いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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第六章~鳥籠の愛~

三百四十話【SIDE:朝匡】

 野江家への滞在の礼として、宏章が他人行儀にメロンを送ってよこしてきたと思っていたが。
 俺に隠れて、こんなやりとりもあったのかと思うと、胸が嫉妬にちりついた。
 
「宏章さんの荷物に、一緒にいれてくれてあったんだ。陣中見舞いっつってさあ。わざわざラッピングしてくれんの、可愛いよなー!」

 綾人がへらへらと頬を赤らめる。こいつはわざとやっているのか、とこめかみが引き攣った。
 
「お前は……本当に、成己さんを信頼しているんだな?」
「それ前も言ったし。てか、しつけえよ毎度」
 
 胡乱な目を向けられ、カッとなる。
 
「お前が、真面目に取り合わないからだろうが! 成己さんは、お前とは会わないと言った。つまりは……お前じゃなくて、宏章を取ったんだぞ?」
 
 解らせるように、言葉を重ねる。綾人は目を丸くし、手をひらひらと振った。
 
「いやいや。ダチってことに、変わりは無えもん。会わないだけで、電話もしてるしさ? あんな事があって、付き合いを許して貰ってるだけでも、オレはありがてえよ」

 さびし気に笑った綾人に、胸が詰まった。

「許してもらうとは、何だ。お前と成己さんは友人だろうが」
「……うおっ!」

 思わず席をたち、肩を落とした綾人を抱き寄せた。ジタバタ暴れるが、腕に力をこめて離さないでいると、大人しくなる。
 
 ――ったく。こいつは、妙なところで謙虚さを発揮しやがるな……

 麦色の髪を撫でると、レモンのような清々しい香りがする。番の俺にしか感じられない、朝の光を思わせるフェロモンだった。オメガとしての自覚の薄い綾人は、ほとんどフェロモンを発さない。
 ときたま、寂しさを感じた時に甘えてくるくらいで。

「綾人――」

 奪った唇がぴくりと強張り、しだいに力が抜ける。それをいいことに、思うさま可愛がったあと、放してやった。

「ば……急に何すんだよっ」
「ふん」

 ふだん、勝手気ままなこいつが落ち込んでいると、調子が狂う。真っ赤な顔で怒っている方が、まだマシと言うものだ。
 俺は満足し、にっと口端をつり上げた。

「きー! 好き勝手しやがって」
「あーうるせえうるせえ」

 とは言え――やいやい怒っている綾人の額を押しのけつつ、思案する。
 問題の核は、宏章だろう。綾人が遠慮し、成己さんが追従する以上……あいつが改めない限り、この問題は解決しない。
 
『本当に、宏はマイペースだよね。お兄ちゃん、よく見てあげて』
『……ああ、わかったよ』

 昔から、どれほど母に頼まれたか、思い出すだけでため息が出る。 
 後継として厳しく育てられた俺と違い、甘やかされて育ったせいかも知れない。
 ここらで、ひとつ指導を入れてやらねばならないかもしれん。
  
 ――頼んでいた件も、そろそろ機は熟してきた頃だろうしな。
 
 俺は、苦すぎる茶を飲み干した。
 
 
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