いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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第六章~鳥籠の愛~

四百十八話

 日々は、和やかに過ぎていった。
 宏ちゃんのお仕事のお手伝いをしたり、お店の新しいメニューに頭を捻ったり。最近、若い女性のお客様が増えて、うさぎやはますます盛況になってるん。ありがたいよね!
  
「すみません、コーヒーおかわりいいですか?」
「はい。少々お待ちくださいねっ」
 
 手を上げた玻璃さんに、笑顔で応じる。
 あれから、玻璃さんはよくお店に来てくれはるようになったんよ。お一人やったり、お友達と一緒に来てくれることもあるん。今日は、一人で来てくれはって。
 
「やっぱり、全章シリーズのテーマは立身出世と思ってますね! 全章って、仕事と金と良い女。全部揃えてるじゃないですか?」
 
 玻璃さんのきりっとした顔に、溌溂とした笑みが浮かんでいる。
 
「かっこいいですよね。幼なじみの許嫁をずっと思ってて……! ついに結婚したときは、泣いちゃいました」
「わかります。夢見がちとか言う奴もいますけど、私、桜庭はそういうロマンから逃げないとこがかっこいいと思っててー」
 
 桜庭先生のことを、たくさんお話してくれるん!
 すごく熱い同志の登場が嬉しくて、ぼくも彼女と話すのが楽しみで仕方なかったりする。やっぱり、同志の作品語りからしか得られへん、栄養分てあるやないですか。
 
「でね、成己さん。あのシーンが、こないだの事件の伏線になってたんですよ」
「えーっ! そうやったんですか? もう一回読み直さなくちゃ」
「ぜひぜひ、復習してくださいね?」
 
 鋭い考察にのけぞるぼくに、玻璃さんは得意げに胸を張った。
 大人っぽい子やけど、桜庭先生のことを話している時は年相応の女の子って感じなん。いきいきと話す様子を見ると、なんだかホッとする。
  
 ――静子さんのお宅でお会いしたときは、すごく張り詰めていて……心配やったん。 
 
 二回目にお店に来てくれたとき、お話を聞いたんやけどね。
 宍倉さんは、玻璃さんのお兄さんみたいな人で。そんな彼と離れ離れになって、ずっと心配してはったんやって。ここで再会して、連絡を取り合っているから、「今は大丈夫」って笑っていたけれど。
 
 ――ぼくよりずっと小さいのに……
  
 頑張り屋さんほど、辛いことに気づけへんかったりするんかもしれへん。我慢の限界が来て、どうしていいか分からへんみたいに、泣いてるのを見ると、胸が痛くて仕方なかった。
 子どもには毎日にこにこして、楽しく過ごしていて欲しいって思う。
 大人のエゴかもしれへんけど、本心なん。
 
「玻璃さん、メレンゲ焼きのおかわりはどうですか? 今日はお客さん少ないから、ようけあるんですよ」
「あ、嬉しいです。頂きます!」
 
 からりと歯を見せて笑う玻璃さんに、ぼくもにっこりした。
 
 
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