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第六章~鳥籠の愛~
三百八十八話【SIDE:玻璃】
成己さんは何も聞かないでくれた。ただ、黙って側に居てくれること、それ以外に私が望んでいないことを、わかってくれているみたいだった。
おかげで、私は自分の感情に没頭できた。
ただ、泣いて。泣いて――これ以上は涙を絞り出せない、ってところまで、泣きまくった。
「……はぁ」
涙を拭い、息を吐く。
「どうやって止めるんだ?」と思ったけど、泣くだけ泣けば涙って止まるもんだった。
久々過ぎて、忘れてた。
「……ありがとうございます」
すうと息を吸って背筋を伸ばすと、成己さんが小さな声で問う。
「だいじょうぶ?」
「……はい、もう平気です」
心配そうな大きな目に、にこっと笑って見せると、涙で頬が突っ張った。成己さんは新しいハンカチを取り出し、「どうぞ」って渡してくれる。
「だ、大丈夫です……! 新しいのまで汚すわけには」
「ふふっ。遠慮せんといてください。こんなん、お洗濯したらええんですから」
「ぎゃっ」
まふ、と問答無用にやわらかい布を頬に押し当てられる。
「……すみません、お借りします」
「どうぞ、どうぞ」
小さい子を見るような開け放しの笑顔に見守られ、頬が熱くなった。――こんなに子ども扱いされるの、いつぶりだろうか。むず痒い気持ちで頬を拭う。
――でも、なんかスッキリしたかも……
涼やかな風が吹き抜けて、庭の木々がさやさやと音を立てた。草花の匂いと湿った土の匂いがする。もう一度、息を吸い込むと、胸の奥が清々しくなった。
私が落ち着いたのを見て取って、やわらかな声がかけられる。
「良い風ですねぇ」
「……はい」
庭を見る余裕も出来た。こうやって一度落ち着くと、何をそんなに悲観していたのかという気になる。――まだ大丈夫、頑張れる。私は、成己さんに向き直り、頭を下げた。
「ありがとうございました。長い時間、付き合って頂いて」
「えっ、そんなそんな……気にせんでええのに」
「や……なんか、超泣いちゃって。恥ずかしいです」
それは、わりとガチで。
落ちつくと、さんざん泣きわめいたことが照れくさい。でもさ、照れてモゴモゴすると、いよいよガキみたいで恥ずかしいから、「気にしてませんよ」体を貫くことにする。
成己さんは目を丸くして、にっこりした。
「ふふ。近頃の子って、えらい我慢強いんやねえ。ぼくなんか大人やけど、旦那さんに甘えっぱなし、泣きっぱなしですよ」
「いやいや、成己さんは可愛いから大丈夫です」
「ありがとうねえ。ほな、玻璃さんも可愛いから大丈夫ですっ」
胸元で拳を握って、励まされてしまった。
「可愛い」とか、言われた事ないタイプの褒め言葉だなって、思う。
流石にまごついていると、成己さんはまたニコニコしてる。
その嘘や虚飾を感じない、自然体の笑みを見ていると、自然と肩が下がる気がした。和むというか、力が抜けるというか……
――でも……良い人だな。なんで、この人を捨ててうちの兄に走ったの? 城山さんって、ほんと意味わからん……
本気で城山さんの趣味を疑いつつ、私はひとつ咳払いした。
おかげで、私は自分の感情に没頭できた。
ただ、泣いて。泣いて――これ以上は涙を絞り出せない、ってところまで、泣きまくった。
「……はぁ」
涙を拭い、息を吐く。
「どうやって止めるんだ?」と思ったけど、泣くだけ泣けば涙って止まるもんだった。
久々過ぎて、忘れてた。
「……ありがとうございます」
すうと息を吸って背筋を伸ばすと、成己さんが小さな声で問う。
「だいじょうぶ?」
「……はい、もう平気です」
心配そうな大きな目に、にこっと笑って見せると、涙で頬が突っ張った。成己さんは新しいハンカチを取り出し、「どうぞ」って渡してくれる。
「だ、大丈夫です……! 新しいのまで汚すわけには」
「ふふっ。遠慮せんといてください。こんなん、お洗濯したらええんですから」
「ぎゃっ」
まふ、と問答無用にやわらかい布を頬に押し当てられる。
「……すみません、お借りします」
「どうぞ、どうぞ」
小さい子を見るような開け放しの笑顔に見守られ、頬が熱くなった。――こんなに子ども扱いされるの、いつぶりだろうか。むず痒い気持ちで頬を拭う。
――でも、なんかスッキリしたかも……
涼やかな風が吹き抜けて、庭の木々がさやさやと音を立てた。草花の匂いと湿った土の匂いがする。もう一度、息を吸い込むと、胸の奥が清々しくなった。
私が落ち着いたのを見て取って、やわらかな声がかけられる。
「良い風ですねぇ」
「……はい」
庭を見る余裕も出来た。こうやって一度落ち着くと、何をそんなに悲観していたのかという気になる。――まだ大丈夫、頑張れる。私は、成己さんに向き直り、頭を下げた。
「ありがとうございました。長い時間、付き合って頂いて」
「えっ、そんなそんな……気にせんでええのに」
「や……なんか、超泣いちゃって。恥ずかしいです」
それは、わりとガチで。
落ちつくと、さんざん泣きわめいたことが照れくさい。でもさ、照れてモゴモゴすると、いよいよガキみたいで恥ずかしいから、「気にしてませんよ」体を貫くことにする。
成己さんは目を丸くして、にっこりした。
「ふふ。近頃の子って、えらい我慢強いんやねえ。ぼくなんか大人やけど、旦那さんに甘えっぱなし、泣きっぱなしですよ」
「いやいや、成己さんは可愛いから大丈夫です」
「ありがとうねえ。ほな、玻璃さんも可愛いから大丈夫ですっ」
胸元で拳を握って、励まされてしまった。
「可愛い」とか、言われた事ないタイプの褒め言葉だなって、思う。
流石にまごついていると、成己さんはまたニコニコしてる。
その嘘や虚飾を感じない、自然体の笑みを見ていると、自然と肩が下がる気がした。和むというか、力が抜けるというか……
――でも……良い人だな。なんで、この人を捨ててうちの兄に走ったの? 城山さんって、ほんと意味わからん……
本気で城山さんの趣味を疑いつつ、私はひとつ咳払いした。
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