エンドロール〜BLゲームの悪役モブに設定された俺の好きな子の話〜

高穂もか

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第一章 おけつの危機を回避したい

六十五話

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「どういう事や?!」
 
 俺は、頭を抱える。
 通路にある部屋を全部改めても、シゲルの姿は見つからんかった。竹っちも、険しい顔でドアを閉める。
 
「ちきしょう! 榊原の奴、どこにいやがんだ」
「この区画におらんとなると、また別の場所っちゅうことか?」
「それとも……もう外に出ちまったとか?」
 
 竹っちが不安そうに言う。
 この地下通路は避難口を兼ねとるんか、外に通じる扉もあった。しかし、俺は首を振る。
 
「それはないはずや。あれ、がっつり電子ロックかかっとったし。いくら何でも一介の教師の権限で動かせるもんとちゃう。それに、出た先は敷地内の駐車場やて、先輩が言うてたから」
「あ、そっか……車は出てねえんだもんな」
 
 竹っちは、納得したように頷いた。
 それに、お姉さんは「最終イベントは地下室」やと言うてたし、そこは動かんはずや。なら、ここ以外の地下室ってことになるはずやけど。
 二人で思案していると、パタパタ……と軽い足音が反響する。
 連絡のために、いったん地上に出ていた斉藤先輩が、息を切らせて戻ってきた。
 
「有村くん、竹中くん! 真柴も「こっちにはいません」って!」
「ありがとうございます。先輩、ここ以外にも地下室ってありますか」
「ここ以外には、公的な施設はもう一か所ある。でも、理科棟から徒歩で三十分はかかる場所だから」
「はあ……人ひとり連れて、ありえないっすね」
 
 竹っちが唸る。俺は、先輩の言葉に引っかかりを覚えた。
 
「公的な施設……じゃあ、私的な地下室はあるってことですか?」
 
 目に力を込めて尋ねると、先輩は笑う。
 
「いい指摘だね、有村くん。……実は。この学園にはもう一つ、戦前から使用されてた古い地下室があるんだ。表向き、もう閉鎖されたことになってるんだけど――本当は、学園のOBが資金を出して現在も管理しているの。この存在を知ってるのは、理事長と援助してるOBと、代々の生徒会役員だけ」
「!」
 
 俺は、息を飲んだ。
 続く先輩の話では、そこは現在の地下室よりもずっと規模が大きく、入り組んでいるらしい。BLゲームの最後の舞台には、うってつけな場所やないか……!
 思わず、指をパチンと鳴らす。
 
「それや! 榊原は理事長の親戚やから、なんかの拍子に知っててもおかしくないで」
「その可能性は高いよね。あの人、学園のOBらしいし」
「じゃあ、すぐそこへ行きましょうよ!」
 
 勇んで、竹っちが言う。すると、先輩は初めて弱り顔になり、申し訳なさそうに手を合わせた。
 
「それが……恥ずかしながら、入り口がわかんないの」
「えっ」
 
 俺は瞠目した。
 
「元・親衛隊長の僕も、流石にこの入り口までは教えてもらえなかった。地下室の存在を知れたのは……僕、劒谷くんと長く付き合ってたでしょ? 寝物語に、彼がぽろっとこぼしたのを聞いただけでさ」
「な、なんと……!」
 
 先輩は、少しばつが悪そうに竹っちを見た。衝撃を受けた竹っちがよろめきかけ――男らしい顔つきでガッツポーズを作った。
 
「いえ、先輩。大事な手掛かりをありがとうございます!」
「竹中くん……」
 
 先輩は、唇をほころばせる。
 
「しかし、そこに今井がいるとして。なにか他に入り口の手がかりとか、言ってませんでした?」
「ごめん。それが、さっき話した以上のことは何も……」
「わかりました。――なら、すぐに行きましょう!」
「え?!」
 
 俺は勢いよく踵を返すと、地上へ駆け上がった。用具室を飛び出して、賑わう校庭を突っ切って行く。 
 ぎょっとしながら、二人が後を追いかけてくる。
 
「ちょっと、有村! 行くって、闇雲に当たるってことか?」
「そんなんしたら、間に合わん。場所を知っとるやつに、聞くしかない!」
「……ああ、そっか! いまなら、根城にいるはずだよ!」
「わかりました!」
 
 意を察してくれた先輩の助言に、俺は被服室のある棟へ舵を切る。
 竹っちが、「まさか」と頬を引くつかせる。
 
「ああ。会計に、直接聞きに行く!」
 
 先輩に、地下室の情報を齎したあいつなら――どこに入り口があるか、確実に知っとるはずや!
 

 
 □□

 
 
「ひっく……うええっ……」
 
 床に這いつくばって、おれはしくしくと涙を流す。
 お腹に目をやると、依然ぽっこり。こんだけ頑張って、ちょっとも薬を出せてないなんて……。
 なんか、ちょっと熱ってきてるし!
 
「薬のせい? おけつの穴もじんじんするしっ……もういややぁ」

 ひーん、と泣き声が漏れる。
 怖いよう、晴海……!
  
――でも、ちんちんしか考えられんようになるなんて、もっと嫌やあ!

 おれは自分を奮い立たせて、膝を立てた。……間抜けやけど、おけつを高くしたほうが、いきみやすいねん。 
 頑張れ、シゲル……! 
 
「うう~……!」 
 
 必死にお腹をへこますと、中からゴム栓がぬぬぬ……と盛り上がる。
 
「んぐ~……!」
 
 ふーふーと荒い息を吐きながら、いきみ続ける。 
 
――べこっ、べこ。
 
 突き出た栓が内側からテープを押す音が響く。このまま、テープを突き破ってくれ。そう思うのに、何べんも押し戻されてまう。
 ぬる、ぬる、と穴のふちをゴムが擦ると瞼が熱くなる。お腹の奥がむずむずして、早くこれを出したい……と気が逸った。

「はぁっ……ううっ……!」
 
――べこっ、べこっ、べこ……

 おけつの穴が、ぐっぱぐっぱと収縮して、ゴム栓を押し出していく。

「はっ、あう……うう~……っ!」

 自分の息が犬みたい。
 潤む視界に、ぽたぽた、と足の間から滴が落ちるのが見えた。
 ぺりぺり……とテープが剥がれる音がして、おけつの穴に涼しい風が当たる。

「あ……っ!?」

――もう、出る……!

 そう、思ったとき。
 ガチャン、と出し抜けにドアが開いた。
 びっくりして、全てのおけつの力が抜け――すぽん! とゴム栓が引っ込んでまう。

「――はひっ?!」

 おれは、バタンと床に倒れ伏した。
 おけつの穴が、元の場所に収まった円錐を包み込んで、ぞわぞわ~っと腰が震える。

――あ、あとちょっとやったのにぃ……!

 ひいひい荒い息を吐いて、悔しさに悶えていると、頭上からねばっこい声が。

「随分、お楽しみのようですね」
「!」

 榊原!
 人の苦闘を笑いよって……と、言い返してやるつもりで、振り返ったおれは、あんぐりと口をあける。
 だって、榊原の腕の中に、ぐったりしとるのは――

「愛野くん!」

  
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