いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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第三章~お披露目~

百三十八話

「いやー、いい式だったなー!」
 
 お式の後――にこにこ笑顔の綾人が、ぼくの肩を抱く。麦色の髪の毛に、赤い花びらがくっついていた。
 ぼくは笑いながら、つまんで取ってあげる。
 
「ほら、写真とった! 結構良くね?」
「わあ……すごいっ!」
 
 綾人が、スマホに撮った写真を、見せてくれた。
 すいすいと指で画面を撫でるごとに、嬉しかったお式の場面が、逆再生される。記念の集合写真に、フラワーシャワー。お式に参加してくれた皆さんの笑顔に、じんと胸が熱くなった。
 
 ――ぼく、ほんまに結婚したんや。こんな風に、祝ってもらえるなんて……
 
 って、ぼく泣きすぎ! 嬉しい日なんやから、ちゃんとせな。
 慌てて鼻をすんと啜り、綾人ににっこり笑う。
 
「ほんまに嬉しい。この写真、送って貰ってええ?」
「もち! スマホ出して」
 
 二人でわいわいしていると、「おーい」と声をかけられる。
 
「なんだ、賑やかだな?」
「わあっ、宏兄」
「こら、綾人。新婦にベタベタするな」

 いつの間に近くに来てたんやろう。ぼくは宏兄の、綾人はお兄さんの手によって、肩を引き寄せられてしもた。

「うるせー朝匡。いいだろ、オレと成己はマブダチなの!」
 
 綾人がべっと舌を出し、ぼくにぐいと身を寄せる。
 頬を引くつかせるお兄さんの肩を叩き、宏兄が笑った。
 
「まあ、今日くらい良いだろ。――二人とも、祝いに来てくれてありがとうな」
「あっ。ありがとうございますっ。本当に嬉しいです」
 
 宏兄の隣で、ぼくもぺこりとする。
 
「新しい家族が増えるんだ。当然だろう」
「そうそう。むしろ、呼んでもらえて嬉しいっす!」
 
 綾人とお兄さんは揃って、快活な笑みを浮かべて頷いてくれた。
 ふたりって、こういう所がそっくりやんね。嬉しくてニコニコしていると、お兄さんがくるりとこっちを振り返る。
 
「親父とお袋が「おめでとう」ってさ。今日は仕事の都合で来られなかったが、また君に会いたいそうだ」
「え……!」
「話を進めて、構わないだろうか?」
 
 ぼくは思わず、ぴゃっと背筋を伸ばした。
 って言うのも……宏兄のお父さんとお母さんには、まだきちんとお会いしてへんの。急な結婚やったし、「どうしても仕事がご多忙」やという事で、お電話でご挨拶したっきりやねん。
 
 ――藪から棒に息子さんと結婚なんて、無礼なやつやと思われたくない……ここで、きちんとご挨拶や!
 
 急にどぎまぎする胸を押さえつつ、頷いた。
 
「ぼくは、ぜひ。お会いできたら嬉しいですっ」
「良かった。――じゃあ、宏章。月末の予定、空けとけよ。また細かいことが決まったら、連絡する」
「ああ、よろしく頼む」
 
 宏兄たちが、あれこれと取り決めているの傍ら、闘志を燃やしていると――綾人が、ひょいと顔を覗き込んでくる。
 
「どした、成己。鼻息荒いぞ」
「き、気合入れてるん。ご挨拶やからっ」
「真面目だなあ。何とかなるなる!」
 
 ふんすと息を吐くと、綾人がニカッと笑う。カラッとした笑顔を見ていると、ほんまに大丈夫な気がしてくるから不思議や。
 
 ――そや。気合ばっか、空まわっても仕方ない。宏兄と綾人に、色々お話聞いて対策練ろう!
 
 と、考えたところで、「成ちゃーん」と涼子先生に呼ばれた。
 ぱたぱたと、軽快な足取りで近づいてきた先生は、満面に笑みを浮かべてる。
 
「涼子先生!」
「成ちゃん、宏章くん。野江さんたちも、こちらいらして下さい。準備、出来ましたさかい」
「じゅんび?」
 
 きょとんとして、宏兄と顔を見合わせる。
 
「ありがとうございます! よし、行くぞお前たち」
 
 お兄さんと綾人が、訳知り顔で歩き出すのに、宏兄と二人で着いていく。
 
「どうしたんかな?」
「なんだろうな?」
 
 戸惑いつつ、導かれるまま歩いていると、センターの宴会ルームへたどり着いた。
 観音開きの扉が、先生たちによって開かれて――ぼくは「あっ」と目を見開いた。
 
「おめでとう~!」
 
 わあっと歓声が、はじける。
 広いお部屋の中は、きれいに飾り付けられてたん。お式に参列してくれた皆さんが、笑顔で拍手をしてくれていて……懐かしいお料理や、大きなケーキが真っ白いテーブルに並んでる。
 
「これは……」
 
 言葉も出えへんぼくの隣で、宏兄も驚いてる。
 すると、涼子先生がにっこりと笑った。
 
「これは、うちらから二人へのサプライズ! たくさん食べて、楽しんでなっ」
「先生……!」
 
 綾人やお兄さんもかんでいたみたいで、ぼくらを引き留める役やったって……
 温かな笑顔に囲まれて、ぼくは涙が込み上げてきた。
 
 ――嬉しい……どんなお礼も足りひんくらい……
 
「うう~……!」
「成……みなさん、本当にありがとうございます!」
 
 ぼくを抱き留めて、宏兄が言う。
 ――こんなに幸せでええのかな。ぼくも、わんわん泣きながら、何度もお礼を言った。
 
 
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