いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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第六章~鳥籠の愛~

三百三十五話

 浴室は、湯気と石鹸の匂いに満ちている。
  
「~♪」
 
 ぼくは風呂椅子に座って、丁寧に体を洗ってた。
 
 ――宏ちゃんも、今夜はもう休むって。一緒にゆっくりできるかな……
  
 鼻歌を歌いながら、泡々のタオルで肌を磨いていると――ふと、体に散った唇の痕が目に入る。
 
「……あっ」
 
 宏ちゃんは、見えるところに痕をつけない。けど、その分「見えなきゃいいだろ」って感じに、すごい所につけられちゃったりするんよ。
 それは、胸とか腰はいいほうで。到底口に出せないところにも、あったりして。
 
「わあ、宏ちゃんてば。こんなに……!」 
 
 振り返って、鏡に背中を映しながら、頬を赤らめる。
 痣をみるとね――こんなトコロまで愛されたんだって、凄く照れちゃう。それから、宏ちゃんのことを思い出して、切なくなって……
 
――『成、綺麗だよ』
 
 とくん、と鼓動が跳ねる。ぎゅってわが身を抱いて、熱い息を吐いた。
 最近ね……なんだか、体が変わった気がするん。宏ちゃんと、本当に繋がってから、すぐに熱くなってしまうっていうか。
 
 ――って、お風呂で何考えてるんやろっ。
 
 猛然と体を洗ってたら、「成ー」と脱衣所から声がかかる。
 
「は、はいっ! 何ですか?」
「俺も入っていいか?」
「あ……はい。どうぞっ」
 
 ぼくは慌てて、シャワーで泡を流し、湯船に身を沈めた。
 ほぼ同時に戸が開き、宏ちゃんが入ってきた。
 
「……!」
「よっ。よく洗えたか?」
 
 堂々とした体躯に、目を奪われる。
 
「成?」
「あ――な、何でもないよっ。あはは……」
 
 笑って誤魔化して、じんじんと熱る頬を伏せる。
 
 ――ひええ。宏ちゃん、色っぽすぎです……!
 
 何度見ても慣れない、宏ちゃんのヌード。すごいセクシーで、目がちかちかする気がするっ。
 不思議そうに首を傾げていた宏ちゃんが、「ふむ」と笑った。
 
「そんなに照れて貰うと、見せがいがあるな」
「もう! 宏ちゃんのばかっ」
 
 恥ずかしくて、頬を膨らませる。ざぶんと湯船に潜ると、宏ちゃんが、ますます上機嫌に笑った。
 
「可愛いな、俺の奥さんは」
 
 風呂椅子に座って、体を洗い始めた宏ちゃんを、浴槽のヘリにもたれながら……そっとうかがう。
 
 ――やっぱり、綺麗……
 
 ほう、とため息が出ちゃう。
 あちこち、がっしりと逞しくて……浅黒い肌も、ワイルドで素敵。でもね、粗野とかじゃなくて、野生の獣みたいに生まれたままで完璧ってかんじなん。
 
 ――心なしか……前よりも、もっと素敵になってへん?
 
 友菜さんは、ああ言ってくれたけれど、綺麗になったのは宏ちゃんやと思う。道を歩くときだって、彼を追う視線が増えてる気がするし。
 
「……むう」 
 
 もんもんとしていると、ちゃぷんとお湯が揺れる。
 はっと目を上げたら――宏ちゃんが、いつの間に体を洗い終えたんやろ? 差し向かいに、湯船に浸かってた。
 
「どうしたんだ? しかめっ面して」
「えっ。な、なんでもないよ」
「……そうかあ?」
 
 伸びてきた手に、濡れた前髪を撫で上げられた。きょとんとしてたら、切れ長の目が優しく細まる。
 
「ふふ。目に入りそうだぞ」
「ありが……んっ?」
 
 いきなり唇にキスされて、目を瞠る。
 びっくりしたんやけど、顔中を優しく啄まれていると……体の芯に火が灯りはじめた。
 
 ――宏ちゃん……っ
 
 すごく欲しいって、衝動が込み上げる。
 
「宏ちゃん、好きっ」
 
 ぼくは、ざばりとお湯を揺らし、宏ちゃんに抱きつく。
 
「ん。俺も好きだよ……」
 
 逞しい腕が、優しく受け止めてくれる。「口を開けて?」って甘く囁かれて……ドキドキしながら、ぼくは言う通りにする。
 
「んんっ……」
 
 ふたつの舌が絡み合い、激しい水音が響く。夢中でしているうちに……次が"始まって"しまう。大きな手に、体のあちこちを愛撫されると、もう何も考えられへん。
 
「……あっ」
 
 顎を甘噛みされ、ぴくんとのけぞった。
 無防備な喉に、つー……って優しく舌を這わされ、甘い息が止まらない。
 
「あぁ……だめぇ」
 
 がっしりと抱き寄せられて、ウナギみたいに体をくねらせる。宏ちゃんはくすりと喉を鳴らし……ぼくのお尻の谷間に、指を潜らせた。
 
「あっ!」
 
 指先が、つぷりと内側に軽く沈んできて――思わず、逞しい首に強くしがみついた。お湯が、ちゃぷちゃぷと激しく揺れる。
 
「宏ちゃん、宏ちゃん……」
「成……」
 
 浅く出し入れされているだけで、腰を震わせてしまう。――前よりも、ずっと敏感で……感じてる。宏ちゃんに触れられると、お腹が期待で、疼いてしまうほど。
 
「だめえ、もう……のぼせちゃう」
 
 宏ちゃんが「出ようか」って囁いたのに、ぼくは、夢見心地に何度も頷いた。
 
 
 
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