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第一章 おけつの危機を回避したい
三十二話
しおりを挟む「シゲル、何してるんや?」
「はっ」
晴海の声に、スマホとにらめっこしてたおれは、びくっとした。スマホの画面を手で隠して、振り返る。
「はっ晴海。いつから居たん?」
「さっきの間や。お前こそどうした。えらい難しい顔してたで」
「なっ、何でもない!」
「そうか? 困ったことあるんやったら、言うんやぞ」
「うん! 大丈夫っ」
頷きながら、おれは「危なかったぁ」と胸を撫でおろす。
いま、お昼ご飯食べに被服室にいるんやけどな。校内放送で晴海が呼び出されて、「ちょっと行って来る」て席外したもんで、ラインしてたんよ。
相手は、竹っち。
おれは、鞄の中でこっそりスマホをいらって、「晴海来たから、また後でな!」と送信する。すぐにスタンプが届いたのを確認して、お弁当を持って晴海に駆け寄った。
――さっき、廊下で竹っちが言うたんは、予想通りの恋バナやったん。
「実は、気になる人が居てさあ。し、しかもこの学園の人なんだけど……」
もじもじしながら、竹っちは話してくれた。おれは「わあ、きた!」って思って、ワクワクしすぎひんように気をつけながら、話の続きを聞いたんよ。
竹っちが言うには、相手は年上の人で。愛野くんと揉めて、やり切れへん気持ちになってたときに、話し聞いてもらったんやって。
「俺のせいで有村も殴られちまって、罪悪感ヤバくてよ~。ウダウダ言ってんの、ずっとゆっくり聞いてくれて。あの人のことは、前から知ってたけど……こんな優しいとは思わんくてさあ」
竹っちは真っ赤な顔で、ニコニコしながら話しててな。きっと、「あの人」のことを思い出してるんやろうなって、微笑ましなった。
でも……それと同じくらい罪悪感や。上杉も教えてくれたけど、めっちゃ悩んでたんやなあ。でも、「気づけんくてごめん」って謝ったら、竹っちは笑って許してくれた。
「それより、今井。これから、ちょくちょく話し聞いてくんねえかな? 俺、あの人のこと気になるけど、まだ好きかどうか、わかんねえのよ」
「もちろんええよ! でも、おれでええの?」
そう聞き返したら「お前が適任だから」って言われて、ぱあっと嬉しくなったん。長い付き合いやけど、竹っちに頼られることってあんま無いからさ。ここで、日ごろのお返しや!
その後、おれらを探しに来た晴海と上杉と合流して、話はいったん終わってん。というのも、
「じゃ、また二人の時とかさ。ラインすっから、聞いてくれ」
「アイアイサー!」
竹っちは、この件は「まだよくわからんから、皆には内緒にしてほしい」んやって。いずれ、気持ちがハッキリしたら言うつもりらしい。
それまでは、これはおれの極秘ミッションってことや。――みんなの分も、竹っちの話を聞くで!
「ふふふ」
「おま、どないしたんや。さっきから、ずっと笑って」
お弁当食いながら、心の中でメラメラ燃えとったら、晴海にたじろがれた。
「はー、美味かった」
お腹さすって満足そうな晴海に、おれも思わず笑顔になる。
「ほんま、口の怪我ようなって良かったなぁ」
「ありがとうな。今日の玉子焼き、最高やったわ」
「ふふ。ほな明日も頑張って巻くわなっ」
「かたじけない……!」
キャッキャとふざけつつ、廊下を歩く。繋いだ手を振っとったら、晴海がふと言うた。
「なあ、竹っちがさあ」
「ふぇ?! 何?!」
「……いや。話し合いのこと、ええて言うてくれてよかったな、て」
「あ、ああ。そのことかあ……」
「他に何があんねんな?」
怪訝そうな晴海に、米神を冷や汗がつたう。
「イヤ、ナイケド!」
「ほお? まあええけど」
なんとか誤魔化して、胸を撫で下ろす。
……は、晴海にバレへんようにするんが、至難の業かも。でも、これも友情のためや。おれはやりとげるで!
すると、晴海は心配そうに眉を曇らせた。
「話し合い、緊張しとるんか?」
「えっ! それは、まあまあ……」
おれは、もごもごする。
今回は、本当におれのアホで失敗せえへんようにせな。皆も、色々思うとこあるやろうに、「話し合いオーケー」してくれたんやから……!
ふんす、と気合を入れるおれの傍ら、晴海は穏やかに言う。
「そんな気負わんで、大丈夫やて。シゲルだけが、運転しとる車ちゃうからな」
「……っうん! そうやな、晴海」
ぎゅっ、と手を握る。晴海、ありがとう。
足を止めて笑い合っとったら、「仲いいね」と声が。
がばっと振り向くと、優姫くんが呆れ半分の笑顔で立っとった。
デジャブ……!
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