いつでも僕の帰る場所

高穂もか

文字の大きさ
147 / 505
第三章~お披露目~

百四十六話

 ともかく、家に上がってもらった綾人と、ぼく達はリビングで向かい合っていた。 
 
「――お誕生日会?!」
 
 ぼくは、びっくりして身を乗り出す。綾人は、「おう!」と明るく頷いた。
 
「今月の二十七日さ、お義母さんの誕生日なんだ。で、ホテルで誕生日会やるから、お前と宏章さんに来てほしいんだって!」
「ええっ」
 
 思わず、両手で口を覆った。そうやないと、「ひゃー」って叫んじゃいそうやったから。
 だって――月末にお義母さんのお誕生日で、ホテルで誕生日会で……そして、ご両親と顔合わせ……!? 情報過多すぎるよっ。
 キャパシティオーバーしそうになってたら、隣に腰かけた宏兄が言う。
 
「綾人君。それは、招待客にお披露目もするってことかな?」
「あ、はい。朝匡がそう言ってました」
「お……おひろめ……」
 
 けろりと返ってきた答えに、絶句する。
 ホテルでする規模の誕生会で、野江家のお客さんたちに向けて……お披露目!? それってどういう風なんやろう。何か一芸、習得していったほうがええのかな……

「あわ……」

 おろおろしていたら、宏兄に手を包まれる。
 
「成、大丈夫だ」
「えっ……」
「無理しなくてもいい。顔合わせなんて、いつでも出来るんだし。な」
 
 宏兄を見上げて、はっとした。――あたたかな、優しい眼差しが降り注いでいて……じんわりと心が落ちついてくる。
 ご家族の誕生日っていう大切な行事やのに。ぼくのことばっかり、気遣ってくれてるのが伝わって来るんやもん。
 
 ――……ぼく、宏兄の優しさに応えたい。
 
 ぼくはきりっと気合を込めて、手を握りかえす。
 
「ううん、大丈夫! ぼくも、お会いしたいからっ」
「そうか?」
「うんっ。パーティって初めてやし、楽しみです」
 
 にっこりすると、宏兄は日なたにいるように、目を細めて笑ってくれた。
 
「成己、一緒にうまいもん制覇しような!」
「わあっ。やっぱり、ごちそうが出るん?」
「おう! すげーのなんの。いっつも、うまいもん食ってるうちに、パーティ終わってるぜ」
「あはは。綾人ってば」
 
 白い歯をみせて笑う綾人に、ふき出してしまう。ぼくの気を軽くしようと、楽しいことばっかり言うんやから。
 宏兄と綾人のおかげで、はらが座ったぼくは、今後のための気合を入れる。
 
「そうと決まれば――ぼく、よかったら、お誕生会のお手伝いに行きたいな。たくさん人が来るなら、きっと準備とかいろいろあるよね? ぼく、体力はけっこう自信あるからっ」
 
 ふんすと拳を握る。宏兄は一瞬目を丸くして、相好を崩した。
 
「ありがとうな。でも、準備は母さんに任せて大丈夫だよ。家族も込みで、人をもてなすのが好きな人なんだ。成をもてなしたくて、うずうずしてると思う」
「そ、そう?」
「ああ。成が楽しんでくれれば、一番だよ」
 
 大きな手に、頭を撫でられる。「いいのかな?」と思ったけど、息子さんの宏兄のアドバイスやし。
 ここはひとつ、素直にお言葉に甘えよう。
 
「じゃあ、楽しみに待ってます!」
「うん。伝えとくよ」
 
 びしっと敬礼すると、宏兄が破顔した。
 

 
 それからね。
 宏兄はお仕事の電話がかかってきて、席を外してて。
 綾人と、お土産の冷やしおでんを頂きながら、これまでのパーティについて教えてもらったんよ。
 
「――オレ、制服で行くって言ったらさ。「俺が犯罪者みたいだからスーツ着ろ」って朝匡が」
「あはは、お兄さん真面目なんやね。やっぱり、パーティってスーツなん?」
「そうだなあ……あーでも、お義母さんはいつも着物だし、ドレスとかの人もいるしなー……ごめん、ちょっとわかんね。いっぺん、宏章さんに聞いてみ?」
「そっか……わかった! ありがとうね」
 
 男性体のオメガは、ドレスコードがはっきり決まってへんけど、TPOは大事やもんね。
 肝に銘じていると、満面の笑みを浮かべた綾人が、ずいと身を乗り出した。
 
「でさ、成己。こっから本題なんだけど、誕生日プレゼントさ――」
「あっ!」
 
 ぼくは、はっと目を見開く。
 
 ――そうや、誕生日プレゼント……!
 
 嫁として、新たに知り合うものとして……大切なミッションやないの!
 大切なことを思い出させてくれた綾人に、感謝の気持ちが溢れ出す。はっしと両手を握りしめた。
 
「ありがとう、大事なこと言うてくれて……! お義母さんに、素敵なプレゼント贈らなやんね!」
「へえっ? お義母さんもだけどさ、あの――」
「よおし! 綾人、色々教えてねっ。お義母さんの好みとか、あと、何贈るかとか……!」
「お、おう……?」
 
 じっと熱を込めて見つめると、綾人の顔がどんどん赤くなる。きっと、ぼくの熱が伝わって、心が燃えてるに違いない。
 
「そうと決まれば、作戦会議!」
 
 ぼくは、アイスコーヒーのおかわりを入れるべく、キッチンにダッシュした。
 
 
感想 280

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる── 侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。 だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。 アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。 そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。 「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」 これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。 ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。 4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

愛され方を教えて

あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。 次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。 そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。