エンドロール〜BLゲームの悪役モブに設定された俺の好きな子の話〜

高穂もか

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第一章 おけつの危機を回避したい

五十二話

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「よっしゃ。ちゃんとある」

 被服室の棚の中を探りながら、晴海が明るい声を上げた。
 背中にひっついて、手元を覗き込むと……ある。棚の仕切り板の裏に、セロテープで解毒剤が貼りつけられとった。

「おお。昨日貼ったまんまやね」
「大事なもんやから、見にこやなな。ほな、帰ろか」

 納得したらしい晴海は、ひょいと手を差し出してきた。

「うんっ」

 おれは笑って、ぎゅって手を握り返した。
 なんかもう、普通に手を出してくれるなあ。おれも、手を繋ぐの好きやなって思うから、嬉しい……

――有村のこと、好きだから……

「はうっ!」

 違うねん、好きっていうのは! おてて繋いで、歩くことがやからなっ。
 心の中の竹っちに言い訳して、おれはゼイゼイと息を吐いた。

「どした?」
「な、何もない」

 竹っちが変なこと言うから、妙に意識してしまう。
 違うのに。晴海は、おれのだいじな幼馴染やもん。
 やから……花火の事だって、普通に誘えるし!

「あのさ、晴海っ」
「ん?」
「あ、ええと。その……夕飯なんやろな」
「トンカツ食いたいなあ」
「願望?」
「願望」

 真面目な顔で言われて、笑いがこみあげた。
 「あほやなー」て言うたら、ヘッドロックをかまされてまう。そうやって、キャッキャふざけながら歩いとるうちに、食堂についてもた。
 やっぱ、ごはんの時に言うで。


「あのさ、晴海!」

 対面で、キャベツにソースかけてた晴海が目を上げた。

「おう。使うか?」
「あ。うん、かけてかけて」

 お皿を押し出すと、晴海はおれのトンカツにソースをかけてくれた。
 夕飯は、なんとトンカツやったん。大当たりやね。
 晴海は丼飯をかっこんで、ぱくぱく食べとる。気持ちのいい食べっぷりで、清々しいわ。
 ふと、唇の端に、ごはん粒を発見する。

「晴海、ほっぺにおべんとついてるで」
「ほ。どこ?」
「ちゃう。ここやし~」

 ヒョイと摘んだら、晴海がぱっとほころんだ。 

「ありがとうな」
「う、ううん」

 照れ笑いされて、急に恥ずかしくなって俯いた。
 ごはん粒を噛みながら、おれもほっぺが熱々になってまう。
 や、やっぱ、お部屋に戻ってから、花火のこと言おう。――今言うたら、なんか変な感じになりそうやもん……


「へ、変な感じってなに?!」
「うおっ?! お前が何や?!」

 叫びながら立ち上がると、晴海がぎょっと目を見開いた。



「で。どうしたんや?」

 おれが、あんまり挙動不審やったからか。風呂上がりに、晴海の方から言うてきた。

「あうう」
「なんかあるんやろ? 言うてみ」
「晴海~!」

 穏やかに聞かれて、じーんとする。優しい。
 勇気を得たおれは、胡座をかく晴海の正面に座り直した

「えっとな。後夜祭の花火あるやん? あれを、一緒に見てほしいんやけど」
「ええよ」
「即答?!」

 さらっと頷かれて、のけ反る。

「ええの? フラグ回避とかあるし、忙しいけど……」
「なに。花火の頃にはエンディングやし、平気やて。お姉さんも、エンディングは愛野が恋人と花火見るんやって言うてたしな」
「えっ? そうやった?」

 目をまん丸にしたら、晴海が眉を上げる。

「おいおい、言うてはったやんか。なんでも、うちの花火は、ジンクスいうのがあるらしいぞ。恋人同士で見ると、ええことがあるんやと」
「ちょ、え。知ってたん?」
「おう」

 こともなげに頷かれて、かえってうろたえる。
 ちょっと待って。晴海、ジンクスのこと知ってて、一緒に見てくれるってこと……?
 きゅう、と震えた胸元をおさえる。
 
――それって、どういう意味なんやろう。

 ドキドキしながら、おれは口を開く。

「ええと……どうして?」
「ん?」
「なんで、おれと一緒に見てくれるん? みんなで見たほうが、楽しない?」

 じっと、真っ黒い目を見つめる。晴海はきょとんとした後、目元を赤らめた。

「それは、ほら。お前は大事な幼馴染やから」
「……!」

 そっか。
……そうやんな。
 おれは唇を引き結んで、晴海の肩を突っついた。

「お、おい。どうした?」
「何もないっ。晴海は、優しいなあ」
「めっちゃ拗ねとるがな」

 苦笑されて、うっと詰まる。
 たしかに……せっかく、花火オーケーしてもろたのに、何してるんやろ。
 でも、なんか悲しいねんもん。

「ごめん」
「シゲル……」

 しょんぼりと俯くと、頭を撫でられた。あたたかな手つきに、目が潤む。
 晴海は、「うーん」と唸った。

「すまん。さっきの、理由の半分や。ホンマはな……俺は、お前になんかしてやりたいねん」
「……なんで?」
「それはな、お前が俺の恩人やから」

 おんじん?
 予想外の言葉に、おれはあっけにとられた。


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