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番外編3 一番の●●
何よりも大事なもの(3)
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賊の襲撃を受けた後、すぐに近くの街から警備兵と医者が呼ばれ、捉えた賊の拘束と、怪我人の治療に当たってくれた。
若い町医者は、黒髪の魔族への魔力干渉解除など初めて行う治療のはずだし、運び込まれた病院は首都に比べればとても小さく設備は最低限と言ったところではあったが、根気強く対応してくれ、一時間もすれば体内の魔力は落ち着いた。
護衛の騎士たちは外傷がひどかったが、「こちらの方が専門です。人数が多いので少し時間はかかりますが、今日中に完治できるかと」と言ってくれた。
しかし……
「人間の治療はあまり覚えがなく……外傷をふさぐ魔法くらいはできますが、おそらく中の太い血管か臓器がやられていて、出血がひどく……簡易な止血の魔法を施すだけでは根本治療にはならなくて……その……一刻も早く大きな病院か人間の治療に詳しいものに引き渡してください」
素直に頭を下げる町医者は誠実だと思う。できないのに無理をするよりも。
しかし……
「あ……そんな……いや、待っていろ、オファ。絶対に助けるからな?」
病院のベッドに横たわるオファは、私の言葉に弱々しく笑って頷いてくれたのに……。
助けたい気持ちとは裏腹に、私がしてやれることは、少なかった。
◆
すぐに移動用の魔法陣で城に戻り、国内の全ての病院、魔法研究所、人間の村に連絡をしたが……「人間の臓器を理解して魔法を使える医者は当院にはおりません。お力になれず申し訳ございません」と返事が来るばかりだった。私自身も、魔族の臓器なら時間をかければなんとか回復できる。しかし、人間の体内は……知見がない。
あぁ、これだけ人間が大事なら、なぜ今まで研究しようとしなかったんだ?
当然、人間の村の医療も、そこまでは発達していなかった。
何か……何か方法はないのか?
「導王様! 外国に聞いてみましょう! 許可をください!」
医務室のベッドで横たわるオファを呆然と見つめる私に、大臣のダリアラが声をかけてくれたが……外国?
我が国は友好国が少ない。
こんな時に話を聞いてくれる国なんて……。
「……魔王」
「承知致しました!魔王様に連絡いたします!」
たった一人だけ思いついた外国の王を呟くと、大臣はすぐに通信室へと走っていった。
魔王……いや、あいつの国だってそんな……だが……他に誰も思いつかなかった。
「オファ……」
手を握っても、オファはもう笑ってはくれなかった。
微かに、うめき声だけはまだ聞こえていた。
「オファ……」
今まで、大事な者を何人も見送ってきた。
先代の導王様、乳母、一番、マティオラをはじめとする大事なペットたち……。
どの別れも悲しかったが、いつも、心のどこかで「仕方がない」と思っていた。
情勢のために仕方がない。
状況的に何もできない。
寿命だから仕方がない。
ずっと、そう思って、大事な者の死を諦めて来た。
だが……
「嫌だ……オファ……嫌だ……お前は、お前だけは……!」
手放したくない。
お前の笑顔が見られなくなるなんて、嫌だ……
嫌だ!
「導王!」
両目から涙がこぼれた瞬間、医務室の扉が開いた。
「魔王……?」
大臣が連絡を取りに行って……三〇分たったか?
え? こんなに早く?
まさか、移動用の魔法陣で来てくれたのか?
来てくれたと言うことは……治療が、できるのか?
若い町医者は、黒髪の魔族への魔力干渉解除など初めて行う治療のはずだし、運び込まれた病院は首都に比べればとても小さく設備は最低限と言ったところではあったが、根気強く対応してくれ、一時間もすれば体内の魔力は落ち着いた。
護衛の騎士たちは外傷がひどかったが、「こちらの方が専門です。人数が多いので少し時間はかかりますが、今日中に完治できるかと」と言ってくれた。
しかし……
「人間の治療はあまり覚えがなく……外傷をふさぐ魔法くらいはできますが、おそらく中の太い血管か臓器がやられていて、出血がひどく……簡易な止血の魔法を施すだけでは根本治療にはならなくて……その……一刻も早く大きな病院か人間の治療に詳しいものに引き渡してください」
素直に頭を下げる町医者は誠実だと思う。できないのに無理をするよりも。
しかし……
「あ……そんな……いや、待っていろ、オファ。絶対に助けるからな?」
病院のベッドに横たわるオファは、私の言葉に弱々しく笑って頷いてくれたのに……。
助けたい気持ちとは裏腹に、私がしてやれることは、少なかった。
◆
すぐに移動用の魔法陣で城に戻り、国内の全ての病院、魔法研究所、人間の村に連絡をしたが……「人間の臓器を理解して魔法を使える医者は当院にはおりません。お力になれず申し訳ございません」と返事が来るばかりだった。私自身も、魔族の臓器なら時間をかければなんとか回復できる。しかし、人間の体内は……知見がない。
あぁ、これだけ人間が大事なら、なぜ今まで研究しようとしなかったんだ?
当然、人間の村の医療も、そこまでは発達していなかった。
何か……何か方法はないのか?
「導王様! 外国に聞いてみましょう! 許可をください!」
医務室のベッドで横たわるオファを呆然と見つめる私に、大臣のダリアラが声をかけてくれたが……外国?
我が国は友好国が少ない。
こんな時に話を聞いてくれる国なんて……。
「……魔王」
「承知致しました!魔王様に連絡いたします!」
たった一人だけ思いついた外国の王を呟くと、大臣はすぐに通信室へと走っていった。
魔王……いや、あいつの国だってそんな……だが……他に誰も思いつかなかった。
「オファ……」
手を握っても、オファはもう笑ってはくれなかった。
微かに、うめき声だけはまだ聞こえていた。
「オファ……」
今まで、大事な者を何人も見送ってきた。
先代の導王様、乳母、一番、マティオラをはじめとする大事なペットたち……。
どの別れも悲しかったが、いつも、心のどこかで「仕方がない」と思っていた。
情勢のために仕方がない。
状況的に何もできない。
寿命だから仕方がない。
ずっと、そう思って、大事な者の死を諦めて来た。
だが……
「嫌だ……オファ……嫌だ……お前は、お前だけは……!」
手放したくない。
お前の笑顔が見られなくなるなんて、嫌だ……
嫌だ!
「導王!」
両目から涙がこぼれた瞬間、医務室の扉が開いた。
「魔王……?」
大臣が連絡を取りに行って……三〇分たったか?
え? こんなに早く?
まさか、移動用の魔法陣で来てくれたのか?
来てくれたと言うことは……治療が、できるのか?
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