魔王さんのガチペット

回路メグル

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第10章 その後の世界 / パーティーとやりたいことの話

パーティーの日/本番(1)

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「それじゃあ、会議の後のパーティーでね?」

 休憩時間が終わり、魔王さんたちは会議室へ、ペットちゃんたちは街か控室へ向かう。
 今のところ全員がご機嫌で過ごしてくれているな。
 あとはメインのパーティーか……

「ライト様、先に絵の仕上げをどうぞ。その間に片付けと用意を進めておきますので」
「手配は順調です。二時間ほどお時間を取っていただいてもかまいませんわ」
「ありがとう、イユリちゃん、ドーラルさん。頼りになる人ばっかりで助かるなぁ」

 素直にお礼を言っただけなのに、イユリちゃんもドーラルさんも、その後ろのローズウェルさんやリリリさんまで手に持っていたバインダーに視線を落としてから優しく笑ってくれた。

「ライト様が今日までしっかり準備をされていたからですよ」
「このリストや工程表、とてもわかりやすくてミスも防げますわ」
「頭のいい方とは思っていましたが……仕事のできる方でもあるのだと、今日までに何度も気づかせていただきました」

 イユリちゃん、ドーラルさん、ローズウェルさんまで……褒めすぎなんだよなぁ。
 元の世界で店のオーナーがやり手だったから、その真似ってだけなんだよ?
 でも、今日は謙遜よりも作業が先か。
 それに……

「ありがとう。上手に仕事をまわすコツは、優秀な周囲の人に任せることだからね。みんなよろしく!」

 俺が上手くできているのはこれが大きい。
 
「はい!」
「お任せくださいませ!」

 信頼できる人たちが頑張ってくれているんだから、俺ももうひと頑張り。
 せっかく魔王さんが任せてくれた仕事だし、どうしてもやりたいことを盛り込んだし……絶対に成功させたい。

「よし」

 気合いを入れるために魔王さんの紋が入った胸元を叩いて、自室へと向かった。


      ◆


 お土産用の絵の仕上げを終わらせ、その絵を持ってお土産の最終確認。
 パーティー会場の確認。料理の配置の確認。飾りつけの調整。照明の調整。
 
「ライト様、楽団が到着しました!」
「じゃあ、早速で悪いけどリハーサルお願いして?」
「はい!」

 楽団とのリハーサル、それに合わせてスケジュールの微調整……

「これで一通り……」
「ライト様、お着替えは?」
「あ、そうだった!」
 
 イユリちゃんが指摘してくれて、慌てて自室に戻る。
 別に午前中と同じスーツでも構わないんだろうけど、特別感を出したくてパーティーは別の……白地に銀糸で模様の入った詰襟のセットアップ。魔王さんの今日の衣装とちょうど色違いだ。
 ついでに、リリリさんに髪も結いなおしてもらって、服に合わせた白地に銀糸の細いリボンを結んでもらう。これで見た目も完璧。

「よし。会議が終わるまであと五分か……」

 自信をもって背筋を正しながら、会場を見渡せば、もう準備は整って、全員が配置についている。
 用意は完璧。
 でも、どんなに完璧にしたとしても、イレギュラーなことは起こる。

「ふぅ……」
 
 大丈夫。俺なら、ここのみんななら、なにが起きても対処できる。
 よし。

「みんな、よろしくね!」
「はい!」
 
 さぁ、いよいよ本番だ。


      ◆


 基本的にはいつものパーティーだ。
 広間に置いたたくさんの丸テーブル。ビュッフェ形式の料理。部屋の隅で楽団の生演奏。
 主催国の王様である魔王さんは、小高い前方ステージの上の王座に座っていて、俺は魔王さんの膝の上。
 パーティーは「美味しい料理とかわいいペットで気を許して、楽しく話すことで親睦を深めるのが目的」だからこの辺りはいつも通り。
 少し違うのは……

「魔王様! 今回の料理はライト様の手配だとうかがいましたが……!?」

 主催への挨拶一人目は、北の国の王様が興奮した様子で駆け寄ってきてくれた。
 この中ではやや若い王様で、黒髪ではなくクリーム色のボブカットの髪やクリーム色の軍服、幼い顔立ちが「王様」よりも「王子様」っぽい。
 王様の斜め後ろには褐色肌で真面目なペットのブランカちゃんがいて、階段で長いマントを踏まないようにさりげなく裾を持ってあげていた。

「あぁ。ライトの手配だ。今日はライトが『今までにパーティーで食べて美味しかったもの』を集めたそうだ」

 ……っていえばなにが並んでもおかしくないからね。

「ライト様! このような大事な場で我が国の料理を並べていただけるなんて光栄です!」

 来賓のみんなはそれぞれの話に夢中……でもないな。北の王様が興奮して声が大きくなっているから俺たちに注目している人が多い。ラッキー。

「テーマに沿って考えていたら、自然と選んじゃった。あの料理に使っている、魔王の国の特産品のハーブ。魔王の国の料理に使うのも美味しいと思うんだけど、北の国で初めてジャガイモパンケーキを食べた時に『これだ!』って思っちゃったから」
「えぇ! えぇ、えぇ! あの料理にハーブは欠かせません!」
「北の国のレシピよりも、ハーブ多めで作ってもらったんだけど、どうかな?」
「たしかに多いですが、こちらのレシピも味にパンチがあっていいですね。国に帰ったらこちらを参考にしたものも作らせてみます!」

 国にもよるんだろうけど、北の国の王様は「うちみたいな地味な国に他国が注目してくれるなんて! 嬉しい!」って感じかな? 好意的な意見が最初に出ると、場の雰囲気がそっちに流されるから助かるなぁ。

「あぁ、確かに北の国でも食べるが……」
「ハーブがフレッシュで美味いな」
「あまり気にせずに食べていたが、ライト様チョイスと思うと……こんなに美味い料理だったか」
「うちの国でも作らせてみるか」

 これで大幅に輸出が増えるとまではいかなくても、切っ掛けくらいは作れたかな?
 国のトップの舌に直接訴えかけられるっていい場だよね。

 北の王様が嬉しそうに階段を下りていくと、入れ替わりで赤紫色の長い髪を後ろで結んだ、二股の竜角の魔族さんが魔王さんに近づいてきた。後ろには美人なカーラちゃんがいる。
 島の国の王様だ。
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