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第六章~鳥籠の愛~
三百七十九話【SIDE:晶】
苛立つ父が、恐ろしい。
フォークを取り落としかけ、慌ててテーブルに置く。このうえ粗相をすれば、「もう息子じゃない」と言われるのではと、恐怖でカタカタと震えてしまう。
すると――膝の上に乗せた手の上に、そっと冷たい手が重なってきた。
「晶、すまない」
「……え……っ」
父が、跪いていた。幼い子供と目線を合わせるように、じっと俺の目を見つめている。
ドクン、と鼓動が跳ねて言葉を失う。
「お父さん……?」
途方に暮れていると、父は「すまない」と繰り返す。秀麗な眉が寄り、苦しげな顔をしている。
「怒っているのではない。……また、失敗してしまったな。許してくれ。お前をどう気遣ってやればいいかわからない。アルファだと言うのに歯がゆいばかりだ」
父さんの目には、あの夜と同じ真摯さがあった。
思わず、信じたくなるような温かい瞳。この前と同じように、重なった手は震えていた。
――まるで、俺に怯えてるみたい……
そう思ったとき、父さんの顔が幼い日の陽平に重なった。ママが大好きなのに、うまく愛情を伝えられないで、もどかしそうにしているときの。
まさか、と思う。――陽平はママが好きだけど、父さんは別に俺のことなんて好きじゃない。
我に返り、慌てて繋がれた手を抜こうとしても、強い力で握られてかなわない。
ぐいぐい引っ張っても離さないさまは、まるで大切なものを手放したくない子どものよう。
「……ふふっ」
あの父さんが、子ども? 自分の想像に気が抜けて、笑ってしまう。
はっと、息を飲む声が聞こえた。
「晶……私に笑ってくれたのか」
父は、信じられないものを見るように、目を瞠っている。
「……え、なんですか?」
「……晶……!」
きょとんとして見返すと、感極まったように抱きしめられる。細身に見えて、厚い胸に抱き寄せられて、俺はうっと呻く。
――く、苦しいんですけど!?
背中を叩いてやろうとすれば、父さんが声を震わせる。
「お前の笑顔を久しぶりに見た……」
「お父、さん……」
父が泣いているような気がして、俺は狼狽えた。
「どうしたんですか……らしくないです。俺なんかが笑っても仕方ないでしょう」
「馬鹿を言うな。これから、ずっとそのように笑っていてほしい。それだけが、私の望みだ」
「……父さん……」
力強く抱きしめられる。
父さんの腕は、硬い。それなのに……かつての陽平ママのように、俺を受け入れてくれている気がした。
――俺は……あなたを信じてもいいんですか?
そっと、背に腕を当てる。
より強くなった抱擁に、俺に目からも涙が溢れた。
フォークを取り落としかけ、慌ててテーブルに置く。このうえ粗相をすれば、「もう息子じゃない」と言われるのではと、恐怖でカタカタと震えてしまう。
すると――膝の上に乗せた手の上に、そっと冷たい手が重なってきた。
「晶、すまない」
「……え……っ」
父が、跪いていた。幼い子供と目線を合わせるように、じっと俺の目を見つめている。
ドクン、と鼓動が跳ねて言葉を失う。
「お父さん……?」
途方に暮れていると、父は「すまない」と繰り返す。秀麗な眉が寄り、苦しげな顔をしている。
「怒っているのではない。……また、失敗してしまったな。許してくれ。お前をどう気遣ってやればいいかわからない。アルファだと言うのに歯がゆいばかりだ」
父さんの目には、あの夜と同じ真摯さがあった。
思わず、信じたくなるような温かい瞳。この前と同じように、重なった手は震えていた。
――まるで、俺に怯えてるみたい……
そう思ったとき、父さんの顔が幼い日の陽平に重なった。ママが大好きなのに、うまく愛情を伝えられないで、もどかしそうにしているときの。
まさか、と思う。――陽平はママが好きだけど、父さんは別に俺のことなんて好きじゃない。
我に返り、慌てて繋がれた手を抜こうとしても、強い力で握られてかなわない。
ぐいぐい引っ張っても離さないさまは、まるで大切なものを手放したくない子どものよう。
「……ふふっ」
あの父さんが、子ども? 自分の想像に気が抜けて、笑ってしまう。
はっと、息を飲む声が聞こえた。
「晶……私に笑ってくれたのか」
父は、信じられないものを見るように、目を瞠っている。
「……え、なんですか?」
「……晶……!」
きょとんとして見返すと、感極まったように抱きしめられる。細身に見えて、厚い胸に抱き寄せられて、俺はうっと呻く。
――く、苦しいんですけど!?
背中を叩いてやろうとすれば、父さんが声を震わせる。
「お前の笑顔を久しぶりに見た……」
「お父、さん……」
父が泣いているような気がして、俺は狼狽えた。
「どうしたんですか……らしくないです。俺なんかが笑っても仕方ないでしょう」
「馬鹿を言うな。これから、ずっとそのように笑っていてほしい。それだけが、私の望みだ」
「……父さん……」
力強く抱きしめられる。
父さんの腕は、硬い。それなのに……かつての陽平ママのように、俺を受け入れてくれている気がした。
――俺は……あなたを信じてもいいんですか?
そっと、背に腕を当てる。
より強くなった抱擁に、俺に目からも涙が溢れた。
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