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第二章~プロポーズ~
百九話
お昼ごろ――ぼくは、友菜さんとの待ち合わせのために、カフェの列に並んでた。
友菜さんに連絡したらね、「とにかく会おう」ってことになってん。
「友菜さん、お元気やろか……」
とてもいいお天気で、日よけのルーフがアスファルトに濃い陰を落としてる。
友菜さんが指定してくれたカフェは、人気のお店みたい。まだお昼前なのに、ぼくの前後に何組かお客さんが待っていた。さりげなく、センター認証店を選んでくれる優しさ……友菜さんは本当にすごいです。
――すると、通りの向こうから手を振る人影が。小走りのスニーカーが、トコトコと軽快な足音を運んでくる。
「成己くん!」
「友菜さんっ、お久しぶりで――」
近づきしなに華奢な腕が開き、ぱっと抱きしめられた。友菜さん愛用の、さわやかな香水の匂いに包まれ、頬が熱くなる。
「わあっ!?」
「ごめんねえ! 会いたかったよー!」
「友菜さんっ……ぼくもですっ。ごめんなさい、ずっと連絡できなくて……!」
「何言ってんの。お互い様じゃん、そんなの! こんなに痩せちゃって」
両手に頬を挟まれ、「ふぎゅ」と声が漏れる。
キャップの下、勝気な目が潤んでいるのを見て……ぼくも、胸に熱いものがこみ上げてきた。
友菜さんこそ、ずいぶん痩せてる。きっと、色々大変に違いないのに、ぼくのことまで気にかけてくれて――
「友菜さん、ありがとうございます」
「うん。こちらこそ」
ぎゅっと握手して、ぼく達は笑い合った。
お店の中は、冷房が効いていてとても涼しい。バターと卵の甘い匂いの漂う店内の、窓際の席でくつろいだ。
「あたし、パンケーキと日替わりランチにするー」
「えと。ぼく、オムライスとパンケーキにしますっ」
スマホで注文を済ませて、お冷を用意すると、お話の準備が万端になる。
「成己くん、最近どう?」
「元気です。友菜さんは、そろそろ試験ですか?」
「ん、まあね~……」
お互いに、手探りの会話をしているのを感じ、顔を見合わせる。
――近藤さんの様子、聞きたいけど……不躾かなあ……
でも、お義母さんの言ってた通りの状況なら――友菜さんは、よほど辛い思いをしてるはずやもの。
友人として、何か力になりたい。
うんうん悩んでいると、友菜さんがおしぼりを握りしめ、身を乗り出した。
「ねえ、成己くん。……ちょっと、のっけから突っ込んだ話してもいい?」
「は、はいっ。なんでしょう?」
痛いほど真剣な様子に、どきりとして身構える。
「ごめん。友達に、聞いたんだけどさ。成己くん、城山くんと別れたって……」
「!」
殆ど聞こえないほど、小さな声で囁かれた言葉に、ぼくは目を見開く。
友菜さんが言うには――ぼくが、陽平と別れたこと……学校の方でも、公然となってるんやって。
なんでも――陽平がそう宣言したらしく。
返事に詰まるぼくに、友菜さんは忙しく両手を振った。
「ご、ごめんね! ぶしつけなこと聞いちゃって……!」
「い、いえ。大丈夫です! 本当のことで、驚いちゃって……」
「……そうなんだ。あのさ、大丈夫……なわけないよね」
友菜さんは、気づかわし気に眉を顰める。
自分の痛みのように、ぼくのことを思ってくれてるのが伝わってくる。――これほど、心配をかけていたなんて。
「あ、ぼく――」
「ねえ成己くん。……あたし、何か出来ることないかな?」
「えっ」
友菜さんの手が、ぼくの手を包んだ。
「ほら、あたしさ。小さいとは言え社長令嬢だし。何か、力になれるかもしれないから」
「……友菜さん」
あまりに暖かい眼差しに、息を飲む。
今日、このために来てくれたのが、ハッキリわかったから。
――近藤さんのこと、すごく心配なはずやのに。友菜さんは、どうしてこんなに優しいんやろう……
ぶわ、と熱が上った瞼を、手のひらで押さえた。
自分のことばっかりやった自分が、情けない。
……ぼくも、もっと強くならなくちゃ。
「ごめんなさい。本当に、ありがとうございます……!」
