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第9話 勝利

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 恨みはしない。むしろ、この長く続いた転生の果てに、お前という親友に会えた事を嬉しく思うよ。
 
 また、俺を殺してくれて、ありがとうスバル。

 お前にはこれから先、悲惨な運命が待ち受けているだろうが、お前なら、もしかしたら乗り越えられるかもしれない。
 だから俺は、お前を信じてみるよ。
 さよなら、スバル….そして、

 ごめんな。


◇◆◇◆


 俺は、偽タケヒコの胸元を、鎧越しに叩き斬ってやった!
 
 次の瞬間、偽タケヒコが、血を流して倒れた。

 よし、俺の勝利だ!

「どうだ、偽タケヒコ!これは、お前がエルフ族の里を襲い続けた罰だ!悪いのは、お前なんだからな!?」

 元凶は全て、この偽タケヒコ!
 お前は、エルフ族の娘をたくさん殺した!
 おまけに、俺の大切な親友にまで成り替わり、俺を殺そうとした!

 お前が魔物だってことは、とっくに俺は見破っているんだからな!?

「いいか?俺は頭も良くて、喧嘩も強いんだ!しかも、俺は剣道は有段者だ!剣の使い方なんて、手に取るように分かるんだからな!?もしも、お前が俺の知っている、親友のタケヒコだったら、そんな事分かっていた筈だ!だから、お前は、タケヒコじゃない!」

 偽タケヒコが本物のタケヒコじゃないという、証明終了!
 こいつがタケヒコじゃない事を証明する方程式は、今まさに俺の言った通りだ!

「………」

 恐る恐る、俺は偽タケヒコの顔を、覗いてみた。

 すると、なんと息をしてなかった!
 つまり、死んだということか!?
 
 やった!
 俺は、エルフ族達と交わした使命を、ちゃんとやり遂げたんだ!

 ただ、何か後味わりーな。

 スライムを倒した時は、木の棒で殴っただけだったから、何ともなかったけど、この偽タケヒコは、傷口から赤い血を流している。

 まったく、姿形だけしゃなく、中身までタケヒコそっくりにする必要ないだろ!?

「達(たち)が悪い魔物だな…」

 でも、このままにしておくのもタケヒコに悪い気がするな。

 魔物にしたって、仮にもタケヒコの姿をしているわけだし…

 よし、埋めといてやるか♪

「有難く思えよ~、偽タケヒコ。優しい俺に、感謝するんだな!」

 と言っても、聞こえるわけないか?
 
 そして、俺は偽タケヒコを埋める事にした。

 そんな時だった。

「あ、これ…」

 タケヒコを埋める時、タケヒコの首に、キラリと光る物があった。
 それは、昔、俺と、タケヒコと、ヒナコの三人で買った、お揃いの、星型ペンダントだった。

「懐かしいなぁ」

 俺は、失くしてしまったけど、タケヒコは持ってたのかぁー…って、

「こいつは、偽タケヒコだった!」

 危ない危ない、危うく、この老いぼれ野郎を、タケヒコと認めるところだったぜ!

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