって戦争から逃げていた?
 後悔している?
 私の立場ではどれも無責任で、意味の無い言葉に思えた。
 恨まれて当然だと。
 ウエンダを悔やむ言葉をかけられる立場に無いと。

「……これは、騎士団長ではなく、ウエンダの弟として個人的にお話させていただきます。死人の暴言であることをご理解ください」
「え? あ、あぁ」

 罵られる覚悟もしたが、騎士は穏やかな声で話を続けた。

「兄は……生前、酒に酔った時に言っていました。『戦争は導王が始めただけで、若くて才能がある次王様が早く即位していれば、きっとこんなことにはならなかった。あと一〇〇年早く生まれてくださっていればなぁ……でも、それだと年が離れすぎて仲良くして頂けないか』と。だから……失礼ながら戦犯でもある先王のことは恨んでいますが、当代の導王様のことを恨んでいる騎士は、一人もおりません」
「あ……」
「兄のことを、覚えてくれていて、ありがとうございます。兄も喜ぶと思います。一番様と一緒にお会いするのが、とても楽しかったとよく言っていましたから」
「ウエンダ……」
「導王、一番様もそうだ。お前を恨んではいない。きちんと理解されていた。だから俺も、戦争に関して言えばお前を恨んではいない。ぜひ、一番様とウエンダ、両方の墓参りに行ってくれ。同じ墓地だ」

 くそ……なんだってこう、魔王の国の奴らは……平和ボケの能天気ばかりなんだ?
 くそ……。
 くそぉ……。

 悔しさと……長年の心の冷たかった部分が温かくなるような安心感で、涙は止まらなかった。

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