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第六章~鳥籠の愛~
四百七話【SIDE:宏章】
「ならば……私に出来ることはないということですか? むざむざ放逐され、あの方の役に立つことも出来ないというのに」
項垂れた青年に、俺は近づく。
「いいえ。あなたにしか出来ないことがある。――ただ、若さんの側に居てあげることです。側近としてじゃなく、信頼できる大人として」
「……!」
宍倉さんの目が、見ひらかれる。そういう顔をするとあどけないが、まだ表情には張り詰めた危うさがある。
俺は乾いた唇を舐め、慎重に言葉を選び、話した。
「お二人は、蓑崎の家で支え合ってきたんでしょう? 味方のいない場所で、互いの能力と真心を頼みにして……俺は、離れたらいけないと思います。とりわけ――まだお若い玻璃さんにとって、あなたはかけがえない存在のはずでしょう」
玉砕覚悟の復讐など、やめて欲しい――
お節介だと知りつつも、言わずにはいられなかった。宍倉さんが、若さんの為に彼女の家を滅ぼそうというのなら、尚更。
俺は、宍倉さんの肩を掴んだ。強張った顔が、俺を見返す。
「家を失い、あなたまで失って……玻璃さんに何が残るんです? 一人の可哀想な子供が、途方に暮れるだけだ」
いくら俊才でも、彼女は子供だ。大人のあなたが本気で歩いたら、追いつけなくなる。
追いつけないと知っていて置いていくことが、どれだけ残酷なことか……気づいてあげてほしかった。
宍倉さんは、大きく瞳を揺らす。それから――ひび割れた声で、呟いた。
「……しかし。それでは、彼らが笑うだけではないのですか。なんの罰もなければ、彼らだけ無傷のままだ。若様の痛みも知らず、あなたの奥方の喪失も知らず……のうのうと生きていくのですよ。それも――「さして幸福ではない」という顔で!」
話すうちに激してゆき、片腕で空を薙ぎ払う。手を振り払われ、俺は一歩後退した。
「そんなことは許せません。私は……何もせずに見ていることなど、出来ない!」
荒い息を吐き、肩を震わせる彼を、悲しい気持ちで見やる。
「……大人のあなたが決めたことを、俺が覆せるとは思っていません。いずれにせよ、後悔のないようにしてほしいだけです」
俺は、息を吐く。ポケットから取り出したメモリーカードを、そっとテーブルに置いた。
「玻璃さんのことはお引き受けしましょう。――ですが、これはお返しします。この動画で彼を不幸にすることは……きっと、成が望みませんから」
「……」
宍倉さんは、黙っていた。手を伸べて、カードを回収すると懐に仕舞う。素早く荷物をまとめ、鞄に仕舞っていく。
「お時間を取って頂き、誠にありがとうございました。若様のこと、どうかよろしくお願いいたします」
「宍倉さん」
「ですが……私にはわかりません」
そう呟き、美しい礼をした彼は去って行った。
項垂れた青年に、俺は近づく。
「いいえ。あなたにしか出来ないことがある。――ただ、若さんの側に居てあげることです。側近としてじゃなく、信頼できる大人として」
「……!」
宍倉さんの目が、見ひらかれる。そういう顔をするとあどけないが、まだ表情には張り詰めた危うさがある。
俺は乾いた唇を舐め、慎重に言葉を選び、話した。
「お二人は、蓑崎の家で支え合ってきたんでしょう? 味方のいない場所で、互いの能力と真心を頼みにして……俺は、離れたらいけないと思います。とりわけ――まだお若い玻璃さんにとって、あなたはかけがえない存在のはずでしょう」
玉砕覚悟の復讐など、やめて欲しい――
お節介だと知りつつも、言わずにはいられなかった。宍倉さんが、若さんの為に彼女の家を滅ぼそうというのなら、尚更。
俺は、宍倉さんの肩を掴んだ。強張った顔が、俺を見返す。
「家を失い、あなたまで失って……玻璃さんに何が残るんです? 一人の可哀想な子供が、途方に暮れるだけだ」
いくら俊才でも、彼女は子供だ。大人のあなたが本気で歩いたら、追いつけなくなる。
追いつけないと知っていて置いていくことが、どれだけ残酷なことか……気づいてあげてほしかった。
宍倉さんは、大きく瞳を揺らす。それから――ひび割れた声で、呟いた。
「……しかし。それでは、彼らが笑うだけではないのですか。なんの罰もなければ、彼らだけ無傷のままだ。若様の痛みも知らず、あなたの奥方の喪失も知らず……のうのうと生きていくのですよ。それも――「さして幸福ではない」という顔で!」
話すうちに激してゆき、片腕で空を薙ぎ払う。手を振り払われ、俺は一歩後退した。
「そんなことは許せません。私は……何もせずに見ていることなど、出来ない!」
荒い息を吐き、肩を震わせる彼を、悲しい気持ちで見やる。
「……大人のあなたが決めたことを、俺が覆せるとは思っていません。いずれにせよ、後悔のないようにしてほしいだけです」
俺は、息を吐く。ポケットから取り出したメモリーカードを、そっとテーブルに置いた。
「玻璃さんのことはお引き受けしましょう。――ですが、これはお返しします。この動画で彼を不幸にすることは……きっと、成が望みませんから」
「……」
宍倉さんは、黙っていた。手を伸べて、カードを回収すると懐に仕舞う。素早く荷物をまとめ、鞄に仕舞っていく。
「お時間を取って頂き、誠にありがとうございました。若様のこと、どうかよろしくお願いいたします」
「宍倉さん」
「ですが……私にはわかりません」
そう呟き、美しい礼をした彼は去って行った。
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