エンドロール〜BLゲームの悪役モブに設定された俺の好きな子の話〜

高穂もか

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第二章 淫紋をぼくめつしたい

キスしてほしい⑫(完)

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「シゲルー、大丈夫かあ」
 
 晴海の真黒い目が、心配そうにのぞき込んどる。
 おれは、寄っかかった晴海の肩に甘えつつ、Vサインをした。
 
「だいじょうぶ。ちょっと、気がぬけてもて……」
 
 いっぱい泣いて、いっぱいわがまま聞いてもろたおかげかな。エッチして体はぐったりなんやけど、心は爽快になっとった。
 そう言うたら、晴海は穏やかに微笑んだ。
 
「そうか。立てへんかったら、負ぶったるから遠慮すんなよ」
「うんっ。ありがとうなぁ」
 
 うりうりと肩にほっぺをすりつけると、晴海はくすぐったそうに笑い声をあげた。
 おれは腕にひっつきながら――ちょっと熱をもつ唇に触れる。
 
 ――晴海、いっぱいキスしてくれた。
 
 じんわりと嬉しさがこみあげてきて、にやけてまう。
 だって、ずっとキスしてほしかったんやもん。
 おれ、晴海にその気になってほしくて、一生懸命誘ったんやで。めっちゃスキンシップしたり、「ここや!」ってときにキス待ち顔してみたり。
 まあ、そう言うおれの気持ち……たぶん、晴海はちーっとも気づいてへんかったみたいやけどっ。
 
 ――なんや、シゲル。甘えたさんやな~。ははは。
 
 のんきな声を思い出して、ぴきっと米神が痛うなる。
 傍目で見とる竹っちが気づくくらい、アプローチしてたのにこれやで。ええかげん、心折れるわい。
 ほんで今日。おれの意図に気づいた竹っちが、スーパーアドバイザー真柴くんを呼んできてくれて。「キスしたくなる唇大作戦」を決行したわけやねんな。
 
「……なあ、唇痛いんか?」
「えっ?」
 
 色々と思案を巡らしとったら、晴海に不意に尋ねられる。思いのほか、真剣な声にびっくりして、きょとんとしとったら――親指で口の端を触れられた。
 くすぐったくて、ぎゅっと目を閉じてまう。
 
「ん……なに?」
「ここ、赤くなっとる。ごめんな、俺がアホなこと言うたせいで……」
 
 晴海は、沈痛な面持ちで。懺悔するみたいに静かな声で言うた。
 アホなこと――? 一瞬、ポカンとして、「天ぷら食った」のことかと思い至る。 
 おれは、ぷっと噴き出した。
 
「なーんや。そんなん気にしてたん? ええよもう」
 
 そりゃ、おれとしては誘ってたからさ。全然、ユーワク出来てへんくてショックやったけど。いっぱいキスしてもろた今となっては、何時もの軽口やってわかってるし。
 って、手を振り振りしながら、「気にせんでええよ」って言うのに、晴海は苦し気な顔のまま。
 
「いや。ホンマに可愛かったんや。せやのに……俺の下らん嫉妬のせいで、お前を泣かしてしもて」
「しっと?!」
 
 信じられん言葉を聞いて、鸚鵡返しに叫んだ。しっとて、まさか嫉妬のこと……?
 すると、晴海はばつが悪そうに頬をかいた。
 
「すまん……お前が、真柴のリップクリーム使ったんやと思ったら。何してんねん、間接キスやんけって、腹立って」
「……!」
「ごめんな。それで、心にもない事言うたんや。不甲斐ないわ……」
 
 晴海はしょぼくれて、俯いてまう。かわいいつむじを見ながら、おれは全身がぱーって熱くて熱くて、どうしようもなかった。
 
 ――晴海、お前……おれのために、そんな風に思うんや!
 
 胸の奥から、甘やかな感情が湧いてきて、居てもたってもいられへん。
 
「晴海~!」
「うお!?」
 
 おれは、昂る感情のまま晴海に飛びついた。
 晴海はぎょっと叫びつつ、しっかりとおれを受け止めてくれる。
 
「晴海、晴海っ。大好きやで!」
「ええ!? お、俺も大好きやぞ……?」
 
 おれのテンションに戸惑っとるみたい。それでも、ちゃんと好きやでってお返ししてくれんねんな。
 優しいなあ、晴海。
 おれは、へらへら笑いながら、ぎゅっと厚い胸に抱きつく。
 
「し、シゲル? どうしたんや?」
「なんもないよ~」
 
 はぐらかしたら、恐る恐るって感じに頭を撫でられる。気持ちいい。
 おれは、うっとりと目を閉じながら――上着のポケットにあるリップクリームを思う。
 真柴くんのおススメで、新調したばっかの……レモンの香りのリップ。
 
 ――間接キスちゃうよって伝えたら、喜んでくれるかな……?
 
 晴海の胸にほっぺを埋めて、おれは幸福な予感に酔いしれた。

 
 
 ……キスしてほしい(完)

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