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第六章~鳥籠の愛~
三百九十二話【SIDE:宏章】
「へえ、店長と成ちゃんに救われて!」
「はい。トラブルに巻き込まれ、困っていましたところを……お二人は私の命の恩人なんです」
穏やかに相槌を打つ宍倉さんに、杉田さんが感激したように手を叩いた。
「えらいじゃない、店長。人情だねえ」
「すごーい!」
店中から熱い瞳を向けられて困惑する。人が倒れていたら助けるのは、当たり前のことだ。成だって、そう言うだろうし……俺ばかり褒められて、ちょっときまりが悪い。
ぽりぽりと頬をかきつつ、宍倉さんの様子を窺う。
「いやあ、袖振り合うも……ってやつですよ。宍倉さん、お元気で会いに来てくださって、嬉しいです」
「本当に、お世話になりました。ありがとうございます」
そっと目を伏せて、宍倉さんは会釈する。
意味深なご登場のわりに、彼は何のアクションを起こすことはなかった。
『本当にありがとうございました。奥様にもよろしくお伝えください』
綺麗に一礼し、百貨店の包装を施された菓子折りを渡されたのが、十数分前。
現在は、普通にコーヒーを飲み、ケーキをつつき……隣の杉田さんや、周囲のお客さんと和やかに会話を交わしている。
その姿は、喫茶店に憩いを求めてやってきたお客さんそのもので、俺はすっかり拍子抜けしてしまう。
「店長、コーヒーおかわりちょうだい」
「はい、喜んで」
お客さんに呼ばれ、コーヒーのおかわりを注いでまわる。
カウンターに戻れば、ふと顔を上げた宍倉さんと目が合った。――穏やかな微笑がおくられ、反射的に笑みを返す。あんなとんでもない動画を渡してくる男と思えない、人畜無害の笑みだ。
「美味しいです。ケーキが日替わりなんて、面白いですね」
「ありがとうございます。いやあ、自分の食いたいものを、そのときどき作ってる感じで……」
「へえ! 通う楽しみが出来ますね」
宍倉さんは、芋のシフォンをフォークで一口切り、口に運んだ。
「そうなんだよ、宍倉くん。店長の罠にかかって、僕はこのざまさ」
「杉田さん、長く通われてるんですか」
「そうそう。ここの前の店で、彼がバイトしてるときからね……」
杉田さんは、宍倉さんを気に入ったらしい。ずっと話しかけて、宍倉さんの方もまた、愛想よく相槌を打っている。
宍倉さんは時折、こちらにも会話のボールを投げてきたが、どれも当たり障りのないものだった。
――……ああ、なるほど。
今日は単に、様子見に来たのかもしれん。
考えてみれば、そうだよな。彼の用件が、あの動画に関してのことならば、これだけ人目のある所で出来るはずはなかった。
――何だよ~……俺だけ妙に盛り上がっちまったじゃねえか。
探偵気取りの自分が無性にこっぱずかしくなり、咳払いをする。
でも、仕方ないだろう。
あんな動画を……どういうつもりで成に渡して来たのか。こちらの事情をわかっていると示し、何がしたいのか。
ずっと気になっていたんだ。
――どうも、成のこととなると……気が逸るのを止められないな。
「はい。トラブルに巻き込まれ、困っていましたところを……お二人は私の命の恩人なんです」
穏やかに相槌を打つ宍倉さんに、杉田さんが感激したように手を叩いた。
「えらいじゃない、店長。人情だねえ」
「すごーい!」
店中から熱い瞳を向けられて困惑する。人が倒れていたら助けるのは、当たり前のことだ。成だって、そう言うだろうし……俺ばかり褒められて、ちょっときまりが悪い。
ぽりぽりと頬をかきつつ、宍倉さんの様子を窺う。
「いやあ、袖振り合うも……ってやつですよ。宍倉さん、お元気で会いに来てくださって、嬉しいです」
「本当に、お世話になりました。ありがとうございます」
そっと目を伏せて、宍倉さんは会釈する。
意味深なご登場のわりに、彼は何のアクションを起こすことはなかった。
『本当にありがとうございました。奥様にもよろしくお伝えください』
綺麗に一礼し、百貨店の包装を施された菓子折りを渡されたのが、十数分前。
現在は、普通にコーヒーを飲み、ケーキをつつき……隣の杉田さんや、周囲のお客さんと和やかに会話を交わしている。
その姿は、喫茶店に憩いを求めてやってきたお客さんそのもので、俺はすっかり拍子抜けしてしまう。
「店長、コーヒーおかわりちょうだい」
「はい、喜んで」
お客さんに呼ばれ、コーヒーのおかわりを注いでまわる。
カウンターに戻れば、ふと顔を上げた宍倉さんと目が合った。――穏やかな微笑がおくられ、反射的に笑みを返す。あんなとんでもない動画を渡してくる男と思えない、人畜無害の笑みだ。
「美味しいです。ケーキが日替わりなんて、面白いですね」
「ありがとうございます。いやあ、自分の食いたいものを、そのときどき作ってる感じで……」
「へえ! 通う楽しみが出来ますね」
宍倉さんは、芋のシフォンをフォークで一口切り、口に運んだ。
「そうなんだよ、宍倉くん。店長の罠にかかって、僕はこのざまさ」
「杉田さん、長く通われてるんですか」
「そうそう。ここの前の店で、彼がバイトしてるときからね……」
杉田さんは、宍倉さんを気に入ったらしい。ずっと話しかけて、宍倉さんの方もまた、愛想よく相槌を打っている。
宍倉さんは時折、こちらにも会話のボールを投げてきたが、どれも当たり障りのないものだった。
――……ああ、なるほど。
今日は単に、様子見に来たのかもしれん。
考えてみれば、そうだよな。彼の用件が、あの動画に関してのことならば、これだけ人目のある所で出来るはずはなかった。
――何だよ~……俺だけ妙に盛り上がっちまったじゃねえか。
探偵気取りの自分が無性にこっぱずかしくなり、咳払いをする。
でも、仕方ないだろう。
あんな動画を……どういうつもりで成に渡して来たのか。こちらの事情をわかっていると示し、何がしたいのか。
ずっと気になっていたんだ。
――どうも、成のこととなると……気が逸るのを止められないな。
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