ぼくは、友菜さんに深く頭を下げた。
友菜さんに連絡したらね、「とにかく会おう」ってことになってん。
「友菜さん、お元気やろか……」
とてもいいお天気で、日よけのルーフがアスファルトに濃い陰を落としてる。
友菜さんが指定してくれたカフェは、人気のお店みたい。まだお昼前なのに、ぼくの前後に何組かお客さんが待っていた。さりげなく、センター認証店を選んでくれる優しさ……友菜さんは本当にすごいです。
――すると、通りの向こうから手を振る人影が。小走りのスニーカーが、トコトコと軽快な足音を運んでくる。
「成己くん!」
「友菜さんっ、お久しぶりで――」
近づきしなに華奢な腕が開き、ぱっと抱きしめられた。友菜さん愛用の、さわやかな香水の匂いに包まれ、頬が熱くなる。
「わあっ!?」
「ごめんねえ! 会いたかったよー!」
「友菜さんっ……ぼくもですっ。ごめんなさい、ずっと連絡できなくて……!」
「何言ってんの。お互い様じゃん、そんなの! こんなに痩せちゃって」
両手に頬を挟まれ、「ふぎゅ」と声が漏れる。
キャップの下、勝気な目が潤んでいるのを見て……ぼくも、胸に熱いものがこみ上げてきた。
友菜さんこそ、ずいぶん痩せてる。きっと、色々大変に違いないのに、ぼくのことまで気にかけてくれて――
「友菜さん、ありがとうございます」
「うん。こちらこそ」
ぎゅっと握手して、ぼく達は笑い合った。
お店の中は、冷房が効いていてとても涼しい。バターと卵の甘い匂いの漂う店内の、窓際の席でくつろいだ。
「あたし、パンケーキと日替わりランチにするー」
「えと。ぼく、オムライスとパンケーキにしますっ」
スマホで注文を済ませて、お冷を用意すると、お話の準備が万端になる。
「成己くん、最近どう?」
「元気です。友菜さんは、そろそろ試験ですか?」
「ん、まあね~……」
お互いに、手探りの会話をしているのを感じ、顔を見合わせる。
――近藤さんの様子、聞きたいけど……不躾かなあ……
でも、お義母さんの言ってた通りの状況なら――友菜さんは、よほど辛い思いをしてるはずやもの。
友人として、何か力になりたい。
うんうん悩んでいると、友菜さんがおしぼりを握りしめ、身を乗り出した。
「ねえ、成己くん。……ちょっと、のっけから突っ込んだ話してもいい?」
「は、はいっ。なんでしょう?」
痛いほど真剣な様子に、どきりとして身構える。
「ごめん。友達に、聞いたんだけどさ。成己くん、城山くんと別れたって……」
「!」
殆ど聞こえないほど、小さな声で囁かれた言葉に、ぼくは目を見開く。
友菜さんが言うには――ぼくが、陽平と別れたこと……学校の方でも、公然となってるんやって。
なんでも――陽平がそう宣言したらしく。
返事に詰まるぼくに、友菜さんは忙しく両手を振った。
「ご、ごめんね! ぶしつけなこと聞いちゃって……!」
「い、いえ。大丈夫です! 本当のことで、驚いちゃって……」
「……そうなんだ。あのさ、大丈夫……なわけないよね」
友菜さんは、気づかわし気に眉を顰める。
自分の痛みのように、ぼくのことを思ってくれてるのが伝わってくる。――これほど、心配をかけていたなんて。
「あ、ぼく――」
「ねえ成己くん。……あたし、何か出来ることないかな?」
「えっ」
友菜さんの手が、ぼくの手を包んだ。
「ほら、あたしさ。小さいとは言え社長令嬢だし。何か、力になれるかもしれないから」
「……友菜さん」
あまりに暖かい眼差しに、息を飲む。
今日、このために来てくれたのが、ハッキリわかったから。
――近藤さんのこと、すごく心配なはずやのに。友菜さんは、どうしてこんなに優しいんやろう……
ぶわ、と熱が上った瞼を、手のひらで押さえた。
自分のことばっかりやった自分が、情けない。
……ぼくも、もっと強くならなくちゃ。
「ごめんなさい。本当に、ありがとうございます……!」
ぼくは、友菜さんに深く頭を下げた。
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