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第七章~おごりの盾~
四百三十三話【SIDE:晶】
「家を空けることが多かったのは、この研究を何としても完遂したかったからです。君のことを、ずっと想っていました」
「そんな……」
呟いた声は、掠れていた。
――まさか、そんな。この人が、俺を想っているはずない。
俺は、椹木さんを睨んだ。
「……信じられません」
「晶くん」
「いきなり、そんなことを言われても……」
婚約してから、ずっと俺に関心がなかったじゃないか。ずっと忙しくしていて、発情期以外は会いにも来なかったくせに。それで、今さら好きだなんて、信じられるはずがない。
「ずっと、俺は一人だったんです。家同士の冷たい婚約だと思っていて……だから、頼れなかったのに」
俺が留学に行くと言っても、一つ返事で送り出して。一緒に住んでいても、ひと月にいちど顔を合わせるばかりの婚約者。そんな人を頼れるはずもなくて、俺は陽平とこんなことに……
わなわなと震える手を握り合わせて、じっと睨みつけていると……椹木さんは、目を伏せた。
「君のいう通りです。私は、抑制剤の開発に夢中になるあまり……君に対して、誠実な婚約者ではありませんでした。すみません。君の枷になりたくなかった……いえ。単に、嫌われるのが怖かったのかもしれません」
「……怖い?」
大人らしくない言葉に、問い返す。
「年上の婚約者が出来て、君は辛いだろうと。顔を合わせないでいた方が、お互いの為だろうと思い込んでいたんです」
「そんな……そんなの、勝手です。俺は……!」
感情が激し、椅子を蹴倒すように立ち上がった。驚く椹木さんにズカズカと歩みより、胸倉を掴んだ。
「俺は、あんたに疎まれてるんだと……一人で、どれだけ辛かったか。初めてのヒートの後も、急にいなくなって」
「!」
この人と婚約して、初めてヒートを迎えた日のことを思い出す。
ずっと会っていなかったのに、久しぶりに顔を合わせたせいか、アルファのフェロモンに誘発されたんだ。緊急抑制剤を打っても効果が無くて――二進も三進もいかなかった俺は、ホテルに連れていかれ、この人に抱かれたんだ。
熱に浮かされるような、一週間だった。
はじめて男を受け入れる恐怖も、強い快楽に押し流されて。必死に自分のアルファに縋りつき、淫らに振舞って。
『もっと、して……!』
『晶くん……』
求めれば求めるほど与えられる悦楽は、あらゆる喜びを制限されて育った俺には、刺激が強すぎるほどだった。
体内に何度も熱い飛沫を受けて、「汚さないで」と泣きながらも……体は満たされる恍惚に痺れていた。
汗だくの体を抱きしめ、気高い白檀の香りに包まれると、もうどうなってもいいような気がして。なのに、
「朝になったら、いなくて。初めてだったのに、一人で置いて行かれた気持ちがわかるのかよ。留学に行くって言っても、止めもしないで……!!」
「そんな……」
呟いた声は、掠れていた。
――まさか、そんな。この人が、俺を想っているはずない。
俺は、椹木さんを睨んだ。
「……信じられません」
「晶くん」
「いきなり、そんなことを言われても……」
婚約してから、ずっと俺に関心がなかったじゃないか。ずっと忙しくしていて、発情期以外は会いにも来なかったくせに。それで、今さら好きだなんて、信じられるはずがない。
「ずっと、俺は一人だったんです。家同士の冷たい婚約だと思っていて……だから、頼れなかったのに」
俺が留学に行くと言っても、一つ返事で送り出して。一緒に住んでいても、ひと月にいちど顔を合わせるばかりの婚約者。そんな人を頼れるはずもなくて、俺は陽平とこんなことに……
わなわなと震える手を握り合わせて、じっと睨みつけていると……椹木さんは、目を伏せた。
「君のいう通りです。私は、抑制剤の開発に夢中になるあまり……君に対して、誠実な婚約者ではありませんでした。すみません。君の枷になりたくなかった……いえ。単に、嫌われるのが怖かったのかもしれません」
「……怖い?」
大人らしくない言葉に、問い返す。
「年上の婚約者が出来て、君は辛いだろうと。顔を合わせないでいた方が、お互いの為だろうと思い込んでいたんです」
「そんな……そんなの、勝手です。俺は……!」
感情が激し、椅子を蹴倒すように立ち上がった。驚く椹木さんにズカズカと歩みより、胸倉を掴んだ。
「俺は、あんたに疎まれてるんだと……一人で、どれだけ辛かったか。初めてのヒートの後も、急にいなくなって」
「!」
この人と婚約して、初めてヒートを迎えた日のことを思い出す。
ずっと会っていなかったのに、久しぶりに顔を合わせたせいか、アルファのフェロモンに誘発されたんだ。緊急抑制剤を打っても効果が無くて――二進も三進もいかなかった俺は、ホテルに連れていかれ、この人に抱かれたんだ。
熱に浮かされるような、一週間だった。
はじめて男を受け入れる恐怖も、強い快楽に押し流されて。必死に自分のアルファに縋りつき、淫らに振舞って。
『もっと、して……!』
『晶くん……』
求めれば求めるほど与えられる悦楽は、あらゆる喜びを制限されて育った俺には、刺激が強すぎるほどだった。
体内に何度も熱い飛沫を受けて、「汚さないで」と泣きながらも……体は満たされる恍惚に痺れていた。
汗だくの体を抱きしめ、気高い白檀の香りに包まれると、もうどうなってもいいような気がして。なのに、
「朝になったら、いなくて。初めてだったのに、一人で置いて行かれた気持ちがわかるのかよ。留学に行くって言っても、止めもしないで……!!」
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