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第五章~花の行方~
二百五十五話【SIDE:陽平】
「どういう事とは?」
「覚えておいでですか。――晶さんとの同居が決まったとき、私は彼の護衛について、お義父さんにご相談しました。晶さんの身体的な事情を鑑みて、当家のSPを二人つけるつもりだと」
蓑崎さんは、じろりと椹木をねめつける。椹木は切羽詰まった様子で、言い募る。
「ですが、貴方は……「護衛は蓑崎家の者をつけるから、必要ない。婚家の者に四六時中見張られているのでは、息子も気詰まりだ」と仰ったんです。それもご最もだと思って、護衛に関しては蓑崎家にお願いすることに、なったはずです」
「……えっ」
完全に初耳の話で、知らず声を漏らしていた。父さんにじろりと睨まれたが、それどころじゃない。
だって、晶に護衛をつけるだって?
椹木がそんな風に、気を回していたなんて知らなかった。それでは……「自分が守る」と息巻いていたことが、全くの道化だったってことになるじゃないか!
――晶の奴……! なにが、「婚約者は俺のことなんて、どうでもいいって思ってる」だよ! きっちり気遣われてんじゃねーか!
屈辱で顔に血が上る。
俺は、ソファからガバリと立ち上がった。
「ありえない。晶は、いつでも一人だった! 大学でも、プライベートでも……! 守るのに、どれだけ大変だったか……」
怒りで口走ってしまったが、父さんは咎めなかった。そのことに勇気を得て、椹木に向き直る。
「晶の周りには、いつも護衛の一人もいませんでしたよ。あなたがどうでも良いと思っているからだ、と……本人も言っていたんです!」
「晶くんがそんな風に……まさか、護衛をつけていないとは、思いもしませんでした。ですから、陽平さんと晶さんとの関係も、蓑崎さんも城山さんもご承知のことだったのだと……」
「そんな……」
俺は、愕然とした。
「なんで、晶に言っておいてくれなかったんだよ! あんたが晶を放って置くから! だから……!」
そうだ。
あいつが、「婚約者は俺に興味がないから」って一人で行動して、危険な目に遭うから。
だから、俺が守ってやらなくちゃって思う羽目になったんだ。
蓑崎さんが、椹木の護衛を拒んでいなければ。いや……せめて、椹木が晶に心配していることをちゃんと伝えていれば。
俺が、晶に騙されることもなかった!!!
――『陽平。蓑崎さんは、婚約者さんと話し合ったほうがええと思う……』
成己の悲しそうな声が甦る。
結局、全部あいつの言う通りだった。晶と椹木の、意思疎通の不足のせいで……全部が台無しになったんだ。
――許せねえ……!
復讐心に駆られ、俺は椹木に一歩を踏み出した。
「待て、陽平」
「……!」
……が、父さんに強く肩を掴まれちまう。反射的に睨みつけると、父さんは首を振った。
「今日は、ここに話し合いに来たはずだ。椹木さんを殴るためじゃない」
「っ……!」
怒りもあらわに言われたなら、まだ反抗できたのに。怒りに水を差され、悔しくてたまらなかった。
拳をにぎりしめていると、
「蓑崎。どういう事なんだ? なぜ、晶君に護衛をつけなかった。そうしていれば、今回のことはそもそも無かったんじゃないのか」
父さんは、蓑崎さんを向き直った。
厳しい声音に、ハッとする。
――そう言えば、晶の親父はどうして、晶に護衛をつけなかったんだ?
