いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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第六章~鳥籠の愛~

三百三十一話

 看板をしまいに外に出ると、空が真っ赤に染まっていた。

「わあ……」

 昼間の青空を忘れたような――見渡す限りの、夕焼け。
 金色の夕陽が、赤い空に溶けるように丸く光ってる。

 ――きれい……

 思わず見入っていると、軽やかな足音が近づいてきた。
 ランドセルを背負った子どもが二人、笑いながら目の前を駆けていく。

「待ってよ」
「はやく、はやく」

 幼い声は、楽しげにじゃれあい――遠ざかった。

「……いいなあ」

 胸が切なくなるような、暖かな光景。ぼくは、看板をぎゅっと抱く。
 と――背後で、ドアが開く音がした。

「成。どうした?」

 エプロンをつけた宏ちゃんが、ひょいと顔を出す。

「宏ちゃんっ」
「何かあったか?」

 ぼくが戻らへんから、心配して出てきてくれたみたい。――宏ちゃんはこの頃、さらに心配性になった気がする。
 ぼくは慌てて、頭を振った。

「大丈夫、なんもないよっ」
「そうか?」

 近づいてきた宏ちゃんに、ひょい、と当たり前みたいに、看板をとりあげられちゃう。
 いつもながら優しい夫にはにかみつつ、ぼくは空を指す。

「ありがとう……あのね、すごい夕焼けで、見惚れちゃってた」
「ああ。たしかに」

 隣に並んだ宏ちゃんが、空を見上げた。――横顔が、オレンジ色に縁どられ、輝いている。
 とても綺麗やって……夕焼けみたいに、思う。

「明日も晴れそうだな」
「そうやねぇ」

 大らかな声に、頷く。
 それから……どちらからともなく、手を繋いだ。大きな手のひらに包まれた手が、じんわりと暖かい。

「じゃあ、明日もシーツ洗うか」
「……宏ちゃんのエッチ」

 さらりと言われて、頬が赤らむ。宏ちゃんは、声を上げて笑った。

――もう。すぐからかうんやもん。

 ぷんとそっぽを向くと、視界が夕焼けだけになる。
 陽は傾いて……鮮やかな赤色は、すでにところどころ黒味を帯びている。
 なんて、暮れるのが早いんやろう。

「風が出てきたな。中に入ろう」
「うんっ」

 優しい眼差しに、ぼくは頷いた。
 ふたりで、明るい店の中に戻る。そのとき――一瞬、風が強く吹く。

 バタン!

 抱き寄せられたぼくの背で、ドアが大きな音を立てて閉まった。






□□


「この子を助けて」

 彼は、涙を流す妻の肩を抱く。
 妻は我が子の前途を思い、苦しんでいた。彼も同じ気持だ……父として、夫として何が出来るのか、悩み続けている。

 ――どうすれば、家族が悲しまずに済むのだろう?

 考えた末に、脳裏に過ったのは淡い面影だった。



 
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