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第五章~花の行方~
二百六十三話 (ちょっぴり加筆しました!)
お昼ごろ、ぼくと宏ちゃんはセンターに来ていた。
もろもろの検査を終えて、中谷先生に診察の結果を受けているところなん。
「――検査の結果、特に問題は無いようですね。成己くん、このところ、何かおかしいなってことは無かったかい?」
「はい。大丈夫です」
頷くと、先生は頬を緩ませる。
「なら、良かった。セカンドインパクトの心配してたけど、大丈夫そうだね」
「では先生。成はもう、安心なんですね?」
宏ちゃんが、念を押すように尋ねる。ぼくと繋ぎ合った大きな手に、包むように力がこもっていた。
「はい。もう安心して頂いて、いいでしょう。普通に生活してもらって問題ありません」
中谷先生の言葉に、ぼくと宏ちゃんは顔を見合わせて笑った。
「――ああ、良かった」
先生にお礼を言って、診察室を出た途端、宏ちゃんに抱きしめられた。
「わあ、宏ちゃんっ?」
「お前が何ともなくて、良かった。検査の結果が出るまで、ずっと気が気じゃなかったんだ」
「……あっ」
愛しむようにこめかみに口づけられて、心臓がとくんと跳ねる。
宏ちゃんの声や、腕から計り知れない安堵が伝わってきて……それが、とても愛おしかった。
大きな背中に腕を回し、しがみつく。
「宏ちゃん、ありがとう。心配かけてごめんなさい」
「謝らないでくれ。……本当に良かったなあ」
宏ちゃんはぼくをギュって抱きしめて、「良かった」って何度も言ってくれた。じんわりと胸が温かくなる。
――宏ちゃん、すごくいい匂い……
喜びを表すような、芳しい木々の香りに包まれる。
広い胸に頬を埋めていると気分がふわふわして……いつの間にか、体を預けるように抱きついていた。
逞しい腕が、しっかりと抱き留めてくれる。
「……っ」
その瞬間、もっと強く抱きしめて欲しくなって、頬が熱る。気恥ずかしいことを知られるのが、恥ずかしい。
どきどきしていると、肩をそっと掴まれた。
「成……」
「宏ちゃん……」
そっと仰向かされて、宏ちゃんを見上げる。灰色がかった瞳が、しっとりと光っていた。ぼくは、その輝きが近づいてくるのを、じっと待って……
「申し訳ない! 宏章さん、お伝え忘れたことが――あれ。どうしたんですか?」
「な、何でもありません!」
突然、診察室のドアが開いて、中谷先生が顔を出した。
ぼくと宏ちゃんは、大慌てで体を離し、真っ赤な顔で弁明した。
中谷先生が、宏ちゃんにお話しがあるというので、ぼくは先にロビーで待つことにした。
宏ちゃんは心配してたけど、センターの中やから大丈夫やって言うたんよ。それに……さっきのことで、まだ顔が変で。中谷先生の目を見られへんかったん。
『お話が終わったら、すぐに行くから』
心配性の宏ちゃんの言葉を思い出し、クスクス笑ってしまう。
エレベーターでロビーまで降りていくと、ちょうどお昼休みらしい職員さんたちと行き会った。
「先生、こんにちは」
「こんにちは、成ちゃん。健診だったの?」
「はいっ」
そこで、軽く談笑する。
皆さん、新しい区画のメンバーさんでとても忙しそう。ランチタイムやのに、たくさんの書類を抱えてはる。でも、「大変だよ」って言う顔は、誇りとやる気で輝いてはった。
「頑張ってくださいっ」
「成ちゃん、ありがとうねえ。じゃあ、またね!」
手を振ってお別れすると、ぼくは近くのソファに座った。
大きな窓から、さんさんと光が差し込む。――いいお天気で、眠くなりそう。
「……ふう」
深く息を吐いて、伸びをする。
「宏ちゃん、まだかなあ」
呟いてから、はっとする。
――って、さっき別れたばっか! 子どもとちゃうねんから……!
