52 / 112
第一章 おけつの危機を回避したい
五十二話
しおりを挟む
「よっしゃ。ちゃんとある」
被服室の棚の中を探りながら、晴海が明るい声を上げた。
背中にひっついて、手元を覗き込むと……ある。棚の仕切り板の裏に、セロテープで解毒剤が貼りつけられとった。
「おお。昨日貼ったまんまやね」
「大事なもんやから、見にこやなな。ほな、帰ろか」
納得したらしい晴海は、ひょいと手を差し出してきた。
「うんっ」
おれは笑って、ぎゅって手を握り返した。
なんかもう、普通に手を出してくれるなあ。おれも、手を繋ぐの好きやなって思うから、嬉しい……
――有村のこと、好きだから……
「はうっ!」
違うねん、好きっていうのは! おてて繋いで、歩くことがやからなっ。
心の中の竹っちに言い訳して、おれはゼイゼイと息を吐いた。
「どした?」
「な、何もない」
竹っちが変なこと言うから、妙に意識してしまう。
違うのに。晴海は、おれのだいじな幼馴染やもん。
やから……花火の事だって、普通に誘えるし!
「あのさ、晴海っ」
「ん?」
「あ、ええと。その……夕飯なんやろな」
「トンカツ食いたいなあ」
「願望?」
「願望」
真面目な顔で言われて、笑いがこみあげた。
「あほやなー」て言うたら、ヘッドロックをかまされてまう。そうやって、キャッキャふざけながら歩いとるうちに、食堂についてもた。
やっぱ、ごはんの時に言うで。
「あのさ、晴海!」
対面で、キャベツにソースかけてた晴海が目を上げた。
「おう。使うか?」
「あ。うん、かけてかけて」
お皿を押し出すと、晴海はおれのトンカツにソースをかけてくれた。
夕飯は、なんとトンカツやったん。大当たりやね。
晴海は丼飯をかっこんで、ぱくぱく食べとる。気持ちのいい食べっぷりで、清々しいわ。
ふと、唇の端に、ごはん粒を発見する。
「晴海、ほっぺにおべんとついてるで」
「ほ。どこ?」
「ちゃう。ここやし~」
ヒョイと摘んだら、晴海がぱっとほころんだ。
「ありがとうな」
「う、ううん」
照れ笑いされて、急に恥ずかしくなって俯いた。
ごはん粒を噛みながら、おれもほっぺが熱々になってまう。
や、やっぱ、お部屋に戻ってから、花火のこと言おう。――今言うたら、なんか変な感じになりそうやもん……
「へ、変な感じってなに?!」
「うおっ?! お前が何や?!」
叫びながら立ち上がると、晴海がぎょっと目を見開いた。
「で。どうしたんや?」
おれが、あんまり挙動不審やったからか。風呂上がりに、晴海の方から言うてきた。
「あうう」
「なんかあるんやろ? 言うてみ」
「晴海~!」
穏やかに聞かれて、じーんとする。優しい。
勇気を得たおれは、胡座をかく晴海の正面に座り直した
「えっとな。後夜祭の花火あるやん? あれを、一緒に見てほしいんやけど」
「ええよ」
「即答?!」
さらっと頷かれて、のけ反る。
「ええの? フラグ回避とかあるし、忙しいけど……」
「なに。花火の頃にはエンディングやし、平気やて。お姉さんも、エンディングは愛野が恋人と花火見るんやって言うてたしな」
「えっ? そうやった?」
目をまん丸にしたら、晴海が眉を上げる。
「おいおい、言うてはったやんか。なんでも、うちの花火は、ジンクスいうのがあるらしいぞ。恋人同士で見ると、ええことがあるんやと」
「ちょ、え。知ってたん?」
「おう」
こともなげに頷かれて、かえってうろたえる。
ちょっと待って。晴海、ジンクスのこと知ってて、一緒に見てくれるってこと……?
きゅう、と震えた胸元をおさえる。
――それって、どういう意味なんやろう。
ドキドキしながら、おれは口を開く。
「ええと……どうして?」
「ん?」
「なんで、おれと一緒に見てくれるん? みんなで見たほうが、楽しない?」
じっと、真っ黒い目を見つめる。晴海はきょとんとした後、目元を赤らめた。
「それは、ほら。お前は大事な幼馴染やから」
「……!」
そっか。
……そうやんな。
おれは唇を引き結んで、晴海の肩を突っついた。
「お、おい。どうした?」
「何もないっ。晴海は、優しいなあ」
「めっちゃ拗ねとるがな」
苦笑されて、うっと詰まる。
たしかに……せっかく、花火オーケーしてもろたのに、何してるんやろ。
でも、なんか悲しいねんもん。
「ごめん」
「シゲル……」
しょんぼりと俯くと、頭を撫でられた。あたたかな手つきに、目が潤む。
晴海は、「うーん」と唸った。
「すまん。さっきの、理由の半分や。ホンマはな……俺は、お前になんかしてやりたいねん」
「……なんで?」
「それはな、お前が俺の恩人やから」
おんじん?
