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第六章~鳥籠の愛~
三百八十七話【SIDE:玻璃】
涙の光る瞳が、私をまっすぐに見つめている。
感情を押し付けるような媚は感じない。どころか……春の陽ざしにゆるむ水辺のように、あたたかい。
「ごめんねえ。あなたみたいな、小さい子に……」
「……」
びっくりなことに、この人――自己憐憫じゃなく、私という子どもの為に泣いているのだった。
ふと、最後に会った宍倉さんを思い出す。
こんな感じで、彼の目も潤んでいた。
「…………うッ」
「……えっ」
ふいに喉が詰まり、私はしゃくりあげる。
胸の奥が焼けるように熱い。土石流のように、涙の塊が喉をこみ上げてきた。
「……ううっ」
食いしばった歯の隙間から、嗚咽が零れた。伸びた牙が唇を突き破り、鉄の味が口いっぱいに広がって不愉快。ぐしゃぐしゃになった頬に、熱い涙が伝った。
「玻璃さん……」
あたたかい悲しい声で、成己さんが私を呼んだ。
ごそごそと、何か探る音がした後――やわらかいハンカチが、頬に押し当てられる。ふわりと柔らかな感触と、優しい柔軟剤の香りがした。
ぽんぽんと頬に触れる、あまりにお節介で優しい気づかいに、息を飲む。
――反則だってば!
大黒様のガマの穂綿か。
どっ、と涙があふれたけど、優しい気配は動じたりしない。それが、私の気持ちを傷つけないと知ってるみたいだった。
「大丈夫……大丈夫ですよ」
肩を、小さいひんやりした手が支えてくれる。
その確かさに……初めて、自分が不安定だったことを自覚する。
そうだ。
本当は私は……宍倉さんが居なくなって、死ぬほど不安だったんだよ。
――ちっきしょう……なんで私は、いつもいつもこんな役回りなんだよ……!
私を苦しめて当然の親父も、兄貴も。私の行動一つでいなくなってしまう使用人も……抱えられないくらいに重たかった。
重いにきまってんだろ、こちとら、まだ十三歳だぞ。
普通に甘えたい盛りだよ! 大事な本も燃えるし、燃やすし……くそ親父! みんなも立場があるのはわかるけど、ひでーだろ!
――どいつもこいつも、大人のくせに。私にばっか気を遣わせんじゃねえ!
宍倉さんだけじゃないか。私を助けてくれたのは。
『若様、申し訳ありません』
でも、あの人も……そのせいで、いなくなってしまって。
私に寄り添ってくれる人は、そうやっていなくなってく。じゃあ、私って一生。一人なんじゃないのかって……
「うぐぐぐ……」
「つらかったねえ。大丈夫やからね……」
歯を食いしばって泣いていると、成己さんはずっと背を擦ってくれた。
痛いのは、背中じゃなくて内臓だし。この人が私の問題を知っているはずはない。宍倉さんと違って、手にも、言葉にも……私の現実をどうかする力があると思えないのに。
――……あったかいな。
無条件な優しさがどれほど人を温めるのか、私は初めて知った。
感情を押し付けるような媚は感じない。どころか……春の陽ざしにゆるむ水辺のように、あたたかい。
「ごめんねえ。あなたみたいな、小さい子に……」
「……」
びっくりなことに、この人――自己憐憫じゃなく、私という子どもの為に泣いているのだった。
ふと、最後に会った宍倉さんを思い出す。
こんな感じで、彼の目も潤んでいた。
「…………うッ」
「……えっ」
ふいに喉が詰まり、私はしゃくりあげる。
胸の奥が焼けるように熱い。土石流のように、涙の塊が喉をこみ上げてきた。
「……ううっ」
食いしばった歯の隙間から、嗚咽が零れた。伸びた牙が唇を突き破り、鉄の味が口いっぱいに広がって不愉快。ぐしゃぐしゃになった頬に、熱い涙が伝った。
「玻璃さん……」
あたたかい悲しい声で、成己さんが私を呼んだ。
ごそごそと、何か探る音がした後――やわらかいハンカチが、頬に押し当てられる。ふわりと柔らかな感触と、優しい柔軟剤の香りがした。
ぽんぽんと頬に触れる、あまりにお節介で優しい気づかいに、息を飲む。
――反則だってば!
大黒様のガマの穂綿か。
どっ、と涙があふれたけど、優しい気配は動じたりしない。それが、私の気持ちを傷つけないと知ってるみたいだった。
「大丈夫……大丈夫ですよ」
肩を、小さいひんやりした手が支えてくれる。
その確かさに……初めて、自分が不安定だったことを自覚する。
そうだ。
本当は私は……宍倉さんが居なくなって、死ぬほど不安だったんだよ。
――ちっきしょう……なんで私は、いつもいつもこんな役回りなんだよ……!
私を苦しめて当然の親父も、兄貴も。私の行動一つでいなくなってしまう使用人も……抱えられないくらいに重たかった。
重いにきまってんだろ、こちとら、まだ十三歳だぞ。
普通に甘えたい盛りだよ! 大事な本も燃えるし、燃やすし……くそ親父! みんなも立場があるのはわかるけど、ひでーだろ!
――どいつもこいつも、大人のくせに。私にばっか気を遣わせんじゃねえ!
宍倉さんだけじゃないか。私を助けてくれたのは。
『若様、申し訳ありません』
でも、あの人も……そのせいで、いなくなってしまって。
私に寄り添ってくれる人は、そうやっていなくなってく。じゃあ、私って一生。一人なんじゃないのかって……
「うぐぐぐ……」
「つらかったねえ。大丈夫やからね……」
歯を食いしばって泣いていると、成己さんはずっと背を擦ってくれた。
痛いのは、背中じゃなくて内臓だし。この人が私の問題を知っているはずはない。宍倉さんと違って、手にも、言葉にも……私の現実をどうかする力があると思えないのに。
――……あったかいな。
無条件な優しさがどれほど人を温めるのか、私は初めて知った。
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