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第七章~おごりの盾~
四百二十八話【SIDE:晶】
玻璃は、白けた調子で髪を耳にかけている。あまりに勝手な言い分に、絶句してしまった。
――それは、勝手に予定を入れられたら……会わないなんて、失礼だからに決まってるだろ?!
なんで、そんな当たり前のことがわかんないんだ? 本当に後継者教育受けてんのかよ、と呆然とする。
玻璃の奴は、俺の呆れにも気づかず、さっさと話しを切り上げはじめた。
「お話はそれだけです。朝早くに申し訳ありませんでした」
「ちょっと、待てよ。俺に全部押し付けようなんて」
「椹木さんは、お兄様の婚約者でしょう? お兄様からお話するのが筋だと思います。ああそうだ、今夜はお父様のお帰りも遅いそうですので」
えらそうに顎を突きあげ、踵を返し部屋を出て行く。その後を、あいつのお追従係の使用人が、小走りについて行った。
俺は、わなわなと震えた。
――あいつ、マジで信じらんないんだけど……?! なんで、あんなに勝手なんだよ!
憤懣やるかたなく拳を振り上げて、マットに叩きつける。
玻璃の奴――最近は、大人しくしていると思っていたのに。この頃、生意気さを取り戻してきてるじゃないか。
使用人たちが、「晶様」とオロオロしているが、きにかけてやる余裕もない。
「俺が、なんで椹木さんとっ……二人で、飯なんか」
口にして……顔がカッと熱くなり、息が詰まる。
――俺はただ、新しい抑制剤について知りたかっただけだ。それなのに、なんであの人と会うことになるんだよ!?
椹木製薬――あの人のラボから、新薬が発表されたと聞いて、興味を持った。
別に、あの人の薬だからじゃない。オメガなら、抑制剤については人よりも敏感になるだけだ。
薬のことを知りたいだけで、あの人に会いたいなんて、思ってないのに。
――『晶くん』
鋭い眼差しが穏やかに細まるのを思い出し、じくりと下腹が疼く。
「……ああ、もう!」
考えているのが嫌になって、ベッドを下りる。――ともかく、大学に行くために身支度を整えなければ。髪を乱暴にかき乱し、はあとため息を吐く。
オーバーサイズのTシャツを脱ぎ捨てると、痩せた体が露わになった。
「……っ!」
何の変哲もない男の体だった。なのに、使用人たちが息を飲むのが聞こえ、うんざりしつつ服を着こむ。
それからいつもの習慣で、テーブルの上にある抑制剤を一錠取り、ペットボトルのミネラルウォーターで飲み下した。
――どうせ効かないけど、飲まないよりはマシだからな……
口を拭い、思う。
二次性徴が始まってすぐ、俺は抑制剤を飲み始めた。
まだヒートの兆候はなかったけれど、フェロモンの香りが変わったと周囲に指摘され……来るのは時間の問題だと思った。
毎日、欠かさず三錠。ヒートが来る前に服用すると、抑制剤が効かなくなる恐れがあると止められても、無理だった。
ヒートが、来てほしくなかった。
そのときには、すでに後継者から外されていたけれど……俺は、一度は肩を並べていたアルファたちに、オメガとして品定めされることは耐えられなかったから。
――それは、勝手に予定を入れられたら……会わないなんて、失礼だからに決まってるだろ?!
なんで、そんな当たり前のことがわかんないんだ? 本当に後継者教育受けてんのかよ、と呆然とする。
玻璃の奴は、俺の呆れにも気づかず、さっさと話しを切り上げはじめた。
「お話はそれだけです。朝早くに申し訳ありませんでした」
「ちょっと、待てよ。俺に全部押し付けようなんて」
「椹木さんは、お兄様の婚約者でしょう? お兄様からお話するのが筋だと思います。ああそうだ、今夜はお父様のお帰りも遅いそうですので」
えらそうに顎を突きあげ、踵を返し部屋を出て行く。その後を、あいつのお追従係の使用人が、小走りについて行った。
俺は、わなわなと震えた。
――あいつ、マジで信じらんないんだけど……?! なんで、あんなに勝手なんだよ!
憤懣やるかたなく拳を振り上げて、マットに叩きつける。
玻璃の奴――最近は、大人しくしていると思っていたのに。この頃、生意気さを取り戻してきてるじゃないか。
使用人たちが、「晶様」とオロオロしているが、きにかけてやる余裕もない。
「俺が、なんで椹木さんとっ……二人で、飯なんか」
口にして……顔がカッと熱くなり、息が詰まる。
――俺はただ、新しい抑制剤について知りたかっただけだ。それなのに、なんであの人と会うことになるんだよ!?
椹木製薬――あの人のラボから、新薬が発表されたと聞いて、興味を持った。
別に、あの人の薬だからじゃない。オメガなら、抑制剤については人よりも敏感になるだけだ。
薬のことを知りたいだけで、あの人に会いたいなんて、思ってないのに。
――『晶くん』
鋭い眼差しが穏やかに細まるのを思い出し、じくりと下腹が疼く。
「……ああ、もう!」
考えているのが嫌になって、ベッドを下りる。――ともかく、大学に行くために身支度を整えなければ。髪を乱暴にかき乱し、はあとため息を吐く。
オーバーサイズのTシャツを脱ぎ捨てると、痩せた体が露わになった。
「……っ!」
何の変哲もない男の体だった。なのに、使用人たちが息を飲むのが聞こえ、うんざりしつつ服を着こむ。
それからいつもの習慣で、テーブルの上にある抑制剤を一錠取り、ペットボトルのミネラルウォーターで飲み下した。
――どうせ効かないけど、飲まないよりはマシだからな……
口を拭い、思う。
二次性徴が始まってすぐ、俺は抑制剤を飲み始めた。
まだヒートの兆候はなかったけれど、フェロモンの香りが変わったと周囲に指摘され……来るのは時間の問題だと思った。
毎日、欠かさず三錠。ヒートが来る前に服用すると、抑制剤が効かなくなる恐れがあると止められても、無理だった。
ヒートが、来てほしくなかった。
そのときには、すでに後継者から外されていたけれど……俺は、一度は肩を並べていたアルファたちに、オメガとして品定めされることは耐えられなかったから。
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