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第五章~花の行方~
三百十七話【SIDE:宏章】
「成……寝ちまったのか?」
腕のなかの恋人は、くったりと力を失っていた。
小さな唇が、ふうふうと柔らかな寝息を立てていて……眉を下げる。
「初めてなのに、無理させ過ぎたな……」
起こさないよう、カーペットにゆっくりと横たえてやる。居間の電灯の下、薄桃色に上気した体があらわになった。汗や白濁に濡れ……たまらなく魅惑的だ。
――……あぁ、まずいな。見てるだけで、その気になって来る。
そもそも、やっと手に入れた可愛い妻を前に、一度で終わるほどヤワな男ではない。
が……俺は良くとも、成は初めてだったのだ。細い肩に残った、鋭い牙の痕をなぞる。
――『怖くっても、痛くってもいいっ……宏ちゃんが一緒なら……!』
痛みに震えながら、必死に求めてくれた……愛おしい姿を思い描く。
自慢じゃないが、俺のはちょっとしたものだ。華奢な成には、かなり辛かったはずなのに。
「可愛かったなー……」
でれでれ、と顔が崩れる。
思わず、アルファの毒を使ってしまうほど、撃ち抜かれてしまった。大事に天秤の片っ側に乗せていた理性が吹っ飛んで、何が何でも、この可愛いのを抱いてやる……ってさ。
心がうずうずと甘く浮き立つ。
――これで、ようやく俺のものだ。可愛い、成己……
愛しい人を手に入れた喜びに、体が熱く滾ってしまう。
「……あっ……」
「……っと。ごめんな」
成が小さく喘いで、悩まし気に眉を寄せた。
本当は、もう一度――と行きたいところだが、成には酷だろう。開いたばかりのうぶな体に、そこまで無体はしいられない。
大切な成を、傷つけたりはしたくない。
「……んん……ふっ……」
ゆっくりと腰を引くたびに、甘い吐息を漏らす伴侶に、俺は息を詰める。しかも、ぴったりと噛みつくように、襞が吸いついて来て……かなりの自制心が試されていた。
「……はぁ。可愛すぎるのも、考えものだぞ……」
濡れた音を立て、先端が抜け出ると……真っ赤な口から、とろりと白濁が溢れ出す。俺達のフェロモンが混じり合った、官能的な匂いが立ち上った。
眠っていても感応するのか、成の肌がふわりと赤みを増す。
「んん……」
「なる。頑張ったな」
脚を下ろしてやり、あどけない寝顔を、じっと見つめた。
涙や汗に塗れ、色っぽいことになっていても……昔と変わらない、可愛い寝顔だ。
「愛してるよ、成」
ちゅ、と濡れた眦に唇を落とす。
――さて、綺麗にしてやんなきゃな。
小さな唇にもキスを落とし、身を起こしたときだった。
……ふわり、と甘い香りが鼻腔を掠めた。
「……?」
どくん、と心臓が不穏に鼓動する。
どくん、どくんと激しく脈をうち、視界が狭くなる。
ご馳走を目にしたときのように、ひとりでに口内に唾液があふれ出した。だらだらと、犬のように浅ましい――
思わず口を押さえた時、指先に鋭い痛みが走る。
――牙が……まさか。
気づいた瞬間、芳しい香りが五感を直撃した。
「――!」
とろけるように甘い、水の香り――成の、発情フェロモン。
行為が引き金になったのか……成は、カーペットにくったりと気を失ったまま、ヒートを迎えていた。上気した肌に汗が浮かび、熟した白桃のように、心をくすぐる香りを放っている。
――『来て』。
その香りが、淡く色づく肌が……全てが俺を呼んでいる。
「……成!」
俺は、成をかき抱いた。
ぐるぐると、どこかで獣の唸り声のような音がする。――その発生源が、自分の喉だと知ったときには、成を組み敷いていた。
瑞々しい香りを放つ肌を、指で、舌で無遠慮に味わう。
「成、成……!」
「……ぁ……んん……」
濃い桃色の胸の先端を、舌で転がす。成は、ここが好きだ――子犬が甘えるような声が響き、ますます甘い匂いが強くなる。
――たまらない……もっと、この香りを味わいたい。
成のフェロモンは、「俺が欲しい」と強く訴えかけていた。
言葉がなくとも……言葉以上に、俺を欲している。これほど求められて、答えない雄がいるだろうか?
