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第六章~鳥籠の愛~
三百七十五話【SIDE:晶】
「おはよう、晶」
朝の光が差す食堂に歩み入ると、開口一番に父さんが言った。
手に握ったナイフとフォークを下ろし、俺に黒曜石のような目を向けている。その硬質な視線に反射的に身が竦むのをこらえ、唇に薄い笑みをはいた。
「……おはようございます、お父さん」
「うむ」
父は頷いて、食事を再開する。けれど、全身から立ち上る雰囲気が、俺の挙動を注視しているのを伝えていた。いつも通り、俺のあらを探しているような。
俺はつとめて顔を上げ、蓑崎の子息として相応しい振る舞いで席を目指した。
「おはようございます、お兄様」
ちぎっていたパンを置いて、玻璃がおざなりに挨拶をする。こいつは相変わらず、家族が揃う前から食べてんだよな。
――忙しい父さんはともかく……アルファってだけで、偉そうな奴。
ちょっとイラっとしながら妹を追い越して、自分の席についた。長い長方形のテーブルの、上座に父。その右隣が俺の席だ。相変わらず、左頬に視線を感じるが、つとめて気にしないふりをする。
使用人の運んできた朝食を食べながら、俺はため息を堪えた。
――なんだよ……なんか、全然いつも通りじゃん?
父さんが、思いを打ち明けてくれた夜から、初めて顔を合わせるのに。
色んな感情が溢れだして、涙が止まらなくなった俺を、父さんはずっとあやしてくれた。「晶、愛してるよ」って、眠るまでずっと枕元で手を握っていてくれたのに。……あれは、やはり幻だったのだろうか?
――まあ、急になにか変わるわけないよな……
解けかけた胸の奥が、諦念に冷たく凝るのを感じた。。
父さんが冷たい人だと知っていたのにまだ期待していたのかと、愚かな自分を鼻で笑う。
でも、仕方ないじゃないか。冷たくて、妹ばかりのこの人に振り返って欲しくて、俺はずっと頑張って来たんだから。
「……ふぅ」
グレープフルーツジュースを一口含み、息を吐く。
もういいや。どうせ、酒でも飲んでハイになった、父の気の迷いだったんだよ。期待するだけ、無駄なんだから。
――これ以上、アルファに振り回されんのは、ごめんだっての。
父も、椹木さんも……傲慢なアルファだって、忘れるな。
くさくさした気分で目玉焼きをナイフで刺すと、とろりと黄身が溢れ出す。余さずパンにつけて頬張ると、濃厚な卵の旨さが口いっぱいに広がった。知らず、「んん」と満足の息が漏れる。
「……っ?」
その瞬間、なぜか左頬に感じる視線が強くなり、目を上げる。と――父が、俺を強い眼差しで見つめていて、ぎょっとした。
「な、なんですか」
「……いや。おかわりをするか?」
「は?」
朝の光が差す食堂に歩み入ると、開口一番に父さんが言った。
手に握ったナイフとフォークを下ろし、俺に黒曜石のような目を向けている。その硬質な視線に反射的に身が竦むのをこらえ、唇に薄い笑みをはいた。
「……おはようございます、お父さん」
「うむ」
父は頷いて、食事を再開する。けれど、全身から立ち上る雰囲気が、俺の挙動を注視しているのを伝えていた。いつも通り、俺のあらを探しているような。
俺はつとめて顔を上げ、蓑崎の子息として相応しい振る舞いで席を目指した。
「おはようございます、お兄様」
ちぎっていたパンを置いて、玻璃がおざなりに挨拶をする。こいつは相変わらず、家族が揃う前から食べてんだよな。
――忙しい父さんはともかく……アルファってだけで、偉そうな奴。
ちょっとイラっとしながら妹を追い越して、自分の席についた。長い長方形のテーブルの、上座に父。その右隣が俺の席だ。相変わらず、左頬に視線を感じるが、つとめて気にしないふりをする。
使用人の運んできた朝食を食べながら、俺はため息を堪えた。
――なんだよ……なんか、全然いつも通りじゃん?
父さんが、思いを打ち明けてくれた夜から、初めて顔を合わせるのに。
色んな感情が溢れだして、涙が止まらなくなった俺を、父さんはずっとあやしてくれた。「晶、愛してるよ」って、眠るまでずっと枕元で手を握っていてくれたのに。……あれは、やはり幻だったのだろうか?
――まあ、急になにか変わるわけないよな……
解けかけた胸の奥が、諦念に冷たく凝るのを感じた。。
父さんが冷たい人だと知っていたのにまだ期待していたのかと、愚かな自分を鼻で笑う。
でも、仕方ないじゃないか。冷たくて、妹ばかりのこの人に振り返って欲しくて、俺はずっと頑張って来たんだから。
「……ふぅ」
グレープフルーツジュースを一口含み、息を吐く。
もういいや。どうせ、酒でも飲んでハイになった、父の気の迷いだったんだよ。期待するだけ、無駄なんだから。
――これ以上、アルファに振り回されんのは、ごめんだっての。
父も、椹木さんも……傲慢なアルファだって、忘れるな。
くさくさした気分で目玉焼きをナイフで刺すと、とろりと黄身が溢れ出す。余さずパンにつけて頬張ると、濃厚な卵の旨さが口いっぱいに広がった。知らず、「んん」と満足の息が漏れる。
「……っ?」
その瞬間、なぜか左頬に感じる視線が強くなり、目を上げる。と――父が、俺を強い眼差しで見つめていて、ぎょっとした。
「な、なんですか」
「……いや。おかわりをするか?」
「は?」
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