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第一部 決闘大会編
百九十七話
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「吉村くん、どうしたかな?」
「す、すんません」
顔を上げると、加藤先生が板書を止めて、こっちを見ていた。俺は慌てて、シャーペンを握りなおす。
――ズキッ。
額に痛みが走って、「うっ」と呻く。
加藤先生は、心配そうに眉を寄せた。
「――具合が悪そうだね。医務室に行ってきなさい」
「うう……はい。すみません」
俺はお言葉に甘えて、教室を出た。
昨夜、記憶がぐるぐる戻ってから、ずっとこうだ。頭がズキッてなったと思ったら、ツギハギに記憶が戻ってくる。
「参ったなあ」
廊下をえっちらおっちら歩きながら、一人ごちる。記憶、なくても困んないことは、覚えてなくてもいいんじゃね?
それに――まだ、なんも整理できてねえのに。
思い返すのは、例の写真。俺を突き落とした奴と、一緒に写ってた白井さん。
イノリの写真でいっぱいのアルバムを、俺に渡したのもあの人なんだよな。
正直、この情報をどうしたらいいのか困ってる。
白井さんは、親切な人だと思う。
でも、俺を突き落とした奴の、友だちでもあって。
「ううう……」
いかん、頭がぐるぐる回ってきた。ともかく、医務室に急ごう……
「お大事にねえ」
「ありがとうございました」
俺はペコリと頭を下げて、医務室の扉を閉めた。米神を擦ると、ちょっぴり痛いのがやわらぐ。
田野先生いわく、ちょっと魔力の流れが乱れてるらしい。
「よく寝て、たくさん食べたら治るからね」
とのことだ。
てくてくと校庭を歩いていると、窓から授業してる声が聞こえてくる。
天気がよくて、風が気持ちいい。
ちょっとだけ、ゆっくりしてから授業に戻ろうかな……。
そう思って、校庭をのんびり歩いていると。
「あれ。お前……」
「へっ?」
花壇のブロックの上に、健太さんが腰かけていた。昼メシを食っていたみたいで、コンビニの袋が傍らに置かれている。
「ええと、こんにちは」
「まだ授業中なのに、何やってんだ?」
かくかくしかじかと説明すると、健太さんは「ふうん」と頷いて。傍らのコンビニ袋から、でっかいおにぎりを取り出した。
「お前も食う? キンパとかもあっけど」
「へっ?! いやいや、お気持ちだけでっ」
慌てて、ブンブンと首を振る。
健太さんは「そうか」って、おにぎりを引っ込めた。
「――そういやさ。昨日は、悪かった」
「えっ」
健太さんは、眉を下げている。
「俺、かなり一方的に言ったから。草一さんに怒られて、目が覚めた。すまん」
「あっ、そんな。いやいや、気にしねぇでください……」
急展開に、俺はおろおろと両手を振った。すると、健太さんが罰が悪そうに咳払いする。
「言い訳すっとさ。……前にも、警備情報漏洩したやつがいて。そのせいで、仲間がかなり辞めたんだ。それで、全部疑わしく見えてた……」
「い、いやいや」
そうだったのか……。重い事情に、ごくりと唾を飲んだ。
「まあ、でも。気を付けた方が、良いことはいいんだ」
健太さんはあぐあぐとおにぎりを口に詰めこんで、言う。
「俺が言えた話じゃねーけど。お前、こないだ真帆はそんなんしねぇって言いきったろ?」
「はい」
俺は、こくりと頷いた。
「でもな、気を付けろ。そんなことしねぇって、思ってても。――いい奴だって、普通に人をだますから」
ぽつぽつと、話していたけど――健太さんは、すごく辛そうに見えた。
それで、俺は。
頷くことも、首を振ることも出来なかった。
「す、すんません」
顔を上げると、加藤先生が板書を止めて、こっちを見ていた。俺は慌てて、シャーペンを握りなおす。
――ズキッ。
額に痛みが走って、「うっ」と呻く。
加藤先生は、心配そうに眉を寄せた。
「――具合が悪そうだね。医務室に行ってきなさい」
「うう……はい。すみません」
俺はお言葉に甘えて、教室を出た。
昨夜、記憶がぐるぐる戻ってから、ずっとこうだ。頭がズキッてなったと思ったら、ツギハギに記憶が戻ってくる。
「参ったなあ」
廊下をえっちらおっちら歩きながら、一人ごちる。記憶、なくても困んないことは、覚えてなくてもいいんじゃね?
それに――まだ、なんも整理できてねえのに。
思い返すのは、例の写真。俺を突き落とした奴と、一緒に写ってた白井さん。
イノリの写真でいっぱいのアルバムを、俺に渡したのもあの人なんだよな。
正直、この情報をどうしたらいいのか困ってる。
白井さんは、親切な人だと思う。
でも、俺を突き落とした奴の、友だちでもあって。
「ううう……」
いかん、頭がぐるぐる回ってきた。ともかく、医務室に急ごう……
「お大事にねえ」
「ありがとうございました」
俺はペコリと頭を下げて、医務室の扉を閉めた。米神を擦ると、ちょっぴり痛いのがやわらぐ。
田野先生いわく、ちょっと魔力の流れが乱れてるらしい。
「よく寝て、たくさん食べたら治るからね」
とのことだ。
てくてくと校庭を歩いていると、窓から授業してる声が聞こえてくる。
天気がよくて、風が気持ちいい。
ちょっとだけ、ゆっくりしてから授業に戻ろうかな……。
そう思って、校庭をのんびり歩いていると。
「あれ。お前……」
「へっ?」
花壇のブロックの上に、健太さんが腰かけていた。昼メシを食っていたみたいで、コンビニの袋が傍らに置かれている。
「ええと、こんにちは」
「まだ授業中なのに、何やってんだ?」
かくかくしかじかと説明すると、健太さんは「ふうん」と頷いて。傍らのコンビニ袋から、でっかいおにぎりを取り出した。
「お前も食う? キンパとかもあっけど」
「へっ?! いやいや、お気持ちだけでっ」
慌てて、ブンブンと首を振る。
健太さんは「そうか」って、おにぎりを引っ込めた。
「――そういやさ。昨日は、悪かった」
「えっ」
健太さんは、眉を下げている。
「俺、かなり一方的に言ったから。草一さんに怒られて、目が覚めた。すまん」
「あっ、そんな。いやいや、気にしねぇでください……」
急展開に、俺はおろおろと両手を振った。すると、健太さんが罰が悪そうに咳払いする。
「言い訳すっとさ。……前にも、警備情報漏洩したやつがいて。そのせいで、仲間がかなり辞めたんだ。それで、全部疑わしく見えてた……」
「い、いやいや」
そうだったのか……。重い事情に、ごくりと唾を飲んだ。
「まあ、でも。気を付けた方が、良いことはいいんだ」
健太さんはあぐあぐとおにぎりを口に詰めこんで、言う。
「俺が言えた話じゃねーけど。お前、こないだ真帆はそんなんしねぇって言いきったろ?」
「はい」
俺は、こくりと頷いた。
「でもな、気を付けろ。そんなことしねぇって、思ってても。――いい奴だって、普通に人をだますから」
ぽつぽつと、話していたけど――健太さんは、すごく辛そうに見えた。
それで、俺は。
頷くことも、首を振ることも出来なかった。
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