本能に衝き動かされ――細い太ももを掴み、左右に割開く。
「ああ……」
一際、芳しい匂いが立ち上り、ぐらりと脳が揺れる。
しどけなく開いた脚の狭間の、ふっくりと盛り上がった肉の合わせ目……生殖弁が開いていた。熟した果物が、ひとりでに皮をはちきれさせ、甘い蜜を零すように。
――ついに咲いたのか。俺のために……
胸が熱く震えた。
誘われるまま、指を沈めると――やわらかな果実を突くように、蜜が溢れ出す。熱くて、やわらかい。それなのに、きつく絡みついて、俺の指を引きずり込もうとする……
「んん……ぁふっ」
指を動かす度に、眠ったままの成が甘い吐息を漏らす。声が甘くなるほど、透明な蜜が指に絡み、白く泡立っていく。
興奮で視界が真っ赤に染まり、蜜をかき出す指が止まらない。
「……あぁっ」
やがて――ぴくんと腰を震わせて、成が快楽を極めた。
はあはあと荒い息を吐く唇を奪い、舌を絡めれば、唾液さえも甘い。脳髄がとろけるような快感に、陶然となる。
――このまま……
成のオメガを、俺のものに。
激情に衝き動かされ、両脚の間に腰を入れる。そのまま、押し込もうとして――成の閉じた眦から、ぽろりと涙が零れ落ちたのが見えた。
「……っ!」
突如として、われに返る。
――成!
バキ、と思いきり己の頬を殴りつけた。
痛みに理性をかき集め、弾かれたように成から離れる。
「……馬鹿か、俺は……?!」
成の意思を無視するなど、ありえない。
――ただでさえ、疲弊しているこの子を……それは恋人じゃなく、獣のすることだ。
ヒートを起こす愛しい人の誘惑は耐えがたかった。だが……成の夫としての誇りを総動員し、今にも襲い掛かりそうになる自分を叱咤する。
――『ひろにいちゃん!』
成の信頼を裏切るな。
絶対に、あの子だけは傷つけては、いけない。
「ったしか……ここにも、緊急抑制剤があったはずだ」
成は用心深い。ヒートを起こしたときの為、家のあちこちに抑制剤を隠しているのを、俺は知っていた。
テレビ台の棚をひっくり返し、小さな本を出す。――その中に、注射器型の緊急抑制剤があった。
「ぐ……」
腕にきつく噛みつき、理性を手放さないようにしながら――成を腕に抱く。涙に濡れた長い睫毛は、伏せられていた。
「成……大丈夫だ。俺は……お前が望まないことはしない」
今までも、これからも……絶対に。
誓い、細い腕に注射針を突き立てた――
腕のなかの恋人は、くったりと力を失っていた。
小さな唇が、ふうふうと柔らかな寝息を立てていて……眉を下げる。
「初めてなのに、無理させ過ぎたな……」
起こさないよう、カーペットにゆっくりと横たえてやる。居間の電灯の下、薄桃色に上気した体があらわになった。汗や白濁に濡れ……たまらなく魅惑的だ。
――……あぁ、まずいな。見てるだけで、その気になって来る。
そもそも、やっと手に入れた可愛い妻を前に、一度で終わるほどヤワな男ではない。
が……俺は良くとも、成は初めてだったのだ。細い肩に残った、鋭い牙の痕をなぞる。
――『怖くっても、痛くってもいいっ……宏ちゃんが一緒なら……!』
痛みに震えながら、必死に求めてくれた……愛おしい姿を思い描く。
自慢じゃないが、俺のはちょっとしたものだ。華奢な成には、かなり辛かったはずなのに。
「可愛かったなー……」
でれでれ、と顔が崩れる。
思わず、アルファの毒を使ってしまうほど、撃ち抜かれてしまった。大事に天秤の片っ側に乗せていた理性が吹っ飛んで、何が何でも、この可愛いのを抱いてやる……ってさ。
心がうずうずと甘く浮き立つ。
――これで、ようやく俺のものだ。可愛い、成己……
愛しい人を手に入れた喜びに、体が熱く滾ってしまう。
「……あっ……」
「……っと。ごめんな」
成が小さく喘いで、悩まし気に眉を寄せた。
本当は、もう一度――と行きたいところだが、成には酷だろう。開いたばかりのうぶな体に、そこまで無体はしいられない。
大切な成を、傷つけたりはしたくない。
「……んん……ふっ……」
ゆっくりと腰を引くたびに、甘い吐息を漏らす伴侶に、俺は息を詰める。しかも、ぴったりと噛みつくように、襞が吸いついて来て……かなりの自制心が試されていた。
「……はぁ。可愛すぎるのも、考えものだぞ……」
濡れた音を立て、先端が抜け出ると……真っ赤な口から、とろりと白濁が溢れ出す。俺達のフェロモンが混じり合った、官能的な匂いが立ち上った。
