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第六章~鳥籠の愛~
三百七十六話【SIDE:晶】
父は俺の返答を待たず、使用人に言いつける。
「えっ、ちょっと……!」
あっという間に、俺の周りは卵料理で埋め尽くされた。ベーコンエッグに、スクランブルエッグ。スフレオムレツ。なぜか、ソーセージ等の肉類まで追加されている。
「……こんなに食べれません!」
充満するたんぱく質の香りに我に返り、抗議する。父は大真面目な顔で首を傾げ、言う。
「卵料理は体に良い。若いうちは幾つ食べても健康に支障はないのだから、たくさん食べなさい」
「ええ……でも……」
たくさんたって、限度を超え過ぎだし。俺も蓑崎家の子息として、ちゃんとカロリーとか気にしてるし、困るんだけど。
冷静な父らしからぬ意味不明の行動にひいていると、妹が横から口を挟んだ。
「お兄様。お父様のお心遣いですし、食べられる分だけでも召し上がっては? 卵はお好きでしょう」
「……っ!」
余計なことを言うなよ、と口から飛び出しそうになるのを、すんでで堪える。そんな言われ方したら、俺が父の好意をわざわざ無下にしてるみたいに聞こえるだろうが……!
きっと睨みつけてやると、どこ吹く風でコーヒーを飲んでいる。
――玻璃の奴……いつもこれだ!
この妹は、ことあるごとに仲裁めいたことを口にして、父に良い子のアピールをする。俺の心を、わざと父に歪めて伝えて、なにが良い子なのかわからない。だが、使用人を始め、周囲の人々はこれにすっかり騙されて、「蓑崎の後継者はしっかり者」だなんて、噂している始末だ。
結局、俺の気持ちなんて誰も興味が無いから、玻璃の偽りがまかり通るんだ。悔しさのあまり、フォークを握りしめていると、「玻璃」と厳しい声が上がった。
「兄に向って、その口のきき方はなんだ。どうでもいいことを喋るな」
旧家である蓑崎の当主である父は、序列を重んじてはくれる。
ただ、俺の話題は「どうでもいい」んだって思うと、気が滅入ることに変わりはなかった。
叱責を受け、玻璃はしずしずと頭を下げる。
「申し訳ございません。お兄様がお痩せになったことを、気にしていらっしゃるのかと思いまして。つい愚考を述べました」
「……えっ」
目を瞠り、父さんを見る。切れ長の目元が赤く染まっているのを見て、動揺する。
――何それ、まさか照れてるの? あの父さんが、俺なんかのことで。
呆然としているうちに、その表情は幻のように消えてしまう。
父は、ゴホンと大きく咳払いをした。
「……ふん。お前などが私の心を推し量るな。分際を弁えろ」
「はい。申し訳ありませんでした」
玻璃はにこりと笑みを浮かべた。「ごちそう様でした」と手を合わせ、席を立つ。
「委員会がありますので、お先に失礼いたします」
制服のスカートを翻し、食堂を出て行った。行きがけに、使用人に「美味しかったです、ありがとう」と笑顔を向け、点数稼ぎしていくことも忘れない。
「えっ、ちょっと……!」
あっという間に、俺の周りは卵料理で埋め尽くされた。ベーコンエッグに、スクランブルエッグ。スフレオムレツ。なぜか、ソーセージ等の肉類まで追加されている。
「……こんなに食べれません!」
充満するたんぱく質の香りに我に返り、抗議する。父は大真面目な顔で首を傾げ、言う。
「卵料理は体に良い。若いうちは幾つ食べても健康に支障はないのだから、たくさん食べなさい」
「ええ……でも……」
たくさんたって、限度を超え過ぎだし。俺も蓑崎家の子息として、ちゃんとカロリーとか気にしてるし、困るんだけど。
冷静な父らしからぬ意味不明の行動にひいていると、妹が横から口を挟んだ。
「お兄様。お父様のお心遣いですし、食べられる分だけでも召し上がっては? 卵はお好きでしょう」
「……っ!」
余計なことを言うなよ、と口から飛び出しそうになるのを、すんでで堪える。そんな言われ方したら、俺が父の好意をわざわざ無下にしてるみたいに聞こえるだろうが……!
きっと睨みつけてやると、どこ吹く風でコーヒーを飲んでいる。
――玻璃の奴……いつもこれだ!
この妹は、ことあるごとに仲裁めいたことを口にして、父に良い子のアピールをする。俺の心を、わざと父に歪めて伝えて、なにが良い子なのかわからない。だが、使用人を始め、周囲の人々はこれにすっかり騙されて、「蓑崎の後継者はしっかり者」だなんて、噂している始末だ。
結局、俺の気持ちなんて誰も興味が無いから、玻璃の偽りがまかり通るんだ。悔しさのあまり、フォークを握りしめていると、「玻璃」と厳しい声が上がった。
「兄に向って、その口のきき方はなんだ。どうでもいいことを喋るな」
旧家である蓑崎の当主である父は、序列を重んじてはくれる。
ただ、俺の話題は「どうでもいい」んだって思うと、気が滅入ることに変わりはなかった。
叱責を受け、玻璃はしずしずと頭を下げる。
「申し訳ございません。お兄様がお痩せになったことを、気にしていらっしゃるのかと思いまして。つい愚考を述べました」
「……えっ」
目を瞠り、父さんを見る。切れ長の目元が赤く染まっているのを見て、動揺する。
――何それ、まさか照れてるの? あの父さんが、俺なんかのことで。
呆然としているうちに、その表情は幻のように消えてしまう。
父は、ゴホンと大きく咳払いをした。
「……ふん。お前などが私の心を推し量るな。分際を弁えろ」
「はい。申し訳ありませんでした」
玻璃はにこりと笑みを浮かべた。「ごちそう様でした」と手を合わせ、席を立つ。
「委員会がありますので、お先に失礼いたします」
制服のスカートを翻し、食堂を出て行った。行きがけに、使用人に「美味しかったです、ありがとう」と笑顔を向け、点数稼ぎしていくことも忘れない。
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