いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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第四章~新たな門出~

百八十八話

 ベッドが軋む音が聞こえる。それから、熱い吐息が二つ……体が弾むのに合わせて、寝室に鳴り響く。
 
「宏ちゃん、宏ちゃん……」
 
 甘い熱に浮かされて、ぼくは必死に名前を呼んだ。ぼくの上に、覆いかぶさっている宏ちゃんに抱きつきながら。
 
「苦しいか……?」
 
 びっしょり濡れた目尻に口づけて、宏ちゃんが言う。――その拍子に、奥に含まされた指をきゅう、と握りしめてしまう。
 腰の骨が燃えるみたいで、ぼくは激しくしゃくりあげた。
 
「だめぇ……」
「……成。大丈夫だ。ゆっくり息をして……」

 頬や首……肩にまで、キスが降る。泣く子猫を宥めるような、優しいキス。
 炙られるような快楽を、宥めてくれる。

「……ぅ……宏ちゃん」
「怖くないから……」

 のけ反って、無防備になった胸に唇が触れた。どきどきと鼓動する心臓の上に、大きな手のひらが這って。
 宏ちゃんは楽しそうに、胸の突起の周りを、指でくるくるなぞった。

「ここ、可愛いなぁ。すごく尖って、震えてる……」
「あぅ……!」

 やせっぽちの胸の上の、二つの突起。――普段は淡い色なのに、今は赤みを増して、つんと上を向いている。

――ウソ……ぼく、いつもこんなやったん……?
 
 今日は明るい部屋やから、自分の変化に気づいてしまう。 
 宏ちゃんは、胸に顔を伏せた。尖り切ったところを、優しく挟むように愛撫されて……

「あ……あぁっ……」

 甘い痺れが体いっぱいに広がっちゃう。
 もう一つも、指でこよりを作るように揉まれて、はしたない声が、止まらない。

――恥ずかしい……!

 唇を噛んで堪えると、「駄目だ」って、キスされる。

「いい声、もっと聞かせて」
「……宏ちゃん……っ」

 甘い声で囁かれて、自制心が揺らいでしまう。もっと甘えていいよ、って……宏ちゃんはいつも、ぼくを甘やかすから。

「あ……んんっ……」
「そう……ああ、すごく可愛い……」

 噛んでいた唇を解くと、宏ちゃんは蕩けるような目でぼくを見つめてくれた。
 そうなると、されるがまま……宏ちゃんの愛撫に身を任せ、息を弾ませた。

「……あっ!」
  
 ――不意に、お尻の奥に含まされた指が、くねくねと動きだして、驚く。
 胸への愛撫で、とろとろに泥濘んだそこを、そっと揉まれる。なにか溢れ出しそうで……じたばたと腰をくねらせた。

「やああ……そこはだめ……」
「すごいな、成……もういけそう?……」
 
 ――だめ、だめ……溶けちゃう……!
 
 逞しい肩にしがみつくと、宏ちゃんは深く口づけてくれた。……舌が溶けるように熱い。ぐじゅぐじゅって、潤んだ音がして、おなかの奥が甘く波立っている。
 
「ひろちゃん……」
 
 カーテン越しの光が、宏ちゃんの肩で波紋みたいにゆらゆらする。浅黒い肌から伝う汗が、ぼくの肌で混ざっていた。

「……あっ、やあ……」

 ふわりと、湿気を伴った芳しい木々の香りが、鼻先を掠めた。朝露を含んだ木々のような、甘く深い香りを、胸いっぱいに吸い込むと、うっとりしてしまう。――蕩けたおなかの奥が、宏ちゃんの指を締め付けた。ぎゅう、ぎゅう、と断続的な動き。
 ぼくはすぐに、高みへと追いやられてしまう。
 
「あっ……だめ、だめっ……!」
「いいよ、いって……可愛いとこ、見せて」

 熱い声で囁いた宏ちゃんに、しっかりと抱きしめられる。どうもがいても、この気持ち良さから、逃がさないって――残酷なまでの優しさに、ぼくは泣いた。

「宏ちゃんっ……!」

 それが訪れた瞬間、宏ちゃんの腕に、思い切りしがみつく。――頭が真っ白になって、どこかへ投げ出されるみたい。
 宏ちゃんは、ぼくをきつく抱きしめて、熱い息を吐く。

「成………綺麗だ」

 溶けてしまったような腰の奥を、指が優しく愛撫してくれる。泥濘みを探るような、水音が響いた。
 ……気持ちよくて、甘えた声が止まらない。

「あ……あ……」
「好きだよ、成……」
「……っ」

 甘く鼓膜が震わされ、肩が震える。音楽の後奏を奏でるような指に、ぼくは身を任せた。

「……んっ」

 やがて、宏ちゃんは指を抜いた。太くて長い指を含んでいたそこが、自由になる。……物足りないような、寂しい感覚に、頬が赤らんだ。

「ふふ……すごく可愛いかった」

 宏ちゃんは嬉しそうに、ぼくの頬を撫でた。優しく口づけられて、うっとりと目を閉じる。
 抱きしめ合いながら、キスしていると……大きな手のひらが、背を擦ってくれた。

――宏ちゃんの手、優しい……

 ころん、と横向きに転がって、見つめ合った。

「宏ちゃん、好き」
「うん。俺も好きだぞ」

 キスを繰り返しながら、ぼくはそろそろと、下に手を伸ばした。そこに触れると……宏ちゃんは、少し息を詰めた。
 ……燃えているみたいに熱くて、昂ってる。ドキドキしながら、頭のところを撫でていたら、ぱしりと手を取られた。

「……こら、成。悪戯っ子だな」

 宏ちゃんは、ぼくを窘める。――低くて、なにか押し殺したような、セクシーな声。
 ぞく、と背筋に震えが走った。

「だって、宏ちゃん……すごいんやもん」
「そりゃ、お前に触れてればさ……」

 照れたように言われ、きゅんとする。

「…………いれないの?」

 勇気を持って、口にした。宏ちゃんは目を丸くして、ほほ笑んだ。

「いれないよ。まだ」
「えーっ……」

 宏ちゃんとこういう事をするたび、尋ねるけど……答えはいつも同じ。
 指が三本入るまで、だめだって。たしかに、まだ一本だけだけど……ずい分馴染んだのに。

「もう少し、慣れてから……痛くしたくないからな」
「ぼく、平気やでっ。もう、すごく気持ちいいもん……」
「……ありがとな。でも、まだだめ」
「む……」

 ぼくは頬をふくらませて、じっと睨む。宏ちゃんは笑って、頭を撫でてくれた。
 ……そんな風に優しくされると、たまらない。

「宏ちゃん、ありがとう。ぼく、頑張るねっ……」

 ぎゅ、と首にしがみつく。すると、宏ちゃんは抱きしめてくれる。

「おう、ありがとな。楽しみにしてる」
「えへへ」
「だから、いまは……いつも通りで」
「……あっ!」

 腰を引き寄せられた。片脚を軽く持ち上げられて、その間に熱いものが挟まれる。

「……っ」

 敏感なところに、宏ちゃんの熱を感じて……ぱあ、と全身が熱くなった。
 そのまま、ゆっくりと揺らされる。いずれ、宏ちゃんを受け入れる場所……全部を刺激されて、喘いだ。

「もう少し、付き合ってくれな」
「……うんっ」

 悪戯っぽく笑った宏ちゃんが、ぼくの腰を抱え、動き出した。
 甘い時間は、まだまだ続きそうで……ぼくは、ぎゅっと大きな体にしがみついた。
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