眠っていても感応するのか、成の肌がふわりと赤みを増す。
「んん……」
「なる。頑張ったな」
脚を下ろしてやり、あどけない寝顔を、じっと見つめた。
涙や汗に塗れ、色っぽいことになっていても……昔と変わらない、可愛い寝顔だ。
「愛してるよ、成」
ちゅ、と濡れた眦に唇を落とす。
――さて、綺麗にしてやんなきゃな。
小さな唇にもキスを落とし、身を起こしたときだった。
……ふわり、と甘い香りが鼻腔を掠めた。
「……?」
どくん、と心臓が不穏に鼓動する。
どくん、どくんと激しく脈をうち、視界が狭くなる。
ご馳走を目にしたときのように、ひとりでに口内に唾液があふれ出した。だらだらと、犬のように浅ましい――
思わず口を押さえた時、指先に鋭い痛みが走る。
――牙が……まさか。
気づいた瞬間、芳しい香りが五感を直撃した。
「――!」
とろけるように甘い、水の香り――成の、発情フェロモン。
行為が引き金になったのか……成は、カーペットにくったりと気を失ったまま、ヒートを迎えていた。上気した肌に汗が浮かび、熟した白桃のように、心をくすぐる香りを放っている。
――『来て』。
その香りが、淡く色づく肌が……全てが俺を呼んでいる。
「……成!」
俺は、成をかき抱いた。
ぐるぐると、どこかで獣の唸り声のような音がする。――その発生源が、自分の喉だと知ったときには、成を組み敷いていた。
瑞々しい香りを放つ肌を、指で、舌で無遠慮に味わう。
「成、成……!」
「……ぁ……んん……」
濃い桃色の胸の先端を、舌で転がす。成は、ここが好きだ――子犬が甘えるような声が響き、ますます甘い匂いが強くなる。
――たまらない……もっと、この香りを味わいたい。
成のフェロモンは、「俺が欲しい」と強く訴えかけていた。
言葉がなくとも……言葉以上に、俺を欲している。これほど求められて、答えない雄がいるだろうか?
本能に衝き動かされ――細い太ももを掴み、左右に割開く。
「ああ……」
一際、芳しい匂いが立ち上り、ぐらりと脳が揺れる。
しどけなく開いた脚の狭間の、ふっくりと盛り上がった肉の合わせ目……生殖弁が開いていた。熟した果物が、ひとりでに皮をはちきれさせ、甘い蜜を零すように。
――ついに咲いたのか。俺のために……
胸が熱く震えた。
誘われるまま、指を沈めると――やわらかな果実を突くように、蜜が溢れ出す。熱くて、やわらかい。それなのに、きつく絡みついて、俺の指を引きずり込もうとする……
「んん……ぁふっ」
指を動かす度に、眠ったままの成が甘い吐息を漏らす。声が甘くなるほど、透明な蜜が指に絡み、白く泡立っていく。
興奮で視界が真っ赤に染まり、蜜をかき出す指が止まらない。
「……あぁっ」
やがて――ぴくんと腰を震わせて、成が快楽を極めた。
はあはあと荒い息を吐く唇を奪い、舌を絡めれば、唾液さえも甘い。脳髄がとろけるような快感に、陶然となる。
――このまま……
成のオメガを、俺のものに。
激情に衝き動かされ、両脚の間に腰を入れる。そのまま、押し込もうとして――成の閉じた眦から、ぽろりと涙が零れ落ちたのが見えた。
「……っ!」
突如として、われに返る。
――成!
バキ、と思いきり己の頬を殴りつけた。
痛みに理性をかき集め、弾かれたように成から離れる。
「……馬鹿か、俺は……?!」
成の意思を無視するなど、ありえない。
――ただでさえ、疲弊しているこの子を……それは恋人じゃなく、獣のすることだ。
ヒートを起こす愛しい人の誘惑は耐えがたかった。だが……成の夫としての誇りを総動員し、今にも襲い掛かりそうになる自分を叱咤する。
――『ひろにいちゃん!』
成の信頼を裏切るな。
絶対に、あの子だけは傷つけては、いけない。
「ったしか……ここにも、緊急抑制剤があったはずだ」
成は用心深い。ヒートを起こしたときの為、家のあちこちに抑制剤を隠しているのを、俺は知っていた。
テレビ台の棚をひっくり返し、小さな本を出す。――その中に、注射器型の緊急抑制剤があった。
「ぐ……」
腕にきつく噛みつき、理性を手放さないようにしながら――成を腕に抱く。涙に濡れた長い睫毛は、伏せられていた。
「成……大丈夫だ。俺は……お前が望まないことはしない」
今までも、これからも……絶対に。
誓い、細い腕に注射針を突き立てた――
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