自分でツッコミを入れていると、エレベーターがついた音がした。
勢いよく振り返って……ぼくは「あっ」と立ち上がった。
「涼子先生!」
「成ちゃん!」
もろもろの検査を終えて、中谷先生に診察の結果を受けているところなん。
「――検査の結果、特に問題は無いようですね。成己くん、このところ、何かおかしいなってことは無かったかい?」
「はい。大丈夫です」
頷くと、先生は頬を緩ませる。
「なら、良かった。セカンドインパクトの心配してたけど、大丈夫そうだね」
「では先生。成はもう、安心なんですね?」
宏ちゃんが、念を押すように尋ねる。ぼくと繋ぎ合った大きな手に、包むように力がこもっていた。
「はい。もう安心して頂いて、いいでしょう。普通に生活してもらって問題ありません」
中谷先生の言葉に、ぼくと宏ちゃんは顔を見合わせて笑った。
「――ああ、良かった」
先生にお礼を言って、診察室を出た途端、宏ちゃんに抱きしめられた。
「わあ、宏ちゃんっ?」
「お前が何ともなくて、良かった。検査の結果が出るまで、ずっと気が気じゃなかったんだ」
「……あっ」
愛しむようにこめかみに口づけられて、心臓がとくんと跳ねる。
宏ちゃんの声や、腕から計り知れない安堵が伝わってきて……それが、とても愛おしかった。
大きな背中に腕を回し、しがみつく。
「宏ちゃん、ありがとう。心配かけてごめんなさい」
「謝らないでくれ。……本当に良かったなあ」
宏ちゃんはぼくをギュって抱きしめて、「良かった」って何度も言ってくれた。じんわりと胸が温かくなる。
――宏ちゃん、すごくいい匂い……
喜びを表すような、芳しい木々の香りに包まれる。
広い胸に頬を埋めていると気分がふわふわして……いつの間にか、体を預けるように抱きついていた。
逞しい腕が、しっかりと抱き留めてくれる。
「……っ」
その瞬間、もっと強く抱きしめて欲しくなって、頬が熱る。気恥ずかしいことを知られるのが、恥ずかしい。
どきどきしていると、肩をそっと掴まれた。
「成……」
「宏ちゃん……」
そっと仰向かされて、宏ちゃんを見上げる。灰色がかった瞳が、しっとりと光っていた。ぼくは、その輝きが近づいてくるのを、じっと待って……
「申し訳ない! 宏章さん、お伝え忘れたことが――あれ。どうしたんですか?」
「な、何でもありません!」
突然、診察室のドアが開いて、中谷先生が顔を出した。
ぼくと宏ちゃんは、大慌てで体を離し、真っ赤な顔で弁明した。
中谷先生が、宏ちゃんにお話しがあるというので、ぼくは先にロビーで待つことにした。
宏ちゃんは心配してたけど、センターの中やから大丈夫やって言うたんよ。それに……さっきのことで、まだ顔が変で。中谷先生の目を見られへんかったん。
『お話が終わったら、すぐに行くから』
心配性の宏ちゃんの言葉を思い出し、クスクス笑ってしまう。
エレベーターでロビーまで降りていくと、ちょうどお昼休みらしい職員さんたちと行き会った。
「先生、こんにちは」
「こんにちは、成ちゃん。健診だったの?」
「はいっ」
そこで、軽く談笑する。
皆さん、新しい区画のメンバーさんでとても忙しそう。ランチタイムやのに、たくさんの書類を抱えてはる。でも、「大変だよ」って言う顔は、誇りとやる気で輝いてはった。
「頑張ってくださいっ」
「成ちゃん、ありがとうねえ。じゃあ、またね!」
手を振ってお別れすると、ぼくは近くのソファに座った。
大きな窓から、さんさんと光が差し込む。――いいお天気で、眠くなりそう。
「……ふう」
深く息を吐いて、伸びをする。
「宏ちゃん、まだかなあ」
呟いてから、はっとする。
――って、さっき別れたばっか! 子どもとちゃうねんから……!
自分でツッコミを入れていると、エレベーターがついた音がした。
勢いよく振り返って……ぼくは「あっ」と立ち上がった。
「涼子先生!」
「成ちゃん!」
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