いつでも僕の帰る場所

高穂もか

文字の大きさ
281 / 505
第五章~花の行方~

二百八十話(加筆しました(*^^*))!

 翌日――ぼくは折り紙で、小さな紙袋をつくっていた。
 
「~♪」
 
 友菜さんのパイナップルケーキが、あんまり美味しかったから。この美味しさは、ぼくだけが消費するんやなくて、ひとと分かち合いたいって思ったん。
 
「やっぱり、綾人はオレンジとイエローやなぁ」
 
 明るい色にぴったりの笑顔を思い出し、自然と笑みがこぼれる。
 渡したい相手と言ったら、やっぱり綾人が浮かんだん。甘酸っぱいケーキは、綾人も絶対好きな味やと思ったし。
 それに――お兄さんと謝りに来てくれてから、ずっと会えてなかったから。
 
 

 
『朝匡と仲直りしたから、バイト辞めようと思って。成己、いろいろありがとうな!』
 
 そんなメッセージが届いたのは、あれからすぐのことやった。
 まさに青天の霹靂で、スマホに向かって「ええっ」って叫んでしまったっけ。
 
『綾人! えと……仲直りおめでとうやけど、やめちゃうの!?』
『いやー、誕プレも買えたしさ? ここらでいっちょ、マジで受験に専念しようかなって思って!』
 
 びっくりして電話をかければ、電波の向こうの綾人はハイテンションに応えた。てっきり、これからも一緒に働けると思ってたから、少ししょげてしまった。
 
『そ、そっかあ。さびしいけど、受験は仕方ないね……』 
『……ごめんな! それと、なんつうか……しばらく、あんま遊んだりもできんかも』
『えっ』
『忙しくなるし! で、空いた時間……朝匡と一緒にいてやろうかなって』
『……あっ、そっか。そうやね、仲直りしたばっかやもん』
 
 申し訳なさそうな綾人に、我に返った。
 せっかく仲直り出来て、嬉しい時なのに気遣わせてしまうなんて、ぼくは馬鹿だ。――慌てて、再度お祝いの気持ちを伝えた。
 
『おめでとう、綾人。お兄さんと仲直り出来て、本当に良かったね』
 
 つい「寂しい」が先行してしまったけれど、二人が上手く行ったのは、心から嬉しかった。ここで過ごしていたころ、綾人は笑っていても、ふとした瞬間に寂しそうにしていたから。
 
 ――もう、寂しくないね。良かったね、綾人……
 
 感激して、目尻を拭う。
 
『ありがとう、成己』
 
 頷いた綾人の声も、ちょっと滲んでいる気がした。
 
 
 
 それから、「また連絡する」って綾人とバイバイしたんやけどね。
 なかなか都合が合わなくて、ちっとも話せていないままなんよ。
 
「メッセージを送っても、あんまり返事返ってこおへんし……よっぽど忙しいんやろうけど、無理してないかな?」
 
 流石に、ちょっと心配になったりする。 
 綾人のことやから、すごく頑張ってるに違いないし。それに、お兄さんとはどうなのか……毎日のように届いていたノロケが聞けないも、寂しいというか。
 
「会えたときに、いろいろ話せると良いなぁ」
 
 折り紙を折りながら、ふふと笑みがこぼれる。
 出来上がった紙袋に、パイナップルケーキをひとつ入れて、フラップで封をした。目の高さに掲げて、にっこりする。
 
「やった。可愛く出来たっ」
 
 明るいオレンジ色に、日差しが反射して眩しい。
 これを持って、教えてもらった綾人とお兄さんのお宅に、会いに行くつもりだ。忙しくて会えないのに、おすそ分けとはいかに? って感じやけれど。
 
「でも、会おうとせえへんかったら、会えへんわけやしな」
 
 ご迷惑になるかな、と思わないでもなかったん。
 でもね、綾人はいつも会いに来てくれて――ぼくはそれが、とても嬉しかったから。
 
――『綾人君に?』
 
 勿論、宏ちゃんにもね、おすそ分けに行きたいって伝えたよ。少し苦笑していたのは、おすそ分けを理由に会いたいのを、察してくれてたんやと思う。
 でも、「俺も一緒に行くよ」って、頭を撫でてくれた。
 
 ――ちょっと、顔を見るだけ。それも無理そうなら、佐藤さんにこれだけ預かってもらって、すぐお暇するから。
 
 むんと気合を入れて、フラップに書いた「受験頑張ってね」の文字を指でなぞる。
 
「……よしっ、あとお兄さんの分と、佐藤さんの分やっ」
 
 また新たに折り紙を引き出して、紙袋を作る作業を再開した。
 ――そのお兄さんが、うさぎやを訪ねてきたのは、その日の午後のことやった。
 
 
感想 280

あなたにおすすめの小説

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。 完結しました!ありがとうございました。

文句を言わない婚約者は、俺の愛する幼馴染みを許していなかった【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
幼馴染を優先しても、婚約者アウローラは何も言わない。だから、これからも幼馴染みとイチャイチャできる── 侯爵令息トリスタンは、そんな甘い幻想を信じていた。 だが婿入りした瞬間、彼の“軽んじた態度”はすべて清算される。 アウローラは冷徹に、トリスタンの傲慢と欲望を1つずつ暴き、労働と屈辱を与える。 そして最後に残ったのは、誰にも必要とされない現実だけ。 「どうして……俺は、こんなにも愚かだったんだ」 これは愛を勘違いし、身分を過信し、自分の価値を見誤った男の終焉を描くダークドラマ。 ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています。 4/1「エステルに対する殺意」の内容を一部変更しました。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *本編完結しました

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

愛され方を教えて

あちゃーた
BL
主人公リハルトは自分を愛さなかった元婚約と家族のために無惨に死んだ…はずだった。 次に目が覚めた時、リハルトは過去に戻っていた。 そこは過去のはずなのにどこかおかしくて…

世継ぎは他の妃が産めばいい——子を産めない私ですが、帝の寵愛を独占して皇后になりました

由香
恋愛
後宮に入る女の価値は、ただ一つ。 ——皇子を産めるかどうか。 けれど私は、産めない。 ならば—— 「世継ぎは他の妃に任せます。私は、陛下に愛される女になります」 そう言い放ったその日から、すべてが狂い始めた。 毒を盛られても、捨てられず。 皇子が生まれても、選ばれたのは私だった。 「お前は、ここにいろ」 これは、子を産めない女が ただ一つの武器“寵愛”だけで頂点に立つ物語。 そして—— その寵愛は、やがて狂気に変わる。