エンドロール〜BLゲームの悪役モブに設定された俺の好きな子の話〜

高穂もか

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第一章 おけつの危機を回避したい

六十三話

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 ジョキ、ジョキ。
 
 何かを切り刻むような音が聞こえてくる。
 なんの音やろう?
 ぼんやりする頭の端っこで、おれは不思議に思う。――片頬が冷たい。うっすらと目を開くと、石の床が見えた。
 身じろいで、体がうまいこと動かへんことに気づく。
 なんで……?
 ぼうっとしかけて……記憶が一気に戻ってくる。
 
「あ!」
 
 おれは、目を見開いた。
 
 ――そうや! 化学室に行ったら誰もおらんくて。電気が消えて、榊原が……!
 
 ぞっと肝が冷えた瞬間、肩を強く掴まれる。
 
「ひっ!?」
「おや。目が覚めたんですか」
 
 ねばっこい声が、背中の上で聞こえてきた。ぎぎぎ……と首を動かして振り仰げば、榊原がこっちを見下ろしとる。
 おれに馬乗りになって、両腕を戒めてる。
 変態にマウント取られる恐怖に、叫んだ。
 
「わああ~! 何や?!」
「……起きた途端に、うるさいですねえ」
 
 榊原は、鬱陶しそうにため息を吐く。

「この、人さらい! 竹っちを返せ!」
「……竹中くん、ですか?」
「とぼけるなっ。あんたが竹っちを騙して、攫ったんやろ!」

 怪訝そうに言われ、かっとなる。
 こいつ、この期に及んで白を切るか。肩ごしに睨みつけると、榊原は呆れ顔になる。

「何やら誤解があるようですね。私は、竹中くんを攫ってはいません。それに――」
「なっ……」
「私が用があるのは君ですよ、今井くん」 

 ジョキン! とまた音がしてビクリと身を竦めた。シャツの襟を掴まれたかと思うと、ずるずる……と皮を剥くように脱がされる。
 
「……は?」
 
 あっけに取られるおれの眼前に、ぼろ切れになったシャツが投げ捨てられる。
 ちょ。おれの服……!
 
「ひいっ。な、何すんねんぼけっ! 変態!」
  
 逃げようと床を這いずると、今度は腰に冷たい感触が。
 
 ジョキン!
 
 デカい音にビビッて、ぎくりと体が固まった。ずるずる……と腹の下を擦って、何かが引き抜かれる。――ぼろきれの上に、今度はベルトの残骸が放り投げられた。バックルが床に当って、カランと金属質の音が立つ。
 
「あ……」
 
 榊原は、でっかい裁ち鋏で、おれの頬をぴたぴたと叩く。
 
「今井くん、静かにしなさい。うっかり、身を切ってしまうかもしれませんよ」
「あ……うあ……」
 
 さああ、と血の気が引く。
 カチンコチンに固まったおれに、榊原は満足気に息を吐いた。タンクトップを摘んだかと思うと、ジョキジョキと鋏を入れ始める。

「全く、脱がせてから縛るべきでしたねぇ」

 その言葉に掴まれとるだけやなくて、手首が縛られとることに気づく。

「……っ、う……」

 肌に鋏が掠る度、肩がぶるぶる震えた。
 ばさ、と黒い布きれが放られ、呆然とする。

――怖い!

 おけつというより、命も危うしという恐怖に、涙が溢れる。

「や……っ」
「大人しくしなさい」

 榊原は、おれの前に手を伸ばす。ごそごそとボタンを外され、ズボンをゆっくり引き抜かれる。パンツが丸見えになった。

「ガキ臭い下着ですね」
「……!」

 悔しくて、鼻がツンとした。お前に見せるためのパンツちゃう。確かに、この年でキャラ柄は変かも知れへんけど。晴海は、可愛いて言うてくれたんやから……!
 ズボンは、靴ごと放り捨てられてしもた。
 あっという間にパンツ一枚。心許なさに震えてたら、

「痛っ」

 榊原はおれの体を横這いに倒した。脇腹をぺっとりと撫でられて、吐きそうになる。

「いややっ。触らんといて」
「ふ。乳首が立っていますよ。まさか、興奮しているんですか?」

 寒いねん、あほう!
 そう怒鳴ってやりたいけど、裁ち鋏が怖くて「あうあう」としか言えへん。
 流石のおれも、ここまできたらわかる。
 これは最終イベントや……!
 おれは、ぶるぶるする唇を宥めて、訊ねる。

