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第六章~鳥籠の愛~
三百七十八話【SIDE:晶】
知り合って初めての、陽平の誕生日だったと思う。
『お前だって、お母さん居るだろ。なんで俺のお母さんをとるんだよ!』
せっかく祝いに行ってやったのに、部屋に二人になったときに詰られた。
不当にやられっぱなしになる気はなかったんで、思い切り、顔をぶん殴ってやったんだ。
『俺の母さんは、オメガが嫌いだから別居中なんだ! よく、そんな事が言えるな!』
って、怒鳴りつけてやった。
そうしたら、オメガに殴られて怒り心頭だった陽平は、途端に勢いを失っちまってさ。叱られた犬みたいな顔になったと思うと、「酷いこと言ってごめん」って、泣いて謝ってきたんだよ。
まさか、甘ったれの陽平が謝るなんてって、驚いたっけ。
『わかってくれたらいい。ったく、陽平ちゃんは甘ったれだな』
話せばわかる奴なのかもしんないって、ちょっと見直してやることにした。
まあ、年下相手に俺も大人げなかったし。しょぼくれた顔があんまり情けないから、兄貴分として面倒見てやんなきゃな、って思ったんだ。
それからは、不器用な陽平にママへの接し方を逐一教えてやった。甘ったれなあいつは、その度に癇癪をおこしたけど、俺の言うことを聞けばうまく行くと解ったら、尊敬の目で見るようになってきた。
『ありがとう、晶』
現金な奴って思わなくも無かったけど、可愛くないこともない。
そうやって、優しいママと陽平の間を取り持ってると……俺も、城山一家の一員になれた気がしたんだ。
「……はぁ」
知らず、ため息を吐いていた。
ずっと、上手くやって来たと思ってたのは、俺だけだったのか。
結局、陽平には恩をあだで返されて……陽平ママにも、裏切られた。
――結局、家族と思ってたのは俺だけだったってことだよな。
裏切られた人のこと、大切に回想するなんて馬鹿みたいだ。
自嘲し、俯いていると――
「晶」
「……父さん」
父が、じっと俺を見ている。
もう、とっくに食事を終えているのに、なんでまだここに居るんだろうって、ぎょっとする。
「父さん、出社は……」
「まだ構わない」
「そうですか?」
長い間感慨にふけっていた気がしたけど、気のせいだったのだろうか。
大切な思い出ほど、ゆっくり思い返すからかもしれない、と皮肉に思ってしまう。
父は、言う。
「どうしたのだ? 食べられないなら、無理をしなくてもいい」
「いえ……そういうことではありません」
見当違いの言葉に、乾いた笑いが漏れる。……食べないと、煩そうだな。もう食欲なんてなかったけど、諦めて食事を再開する。
「晶、無理するな」
「いえ。平気です」
「晶……!」
焦れたように唸った父に、手が止まる。
「あ……ごめんなさい」
『お前だって、お母さん居るだろ。なんで俺のお母さんをとるんだよ!』
せっかく祝いに行ってやったのに、部屋に二人になったときに詰られた。
不当にやられっぱなしになる気はなかったんで、思い切り、顔をぶん殴ってやったんだ。
『俺の母さんは、オメガが嫌いだから別居中なんだ! よく、そんな事が言えるな!』
って、怒鳴りつけてやった。
そうしたら、オメガに殴られて怒り心頭だった陽平は、途端に勢いを失っちまってさ。叱られた犬みたいな顔になったと思うと、「酷いこと言ってごめん」って、泣いて謝ってきたんだよ。
まさか、甘ったれの陽平が謝るなんてって、驚いたっけ。
『わかってくれたらいい。ったく、陽平ちゃんは甘ったれだな』
話せばわかる奴なのかもしんないって、ちょっと見直してやることにした。
まあ、年下相手に俺も大人げなかったし。しょぼくれた顔があんまり情けないから、兄貴分として面倒見てやんなきゃな、って思ったんだ。
それからは、不器用な陽平にママへの接し方を逐一教えてやった。甘ったれなあいつは、その度に癇癪をおこしたけど、俺の言うことを聞けばうまく行くと解ったら、尊敬の目で見るようになってきた。
『ありがとう、晶』
現金な奴って思わなくも無かったけど、可愛くないこともない。
そうやって、優しいママと陽平の間を取り持ってると……俺も、城山一家の一員になれた気がしたんだ。
「……はぁ」
知らず、ため息を吐いていた。
ずっと、上手くやって来たと思ってたのは、俺だけだったのか。
結局、陽平には恩をあだで返されて……陽平ママにも、裏切られた。
――結局、家族と思ってたのは俺だけだったってことだよな。
裏切られた人のこと、大切に回想するなんて馬鹿みたいだ。
自嘲し、俯いていると――
「晶」
「……父さん」
父が、じっと俺を見ている。
もう、とっくに食事を終えているのに、なんでまだここに居るんだろうって、ぎょっとする。
「父さん、出社は……」
「まだ構わない」
「そうですか?」
長い間感慨にふけっていた気がしたけど、気のせいだったのだろうか。
大切な思い出ほど、ゆっくり思い返すからかもしれない、と皮肉に思ってしまう。
父は、言う。
「どうしたのだ? 食べられないなら、無理をしなくてもいい」
「いえ……そういうことではありません」
見当違いの言葉に、乾いた笑いが漏れる。……食べないと、煩そうだな。もう食欲なんてなかったけど、諦めて食事を再開する。
「晶、無理するな」
「いえ。平気です」
「晶……!」
焦れたように唸った父に、手が止まる。
「あ……ごめんなさい」
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