予想外の言葉に、おれはあっけにとられた。
被服室の棚の中を探りながら、晴海が明るい声を上げた。
背中にひっついて、手元を覗き込むと……ある。棚の仕切り板の裏に、セロテープで解毒剤が貼りつけられとった。
「おお。昨日貼ったまんまやね」
「大事なもんやから、見にこやなな。ほな、帰ろか」
納得したらしい晴海は、ひょいと手を差し出してきた。
「うんっ」
おれは笑って、ぎゅって手を握り返した。
なんかもう、普通に手を出してくれるなあ。おれも、手を繋ぐの好きやなって思うから、嬉しい……
――有村のこと、好きだから……
「はうっ!」
違うねん、好きっていうのは! おてて繋いで、歩くことがやからなっ。
心の中の竹っちに言い訳して、おれはゼイゼイと息を吐いた。
「どした?」
「な、何もない」
竹っちが変なこと言うから、妙に意識してしまう。
違うのに。晴海は、おれのだいじな幼馴染やもん。
やから……花火の事だって、普通に誘えるし!
「あのさ、晴海っ」
「ん?」
「あ、ええと。その……夕飯なんやろな」
「トンカツ食いたいなあ」
「願望?」
「願望」
真面目な顔で言われて、笑いがこみあげた。
「あほやなー」て言うたら、ヘッドロックをかまされてまう。そうやって、キャッキャふざけながら歩いとるうちに、食堂についてもた。
やっぱ、ごはんの時に言うで。
「あのさ、晴海!」
対面で、キャベツにソースかけてた晴海が目を上げた。
「おう。使うか?」
「あ。うん、かけてかけて」
お皿を押し出すと、晴海はおれのトンカツにソースをかけてくれた。
夕飯は、なんとトンカツやったん。大当たりやね。
晴海は丼飯をかっこんで、ぱくぱく食べとる。気持ちのいい食べっぷりで、清々しいわ。
ふと、唇の端に、ごはん粒を発見する。
「晴海、ほっぺにおべんとついてるで」
「ほ。どこ?」
「ちゃう。ここやし~」
ヒョイと摘んだら、晴海がぱっとほころんだ。
「ありがとうな」
「う、ううん」
照れ笑いされて、急に恥ずかしくなって俯いた。
ごはん粒を噛みながら、おれもほっぺが熱々になってまう。
や、やっぱ、お部屋に戻ってから、花火のこと言おう。――今言うたら、なんか変な感じになりそうやもん……
「へ、変な感じってなに?!」
「うおっ?! お前が何や?!」
叫びながら立ち上がると、晴海がぎょっと目を見開いた。
「で。どうしたんや?」
おれが、あんまり挙動不審やったからか。風呂上がりに、晴海の方から言うてきた。
「あうう」
「なんかあるんやろ? 言うてみ」
「晴海~!」
穏やかに聞かれて、じーんとする。優しい。
勇気を得たおれは、胡座をかく晴海の正面に座り直した
「えっとな。後夜祭の花火あるやん? あれを、一緒に見てほしいんやけど」
「ええよ」
「即答?!」
さらっと頷かれて、のけ反る。
「ええの? フラグ回避とかあるし、忙しいけど……」
「なに。花火の頃にはエンディングやし、平気やて。お姉さんも、エンディングは愛野が恋人と花火見るんやって言うてたしな」
「えっ? そうやった?」
目をまん丸にしたら、晴海が眉を上げる。
「おいおい、言うてはったやんか。なんでも、うちの花火は、ジンクスいうのがあるらしいぞ。恋人同士で見ると、ええことがあるんやと」
「ちょ、え。知ってたん?」
「おう」
こともなげに頷かれて、かえってうろたえる。
ちょっと待って。晴海、ジンクスのこと知ってて、一緒に見てくれるってこと……?