「た、竹っちは無事なんやろな……!? 酷いことしてへんやろな?」
「しつこいですね。竹中くんがどうしてようと、知りませんよ。ここにいるのは君だけです」

 心底うんざりした顔で言われる。じっと睨むと、

「……自分より竹中くんを攫ってほしかったんですか?」

 と胡乱な目で言われ、慌てて首を振る。

――どうやら、ホンマらしい。

 竹っちは、榊原に捕まらへんかった。きっと、晴海が引き留めてくれたんや!
 爆発的な安堵が、胸に押し寄せる。

「竹っち、晴海………良かった!」

 ほっとして目頭が熱くなる。

「!」

 しかし、パンツに指をかけられて我に返る。

「ちょ、やめっ!」

 叫んだときには遅く、一息に膝まで下げられてもた。おけつに冷たい空気が触れて、呆然とする。
 榊原が笑う気配がした。

「君は育ちすぎて、私の好みではないですが……尻だけは可愛らしいですね」
「!」

 くそきもい。
 何言うてんの、こいつ。んなこと言われて、誰も喜ぶわけない――

「ぎゃ!」

 ぐに、とおけつを掴まれて、悲鳴が漏れる。冷たい手がおけつに吸い付くみたいで、気色悪さに総毛立った。

「いやや、放して!」

 腰を捩るも、膝に絡んだパンツが邪魔や。ミミズみたいに床をのたくるおれを、榊原は伸し掛かって抑え込んでくる。
 薬品臭い白衣がばさりと顔に被さって、泣きたくなった。

「うえっ」

 脇腹を腕で押されてえづく。

「大人しくしなさいと言っているのに……頭の悪いガキだな」
「痛!」

 おけつの肉が、もぎるように割り開かれる。普段、触れへんとこに外気が触れて、身が竦んだ。

「ふむ。淡紅色……きちんと窄まっていて、間違いなく処女アナルですね」

 無遠慮におけつの穴を突つかれて、恐怖が極まった。

「うわぁ、いやや! 晴海、晴海ぃ……!」

 わあっと泣き叫ぶ。
 怖い。気持ち悪い……!
 こんなん嫌や。

「煩い」
「やあっ!」

 指を無理にねじ込まれ、引き攣った痛みが脳天を突き抜ける。

「痛い、痛い! やめて」

 涙がボロボロ溢れる。
 何これ、おれ。どういう目にあってんの。楽しい学祭の日に、酷いやんか。こんなん酷いやんか……

「静かにしろと言っているでしょう。甘ったれて、女子のつもりですか」
「ひっ」

 バシンとおけつを叩かれた。馬鹿みたいに扱われ、涙が胸に詰まる。
 榊原はビビるおれに気を良くし、穴にスクリューを食らわしてくる。痛い……!

「ふ……うぐっ」

 冷や汗が浮かぶ。嫌悪と痔になりそうな恐怖に震えていると、キュポッと蓋の開く音がした。

「固いアナルですね。有村くんは、君に一切触れなかったんですか」
「……晴海はこんなことせえへんもん!」

 酷い侮辱に、頭が熱くなる。肩ごしに睨みつけると、榊原は鼻で笑う。

「なら、君に魅力を感じなかったんでしょう。可哀想に、いつも物欲しそうに彼を見つめているのに」
「ぇ……」

 物欲しそう……?
 ポカンとするおれを、榊原は嘲笑う。

「自覚が無いんですか? まあ、気づきたくないだけかもしれませんが……何れにせよ、もう無用の悩みです」

 いやらしい笑みの横に掲げられたものを見て、おれは瞠目する。

――ちんちんボトル!

「これを使えば、チンポの事以外何も考えられなくなります。良かったですね」

 ちっとも、良くないわーい!

「そんなん嫌や!」
「安心しなさい。私の知人に、君のような男がタイプの者がいますから。彼の性奴隷として、幸せになりなさい」
「うわーっ!!」

 じたばた藻掻く。
 嫌や。絶対嫌や……!
 必死の抵抗も空しく、おけつの穴に尖ったものが差し込まれた。

「おえっ……!」

 ボギュ、と鈍い音が聞こえた。
 お腹の中に、冷たいもったりしたものが噴射される。

「やああああ!」

 晴海! 助けて、晴海……!

 下っ腹がぱんぱんに膨れたころ、からん、と空のちんちんボトルが投げ捨てられる。
 絶望で、涙がボロボロ溢れた。

「では、さようなら今井くん。一時間もすれば、君は男として……人として終わりですよ」

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