いつでも僕の帰る場所

高穂もか

文字の大きさ
133 / 505
第三章~お披露目~

百三十二話【SIDE:陽平】

「陽平っ、待てってっ……!」

 廊下に臥す晶の体を、後ろから責め立てた。晶は呻きながら、長い腕を床に彷徨わせる。
 俺はセンターから家に帰ってすぐ、廊下に晶を突き倒し、行為に及んでいた。

「ああ、陽平っ……激しすぎっ……あんっ!」
「……晶、晶っ!」

 逃げようとする体を引き戻すと、繋がりが一層深くなる。ぱん、と乾いた音が鳴り、晶が淫らな声を上げた。
 俺は荒い息を吐きながら、衝動のままに晶を求める。

――『あの子は、もともと俺のものだ……』

 忌々しい声が、理性を灼き尽くす。あの野郎、よくも俺を虚仮にしやがって……!

「ほら、ここか? もっと欲しいんだろ?」
「あっ!……ああん……そこぉ……!」

 荒々しく揺さぶってやるうちに、晶も奔放に乱れていく。甘い声で叫び、靭やかな腰も、俺に調子をあわせ始めている。

「あうっ……そこ、もっと擦って……あっ、あっ、気持ちいいっ……!」

 俺は息を荒らげ、一心不乱だった。憤怒と興奮で頭がチカチカし、視界が狭くなる。

――ふざけやがって……成己が、お前なんぞに抱かれるわけあるか……!

「……くっ!」
「ああ……っ!」

 思い切り深くで吐き出すと、晶の腰が震えた。――かつて、成己が磨いた廊下に、ぱたぱたと白濁が伝い落ちる。

「はぁ……」

 晶も達したようで、惚けたまま床に片頬をつけ、俺に体を捧げていた。

――どうだ、野江……こんなことが、お前にできるか?

 オメガを恍惚とさせた達成感に、気分が高揚する。
 お前は、成己にこんなこと、出来ねえだろう? 三流アルファが、調子に乗りやがって……!
 俺は、晶の脚を掴み、体をひっくり返した。

「陽平……っ」
「まだ……満足してねえだろ?」
「あ、んんっ……」

 履いたままだった靴を脱がし、放り投げる。足に絡んだパンツを下着ごと剥ぎ取ると、晶はもどかしそうに腰を揺らしていた。

「……陽平、はやくしろよっ……」

 欲情しきった顔で、晶が懇願する。俺は深い愉悦を感じ、喉の奥で笑った。

「仕方ねえなあ」
「あん……っ!」

 長い脚を折り畳み、上に乗り上げる。苦しい姿勢なのに、晶の表情には歓喜しかない。

「ああっ、もっと……!」

 懸命にアルファを求める、オメガ――その様子に、自尊心が満たされる。

――俺は、失ってなんかねえ! 捨てただけだ。

 あの野郎は、俺の捨てたもんも拾えねえ、能無しの間抜けだ。
 俺は怒りのまま、白い体を貪った。




 暴れ狂っていた感情が落ち着いていき……俺は、漸く腰を引いた。――繫がりが解け、白濁が溢れ出す。

「はぁん……っ」

 甘い吐息を漏らし、晶は太腿を跳ね上げた。涙や汗と涎で、上気した顔はどろどろになっている。
 ……流石に、やり過ぎた。冷静になって、濡れた頬を撫でた。

「晶、大丈夫か……?」
「んっ……馬鹿……講義、サボらせやがって……」

 息を弾ませながら、晶が睨んでくる。
 俺は、少しバツが悪くなった。健診が終わった晶を引き連れて帰り、さんざん勝手をした自覚はある。

「悪い……」
「……まあ、いいよ。……お前には世話になってるし……別に、それくらい相手しろって事だろ?」
「……っ」

 暗い顔で目を背ける晶に、罪悪感で胸が痛んだ。

――何やってんだ、俺は……晶の体で、気晴らししたみたいじゃねえか……

 慌てて、痩身を抱きしめる。

「悪い。一方的だった」
「……」
「悪かった」
「……はぁ、もういい」

 暗い声で謝ると、晶がため息をつく。しなやかな腕を伸ばし、俺を抱いた。

「で……なんで荒れてんだよ?」
「……! いや」

 首をふると、晶は半眼で言う。

「あのな。苛々して、セックスするとか最悪だから。俺に悪いと思うなら、話せって」
「……」

 躊躇する俺に、晶は何か察したらしい。

「ああ……成己くんのこと?」
「……違っ……野江のことだ!」

 悲しげに伏せられた目に、焦って口走った。

「野江って、店長さんか? どういうことだよ」
「……」

 怪訝そうに眉を潜めた晶に、問い詰められ――俺は、野江の不遜な態度を話させられちまった。


「……なるほど。『俺のもの』ね」
「別に、どうでもいいけどな。野江の覇気のなさは、社交界でも有名だろ」

 野江家の次男は、親兄弟の脛をかじり、まともな仕事をしない道楽息子――それがあいつの評価だ。
 オメガを手に入れられる境遇にないから、人の婚約者に付き纏うのだろう。

「どうだろうな……結婚にこだわってないのかも。恋人が、センターに行かずに済むなら、御の字って」
「……は? 恋人って」

 ぎょっとして振り返ると、晶は冷たい顔をしていた。

「成己くんと、あの人……すごく距離が近かったし。成己くんの体って、開花してないんだろ?」
「そうだけど。それが何だ?」

 なぜか焦燥に駆られ、問い詰める。晶は声を潜めて、答えを口にした。

「――あの二人、ただの幼馴染じゃないのかもしれねぇ。オメガの体って、特定のアルファがいるときに、他のアルファと抱き合うと……ホルモンバランスが乱れやすくなるって言うし」
「!」
「成己くん……ずっと、あの人と。だから、お前で開花出来なかった、とか……信じたくねえけど……」

 晶の囁き声が耳に刺さり、俺は呼吸が早くなるのを感じてきた。

 ――『あの子は、もともと俺のものだからな……』

 二人の寄添う姿を思い出し、吐き気がこみ上げる。
 すると、晶が俺の手を握った。

「なぁんて、冗談だよ。成己くんに限って、そんなことしないって」

 重い空気を払拭しようとするように、明るく笑っている。――しかし、俺はもう逆上仕切っていた。

「陽平……?」
「……っ!」

 気遣わしげに肩に置かれた手を掴み、床に押し倒す。脚を開かせ、腰を強く押し付けた。――ぬかるんだ其処は、やすやすと俺を受け容れる。

「あぁ……んっ!」
「くっ……」

――ふざけるな……! 成己は、成己は……!

 反省も忘れ、腰を押し付けていると――四肢が俺に巻き付いてくる。淫らな水音を立て、晶は自ら俺を飲み込んだ。

「ぁふ……っ、遠慮すんなって」
「晶……っ」
「忘れさせてやるから……ほらっ」

 芳醇なフェロモンが、晶から溢れ出す。
 きゅ、と妖しく締め付けられ――俺は、再び我を忘れる。

「晶、晶……!」
「ああ、きもちいいっ……陽平っ」

 俺は、晶と激しく貪り合う。
 何度も解き放ち、何もかも忘れ、泥のように眠るまで――

感想 280

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる── 侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。 だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。 アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。 そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。 「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」 これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。 ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。 4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

愛され方を教えて

あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。 次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。 そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。