椹木のことばかりに気を取られたが、この人も不可解だ。晶のことを心配してないわけでは、無さそうなのに……
当人以外の視線が集中する中、蓑崎さんはフンと鼻を鳴らした。
「目に見える護衛ばかりが、セキュリティでは無い。俺は晶の安全を計らっていた」
「何を……」
「アナログな暴力に頼ることばかり考えるお前らには、わからない。晶は、後継者としても育てられた子だ。ただのオメガのように振る舞うのは、屈辱でしかない」
「覚えておいでですか。――晶さんとの同居が決まったとき、私は彼の護衛について、お義父さんにご相談しました。晶さんの身体的な事情を鑑みて、当家のSPを二人つけるつもりだと」
蓑崎さんは、じろりと椹木をねめつける。椹木は切羽詰まった様子で、言い募る。
「ですが、貴方は……「護衛は蓑崎家の者をつけるから、必要ない。婚家の者に四六時中見張られているのでは、息子も気詰まりだ」と仰ったんです。それもご最もだと思って、護衛に関しては蓑崎家にお願いすることに、なったはずです」
「……えっ」
完全に初耳の話で、知らず声を漏らしていた。父さんにじろりと睨まれたが、それどころじゃない。
だって、晶に護衛をつけるだって?
椹木がそんな風に、気を回していたなんて知らなかった。それでは……「自分が守る」と息巻いていたことが、全くの道化だったってことになるじゃないか!
――晶の奴……! なにが、「婚約者は俺のことなんて、どうでもいいって思ってる」だよ! きっちり気遣われてんじゃねーか!
屈辱で顔に血が上る。
俺は、ソファからガバリと立ち上がった。
「ありえない。晶は、いつでも一人だった! 大学でも、プライベートでも……! 守るのに、どれだけ大変だったか……」
怒りで口走ってしまったが、父さんは咎めなかった。そのことに勇気を得て、椹木に向き直る。
「晶の周りには、いつも護衛の一人もいませんでしたよ。あなたがどうでも良いと思っているからだ、と……本人も言っていたんです!」
「晶くんがそんな風に……まさか、護衛をつけていないとは、思いもしませんでした。ですから、陽平さんと晶さんとの関係も、蓑崎さんも城山さんもご承知のことだったのだと……」
「そんな……」
俺は、愕然とした。
「なんで、晶に言っておいてくれなかったんだよ! あんたが晶を放って置くから! だから……!」
そうだ。
あいつが、「婚約者は俺に興味がないから」って一人で行動して、危険な目に遭うから。
だから、俺が守ってやらなくちゃって思う羽目になったんだ。
蓑崎さんが、椹木の護衛を拒んでいなければ。いや……せめて、椹木が晶に心配していることをちゃんと伝えていれば。
俺が、晶に騙されることもなかった!!!
――『陽平。蓑崎さんは、婚約者さんと話し合ったほうがええと思う……』
成己の悲しそうな声が甦る。
結局、全部あいつの言う通りだった。晶と椹木の、意思疎通の不足のせいで……全部が台無しになったんだ。
――許せねえ……!
復讐心に駆られ、俺は椹木に一歩を踏み出した。
「待て、陽平」
「……!」
……が、父さんに強く肩を掴まれちまう。反射的に睨みつけると、父さんは首を振った。
「今日は、ここに話し合いに来たはずだ。椹木さんを殴るためじゃない」
「っ……!」
怒りもあらわに言われたなら、まだ反抗できたのに。怒りに水を差され、悔しくてたまらなかった。
拳をにぎりしめていると、
「蓑崎。どういう事なんだ? なぜ、晶君に護衛をつけなかった。そうしていれば、今回のことはそもそも無かったんじゃないのか」
父さんは、蓑崎さんを向き直った。
厳しい声音に、ハッとする。
――そう言えば、晶の親父はどうして、晶に護衛をつけなかったんだ?
椹木のことばかりに気を取られたが、この人も不可解だ。晶のことを心配してないわけでは、無さそうなのに……
当人以外の視線が集中する中、蓑崎さんはフンと鼻を鳴らした。
「目に見える護衛ばかりが、セキュリティでは無い。俺は晶の安全を計らっていた」
「何を……」
「アナログな暴力に頼ることばかり考えるお前らには、わからない。晶は、後継者としても育てられた子だ。ただのオメガのように振る舞うのは、屈辱でしかない」
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