いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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第六章~鳥籠の愛~

三百三十四話

「どうしたん?」
「そろそろ風呂でもどうかと思って……綾人君と話してたのか?」
 
 テーブルに広げたノートと参考書を見て、宏ちゃんはズバリと言い当てる。ぼくは、にっこりする。
 
「うん。お兄さんが帰ってきはったから、さっきバイバイしたとこ」
 
 お勉強道具を抱えて抽斗に戻していると、宏ちゃんがお部屋に入って来る。てっきりお仕事に戻っちゃうと思ってたのに、一緒に居てくれるんや。
 嬉しくて、ぼくはご主人が大好きなペットみたいに、まとわりついてしまう。
 
「綾人、すっごく頑張っててね。ぼくも、刺激うけちゃって……図書館で参考書、新しいの借りてこようかなぁ、なんて」
「そうか……」
「えへへ。宏ちゃんは、お仕事どう? おなか減ってたら、なにか……」
 
「作ろうか」って笑顔で振り返って、目が真ん丸になる。
 宏ちゃんは、すっごく複雑そうな顔をしていたん。
 
「宏ちゃん……?」
 
 ぼく、話しすぎちゃったかな。
 おろおろと、もの言いたげな困り顔を見つめていると、宏ちゃんは乱暴に頭を掻いている。
 
「いや……ごめんな。俺の我儘で会えなくて」
「何を言うてるん。ぼく達が、そう決めたんよ!」
 
 思いがけない言葉に、ぎょっとする。
 ぼくは、宏ちゃんの大きな手を握りしめ、訴えた。
 
「宏ちゃんは謝らないで。だって……宏ちゃんが、ぼくのことをどれだけ心配してくれてるか、わかってる。だから……綾人と会わずにいるって、ぼくが決めたんよ」
 
 ぼくは、宏ちゃんの大きな手を頬に導いた。――宏ちゃんが、丁寧に手当てしてくれたここは、もう何も痛まない。
 
 ――優しい宏ちゃん。ぼくのために、もう誰も傷つけて欲しくない……
 
 だから、綾人にも正直に伝えたよ。
 綾人と仲直りしたい。でも……宏ちゃんに心配をかけたくないって。
 
『お前にばっか、頑張らせたりしねぇよ。オレ達は友達なんだから、二人で頑張ろうぜ!』
 
 綾人は、許してくれた。
 すごく勝手なことを言ったのに……友達だよって言ってくれたんよ。
 
「ぼく達ふたりで、約束したん。また胸張って会おうねって……だから大丈夫。それに、会えへんくても友達やもんねっ」
「成……」
 
 にっこり笑って言うと、宏ちゃんの目が和んだ。
 ぼくは、ホッとする。
 
 ――宏ちゃんをやきもきさせないよう、ぼくも頑張らなきゃ……!
 
 そう決意していると、宏ちゃんがそっと抱き寄せてくれた。
 
「成、ありがとな」
「ううん、ぼくの方こそ……!」
 
 頭を撫でられて、顔がほころぶ。広い胸に甘えていると、宏ちゃんは言う。
 
「明日は、店も休みだし。さっそく本でも見に行くか?」
「わあ……! ありがとう、宏ちゃん」
 
 ぼくは優しく抱きしめてくれる夫の背を、ぎゅっと抱き返した。
 
 
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