きゅう、と震えた胸元をおさえる。
――それって、どういう意味なんやろう。
ドキドキしながら、おれは口を開く。
「ええと……どうして?」
「ん?」
「なんで、おれと一緒に見てくれるん? みんなで見たほうが、楽しない?」
じっと、真っ黒い目を見つめる。晴海はきょとんとした後、目元を赤らめた。
「それは、ほら。お前は大事な幼馴染やから」
「……!」
そっか。
……そうやんな。
おれは唇を引き結んで、晴海の肩を突っついた。
「お、おい。どうした?」
「何もないっ。晴海は、優しいなあ」
「めっちゃ拗ねとるがな」
苦笑されて、うっと詰まる。
たしかに……せっかく、花火オーケーしてもろたのに、何してるんやろ。
でも、なんか悲しいねんもん。
「ごめん」
「シゲル……」
しょんぼりと俯くと、頭を撫でられた。あたたかな手つきに、目が潤む。
晴海は、「うーん」と唸った。
「すまん。さっきの、理由の半分や。ホンマはな……俺は、お前になんかしてやりたいねん」
「……なんで?」
「それはな、お前が俺の恩人やから」
おんじん?
予想外の言葉に、おれはあっけにとられた。
41
あなたにおすすめの小説
転生したが陰から推し同士の絡みを「バレず」に見たい
むいあ
BL
俺、神崎瑠衣はごく普通の社会人だ。
ただ一つ違うことがあるとすれば、腐男子だということだ。
しかし、周りに腐男子と言うことがバレないように日々隠しながら暮らしている。
今日も一日会社に行こうとした時に横からきたトラックにはねられてしまった!
目が覚めるとそこは俺が好きなゲームの中で!?
俺は推し同士の絡みを眺めていたいのに、なぜか美形に迫られていて!?
「俺は壁になりたいのにーーーー!!!!」
天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら
たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生
海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。
そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…?
※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。
※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
溺愛系とまではいかないけど…過保護系カレシと言った方が 良いじゃねぇ? って親友に言われる僕のカレシさん
315 サイコ
BL
潔癖症で対人恐怖症の汐織は、一目惚れした1つ上の三波 道也に告白する。
が、案の定…
対人恐怖症と潔癖症が、災いして号泣した汐織を心配して手を貸そうとした三波の手を叩いてしまう。
そんな事が、あったのにも関わらず仮の恋人から本当の恋人までなるのだが…
三波もまた、汐織の対応をどうしたらいいのか、戸惑っていた。
そこに汐織の幼馴染みで、隣に住んでいる汐織の姉と付き合っていると言う戸室 久貴が、汐織の頭をポンポンしている場面に遭遇してしまう…
表紙のイラストは、Days AIさんで作らせていただきました。
【本編完結】攻略対象その3の騎士団団長令息はヒロインが思うほど脳筋じゃない!
哀川ナオ
BL
第二王子のご学友として学園での護衛を任されてしまった騎士団団長令息侯爵家次男アルバート・ミケルセンは苦労が多い。
突撃してくるピンク頭の女子生徒。
来るもの拒まずで全ての女性を博愛する軽薄王子。
二人の世界に入り込んで授業をサボりまくる双子。
何を考えているのか分からないけれど暗躍してるっぽい王弟。
俺を癒してくれるのはロベルタだけだ!
……えっと、癒してくれるんだよな?
とある金持ち学園に通う脇役の日常~フラグより飯をくれ~
無月陸兎
BL
山奥にある全寮制男子校、桜白峰学園。食べ物目当てで入学した主人公は、学園の権力者『REGAL4』の一人、一条貴春の不興を買い、学園中からハブられることに。美味しい食事さえ楽しめれば問題ないと気にせず過ごしてたが、転入生の扇谷時雨がやってきたことで、彼の日常は波乱に満ちたものとなる──。
自分の親友となった時雨が学園の人気者たちに迫られるのを横目で見つつ、主人公は巻き込まれて恋人のフリをしたり、ゆるく立ちそうな恋愛フラグを避けようと奮闘する物語です。
もう一度言って欲しいオレと思わず言ってしまったあいつの話する?
藍音
BL
ある日、親友の壮介はおれたちの友情をぶち壊すようなことを言い出したんだ。
なんで?どうして?
そんな二人の出会いから、二人の想いを綴るラブストーリーです。
片想い進行中の方、失恋経験のある方に是非読んでもらいたい、切ないお話です。
勇太と壮介の視点が交互に入れ替わりながら進みます。
お話の重複は可能な限り避けながら、ストーリーは進行していきます。
少しでもお楽しみいただけたら、嬉しいです。
(R4.11.3 全体に手を入れました)
【ちょこっとネタバレ】
番外編にて二人の想いが通じた後日譚を進行中。
BL大賞期間内に番外編も完結予定です。
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる