いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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第二章~プロポーズ~

八十七話 

 次の日から――宏兄のお家での、新生活が始まった。

「わあ……! お洗濯日和やね」

 よく晴れた空を見上げて、ぼくは思わず笑顔になる。
 雨が続いていた空が、今日は真っ青に高い。そろそろ、梅雨明けなのかもしれへん。

「よいしょ」

 ベランダにお布団を干して、ぱふぱふと叩く。ずっと寝かせて貰って、お世話になったお布団たち。今日のお天気なら、ふかふかになってくれるはず。

「~♪」

 シーツをはいで、マットだけになったベッドにコロコロをかけていると、宏兄がひょいと顔を出した。

「おーい。成ー」
「あっ、宏兄」

 ぱっと振り返ると、宏兄が目を丸くしてる。

「病み上がりなのに、こんなに働いて。無理してないだろうな?」
「あはは。もうすっかり元気やもん。これ以上寝てたら、体がなまっちゃう」

 宏兄ってば、心配性なんやから。 
 シーツと布団カバーを抱えて、くすくす笑う。宏兄も「仕方ないな」って顔で笑った。
 
「ところで、宏兄はどうしたん?」
「ああ。お前に見せたいものがあったんだ。ちょっと来てくれ」

 笑顔で手招きされる。ぼくは首を傾げつつ、後をついて寝室を出た。

「なになに?」
「見てのお楽しみ」

 楽しそうな宏兄について、廊下を歩く。ちなみに、宏兄のお家はうさぎやの二階なんよ。
 絵とか、観葉植物とか、いろいろな物がたくさんあって。でも、不思議と散らかってない、素敵なお家。

――宏兄らしいなあ……

 いままで、宏兄のお家に上がったことなかったん。オメガとしてのマナーやし、宏兄もフリーのアルファとして、すごく紳士的やから。ぼくをお家に誘ったりせんかったん。

――こういうことにならなきゃ、宏兄のお家に上がることは……ずっと無かったのかも……

 そう思うと、不思議やね。
 キョロキョロしながら歩いてると、宏兄が一つの部屋のドアを開けた。
 連れてこられたんは、宏兄の書斎の隣の部屋。

「ここ、成の部屋にしないか」

 きれいなレースのカーテンが、はためいていた。開け放された窓から吹き込んできた風が、ぼくの前髪を揺らす。
 日当たりの良いきれいな洋室に、目を見開いた。

「わあ……!」
「ひとつ遊んでた部屋なんだ。好きに使ってくれな」
「宏兄っ」

 大らかなほほ笑みに、胸がほかほかと温かくなる。
 お部屋に足を踏み入れると、空っぽの本棚とチェストが置かれてて。ローテーブルに、夏用の涼しそうな敷物がある。

「あ……」

 ぼくは、気づいた。
 使ってないって言ってたのに……このお部屋、ぴかぴかに綺麗や。じわじわと瞼が熱くなってくる。

――わざわざ、誂えてくれて……

 綺麗なお部屋に……ぼくの好きなインテリア。
 本当に、急に決まった結婚やったのに。大急ぎで、ぼくのお部屋作ってくれたんや。それって――

 「ここに居ていいよ」って、宏兄の気持ちが伝わってくる。

 そう思ったら、ありがたくて……足元がふらつきそうなくらい。
 胸がいっぱいで、苦しい。肩を抱き寄せてくれる、大きな手を握りしめた。

「宏兄、ほんまにありがとう……」
「当たり前だろ」
 
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